【医師監修】妊娠糖尿病の原因は?母体・赤ちゃんへの影響、治療方法と予防方法

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師天神尚子 先生
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長

日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

 

妊娠糖尿病イメージ

 

妊娠によりママの体はさまざまな変化が生じます。そのなかのひとつに、ママは赤ちゃんに優先的に糖分を供給できる仕組みを作るようになり、代謝動態が変化します。

しかし、このような変化が起きていることも知らずに食欲にまかせてついつい食べ過ぎてしまうと「妊娠糖尿病」になってしまうことも。そこで今回は、妊娠糖尿病の症状や治療方法、母体や赤ちゃんへの影響などについて解説します。

 

 

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見、または糖尿病にいたっていない軽い糖代謝異常のことを言います。妊娠中に診断された明らかな糖尿病は含まれません。

妊娠糖尿病は世界共通の診断基準が提唱され、妊娠糖尿病の診断基準が2010年に改定されました。

日本産婦人科学会によると、妊婦の7~9%は妊娠糖尿病と診断されるといわれています。

 

妊娠糖尿病の原因と妊娠糖尿病になりやすい人

特に妊娠20週以降になると、胎盤から出るホルモンによって、血糖値(血液に含まれるブドウ糖の量)を下げるインスリンというホルモンが効きにくくなります。そのためママの血糖値が普段より高くなり、高くなった分のブドウ糖が赤ちゃんに供給されるようになります。そのため甘い物や炭水化物などを食べ過ぎると、血糖値が上昇しやすくなってしまいます。

 

さまざまな要因によって、通常の妊娠時よりもインスリンの働きが抑制されてしまうと、ママの血糖値が常に高い状態となり「妊娠糖尿病」を発症してしまいます。妊娠糖尿病は、妊娠が終了し、胎盤からのホルモンの影響がなくなると症状が消失していきます。

 

妊娠糖尿病になりやすい人の特徴を紹介します。

 

◆妊娠糖尿病になりやすい人
・家族に糖尿病にかかっている人がいる
・肥満
・35才以上
・過去に4,000グラム以上の赤ちゃんを出産したことがある
・尿検査で尿糖が陽性になったことがある、または反復して陽性になる

 

妊娠糖尿病の症状や診断、母体や胎児への影響

妊娠糖尿病は、妊婦健診でおこなわれる尿検査や血液検査で発見されることがあります。妊娠糖尿病の症状、母体やおなかの赤ちゃんへの影響を紹介します。

 

症状

喉が渇く、頻尿、倦怠感、体重の急激な変化などの症状があります。

初期は自覚症状はほとんどなく、妊婦健診で血糖値の異常を指摘されて気づくことが多いようです。

 

診断

妊婦健診でおこなわれる血液検査で、血糖値を測定し、基準値を超えた場合、75ℊ経口ブドウ糖負荷試験をおこないます。

 

経口ブドウ糖負荷試験というのは、空腹時にブドウ糖75ℊを溶かした液体を飲み、1時間後・2時間後に血糖値を測定します。75 g経口ブドウ糖負荷試験において、①空腹時血糖値≧92mg/dL②1時間値≧180mg/dl③2時間値≧153mg/dLのいずれかひとつを満たした場合、妊娠糖尿病と診断されます。

妊娠糖尿病による母体と赤ちゃんへの影響

妊娠糖尿病になると、ママだけでなく、おなかの中の赤ちゃんにも健康リスクを与える可能性があります。


◆母体への影響

・流・早産

・妊娠高血圧症候群
・羊水過多症
・巨大児出産の時に、産道裂傷、帝王切開率上昇など

・将来、糖尿病を発症するおそれ             

 

◆赤ちゃんへの影響
・巨大児(生まれるときに肩甲難産、腕神経麻痺、骨折のおそれ)

・胎児発育不全

・胎児機能不全

・子宮内胎児死亡
・新生児低血糖
・呼吸窮迫症候群
・低カルシウム血症、高ビリルビン血症
・多血症                        など

 

妊娠糖尿病の治療方法と予防方法

妊娠糖尿病になった場合、早期の治療をおこなう必要があります。また、予防方法について解説します。

 

治療方法

妊娠糖尿病の治療には、血糖コントロールが必須です。そのため定期的に血糖値を測定する必要があります。そのため、自己測定をすすめられることが多くあります。その結果をみながら、治療方針が決定されます。

 

●食事療法

治療の基本は食事療法ですが、栄養バランスのとれた食事内容でカロリーコントロールが必要になります。

≪食事療法のポイント≫
・甘い物や糖質の多い物を控える
・ご飯やパン、麺類などの炭水化物を減らす
・ささみや豚、脂身の少ない肉を摂取
・魚、大豆製品、卵などの良質なタンパク質を摂取
・食物繊維が多いキノコ類や野菜などを積極的に摂取

●インスリン療法

血糖コントロールが不良の場合におこなわれます。インスリンを定期的(毎食前、寝る前など)に注射し、血糖コントロールをおこないます。インスリン注射も、血糖測定同様、自己注射がすすめられます。その際は、インスリンの量や注射の方法など間違わないよう、きちんと指導を受けておこなうことが大切です。

 

妊娠糖尿病の治療中、低血糖になる可能性もあります。低血糖を放置すると母児ともに悪影響を及ぼす恐れもあります。低血糖症状(気分が悪くなる、吐き気、冷や汗など)がある場合は、すぐに血糖測定をして糖分を補給するようにしましょう。

 

予防方法

妊娠糖尿病を予防するためには体重コントロールが重要です。

妊娠中の体重増加目標は、妊娠前の肥満度によって異なります。バランスのよい食生活、散歩やウォーキング、掃除など、適度な運動をおこないましょう。ただし、妊娠中の運動は無理せずに体調をみながらおこなってください。

 

【適切な体重増加の範囲

 BMI指標 = 実際の体重(kg)÷{身長(m)× 身長(m)}

・やせの人(BMI 18.5未満):+12~15kg
・標準の人(BMI 18.5~25未満):+10~13kg
・肥満度1の人(BMI 25~30未満):+7~10kg
・肥満度2以上の人(BMI30以上):個別対応(上限+5kgまでが目安)

 

まとめ

妊娠糖尿病は多くの人が出産後に血糖値が正常に戻りますが、糖尿病やメタボリック症候群など、将来のママや赤ちゃんの健康にも関係するといわれています。日頃からの生活習慣を気をつけて妊娠糖尿病を予防することが大切です。

また、妊娠糖尿病になった方は糖尿病になる確率が高くなるため、産後もバランスのよい食事内容を工夫し、運動や生活習慣の改善をおこないましょう。

 

参考:

妊娠糖尿病:病気を知ろう:日本産科婦人科学会 
糖尿病と妊娠に関するQ&A | 一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会

 

 

 

 

 

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