【助産師監修】産褥熱とは? 原因や症状、治療方法と予防法について

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助産師松田玲子

医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

【助産師監修】産褥熱とは? 原因や症状、治療方法と予防法について

 

妊娠・出産のために大きく変化したママの体。出産後は、赤ちゃんのお世話も加わり、身体的にも精神的にも大きな変化が生じます。そのため、ママの体にトラブルをきたしやすい時期とも言えます。今回は、主な産後の異常の1つ、「産褥熱(さんじょくねつ)」についてお話ししたいと思います。

 

 

産褥熱とは?

産褥熱とは、

 ・分娩後24時間から産褥10日目までに発症し、

 ・2日以上にわたる38℃以上の発熱と下腹痛

 ・悪臭を伴う悪露

 ・子宮収縮不良などを認める

 ・子宮を中心とした骨盤内感染症

を言います。

 

産褥期に発症した腎盂腎炎や乳腺炎でも発熱を認めますが、これらは産褥熱には含まれません。

 

産褥熱は、以前は妊産婦死亡の主な原因とされていましたが、分娩の管理や抗菌剤の投与などにより、産褥熱による死亡率は激減しています。ですが、症状を放置していると、感染部位が広がり、最悪の場合、敗血症に至る恐れもあります。

 

 

産褥熱の原因は?

産褥熱は、出産時に生じた傷口から細菌が侵入し、子宮内に感染が広がって炎症を起こすことによって生じます。経腟分娩の場合は、胎盤が付着していた部分から、帝王切開の場合は子宮の切開部分から感染することが多く見られます。

 

子宮内に胎盤や赤ちゃんを包んでいた卵膜が残っていたり、悪露の排出が遅れている場合なども、産褥熱の誘因となります。

 

 

産褥熱の症状は?

産褥熱の主な症状は

 

■発熱

正常な産褥経過でも、産褥4日ころまでは、37~37.5℃程度の体温上昇がみられます。また、おっぱいが張ってくることで熱を持ったような感じになるため、脇で体温を測ると高く表示される場合もあります。産褥熱では、38℃以上の発熱が2日以上続きます。

 

■下腹部痛・子宮の圧痛

産後にみられる後陣痛とは別に、下腹部が痛み、子宮を押されると痛みが生じます。

 

■悪露の異常

出産後、離床が遅れたり、子宮筋腫があったりなど、原因はさまざまありますが、悪露の排出がスムーズにいかない場合があります。悪露は細菌にとっての栄養源でもあり、細菌感染によって、悪露の性状も変化し、お刺身の腐ったような悪臭を伴っていたり、膿のようになります。子宮内に胎盤や赤ちゃんを包んでいた卵膜が残っている場合、レバーの塊のような悪露が出ることもあります。

 

■子宮収縮の不良

出産後、子宮は徐々に妊娠前の大きさに戻ろうとし、小さくなっていきますが、おなかの上から触れると、硬式テニスボールのように固いです。しかし、子宮収縮が不良の場合は、子宮が小さくなるペースも遅く、おなかの上から子宮をふれると、軟式テニスボールのようにやわらかいことが多いです。

 

 

産褥熱の治療は?

子宮内に悪露が溜まっていたり、胎盤や赤ちゃんを包んでいた卵膜が残っていた場合などは、それらを取り除く処置(子宮内容除去術)をおこないます。くわえて、抗生剤・子宮収縮剤の投与がおこなわれます。

 

また、状況によっては、腹腔内を洗浄したり、ドレーンを留置して膿を排出させる処置が必要になる場合もあります。

 

 

自分でできる産褥熱の予防とは?

出産の疲れも癒えないうちに産褥熱を発症したらつらいですよね。赤ちゃんのお世話もありますし、自分でできる予防法を実践してみましょう。

 

■体を清潔に

まず、体を清潔に保つようにしましょう。ただし、1カ月健診前の入浴、排泄後のビデの使用はNGです。排泄後は、清浄綿を使用し、外陰部を清潔にしましょう。

 

■こまめにトイレに行きましょう

出産後は、尿意がはっきりしないことがあり、排尿間隔があいてしまうことがあります。これは徐々に回復していきますが、排尿間隔があいてしまうと、膀胱が充満し、子宮収縮を妨げる要因になってしまいます。なるべく定期的に排泄するようこころがけ、その際にナプキンもこまめに取り換えるようにしましょう。

 

■悪露の変化に注意

ナプキンを替えるとき、悪露の変化にも注意しておきましょう。レバーの塊のような悪露や悪臭を伴う悪露など、いつもと違う悪露が出る場合は要注意です。

 

■適度な運動と休息

会陰切開をしていたり帝王切開後は、傷の痛みがあって、なかなか動くのもままならないかもしれません。しかし、ずっと寝たきりでは悪露の排泄が促されません。無理のない程度に徐々に活動の範囲を広げていきましょう。

 

産褥体操も効果的です。その一方で、赤ちゃんのお世話で疲れがたまってしまうと、免疫力も低下してしまいます。疲れたら休むようにし、お食事もしっかり摂るよう心がけましょう。

 

 

まとめ

産褥熱は近年では重症化することがほとんどない産褥期の異常ですが、感染の可能性は誰にでもあるといえます。産後は赤ちゃんのお世話でママは無理をしがちですが、ご自身の体の変化にも気を配りつつ、育児ができるとよいですね。何か変だなと思ったら、早めにかかりつけ医に相談することも大切です。

 

 

 

 

 

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