【医師監修】妊婦はあお向けに寝ないほうがいい? 仰臥位低血圧症候群とは?

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妊婦さん

 

だんだんおなかが大きくなってくると、どの妊婦さんにも仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)が起こる可能性があります。今回は、仰臥位低血圧症候群についてお話しします。

 

 

仰臥位低血圧症候群とは?(病態・生理・原因など)

仰臥位とは、あお向けの姿勢という意味です。妊娠中期以降、母体が仰臥位になると、大きくなった子宮が下大静脈を圧迫して、急激に血圧の低下を引き起こすことがあります。そのことを仰臥位低血圧症候群といいます。

 

大きくなった子宮が下大静脈を圧迫し、心臓へ戻る血液が不足すると、心臓から全身へ送りだす血液の量が減るため、低血圧になります。血液によって運搬される酸素が不足して、母体に下記のような症状があらわれます。

 

・顔面蒼白
・めまい
・気分不快
・意識が薄れていくように感じる
・胃がムカムカする
・嘔吐
・冷や汗
・呼吸がしづらい

 

下大静脈は、下半身から心臓へ戻る血液が通る大血管で、母体の脊柱の右側を走行しています。意識が薄れていくなど不快症状が起きたら、すぐ左側臥位(母体の左側を下にして横向きになる)の姿勢にして、下大静脈の圧迫を取り除くことで、直ちに症状が回復します。姿勢を変えることで、不快な症状が消失すれば、普段通りに過ごして良いです。

 

赤ちゃんの胎動を感じられる週数であれば、その日はいつも通り胎動があるかを気にかけるようにしましょう。もし、いつもより胎動が少ないように感じる場合は、かかりつけの産婦人科へ電話相談、あるいは受診しましょう。左側臥位になっても症状が改善しない場合は、低血圧が理由とは限りません。早めにかかりつけの産婦人科へ電話相談、あるいは受診しましょう。

 

仰臥位低血圧症候群が重症化した場合、呼吸ができなくなる、意識を消失する、脈拍が触れにくい、けいれんが起こるなどのショック症状を引き起こします。その場合は、直ちに医療的な処置が必要です。ここでいう「ショック」とは、血圧低下によって生命の危機が起こるという意味の医学的用語です。日常会話で用いる「ショック=精神的に衝撃を受ける」という意味とは異なりますのでご注意ください。
 

 

仰臥位低血圧症候群による母子への影響

仰臥位低血圧症候群になると、母体だけでなく胎児への酸素供給も不足します。胎児は一時的に酸素不足になっても、生命維持に大切な脳や心臓への酸素供給を優先させることができるので、母体が直ちに左側臥位になることで症状が消失すれば、胎児もいつも通りの状態に戻ります。胎児の酸素不足が重症化すると、胎児機能不全が起こる可能性があります。胎児機能不全とは、子宮の中で過ごす胎児が元気とはいえない状態のことです。

 

仰臥位低血圧症候群はどの妊婦さんにも起こり得ますが、母体だけでなく胎児の健康状態にも影響するため、予防的に過ごすことが大切です。
 

 

仰臥位低血圧症候群が起こりやすい状況と対応

【自宅】
自宅で寝転んでくつろぐときは、抱き枕や大きめのクッション、丸めた布団などを利用して仰臥位以外の楽な姿勢で過ごしましょう。あお向けに近い姿勢で過ごすときは、母体腹部の右側にタオルやクッションを置くなどの工夫をしましょう。

 

【病院】
妊婦健診の際に、平らなベッド上に仰臥位のまま腹部エコーをおこなうことがありますが、診察中に気分が悪くなったら、すぐに医師へ伝えましょう。また、胎児心拍や陣痛を測定するモニター中に仰臥位低血圧症候群を予防するため、セミリクライニング(頭部側を30度程挙上した状態)でモニターをおこなうところや、母体腹部の右側にタオルやクッションを置くなどの工夫をするところがありますが、体勢や胎動の影響で予防しきれないこともあります。モニター中に気分不快があれば、すぐにナースコールなどで助産師や看護師へ知らせましょう。

 

【歯科医院】
妊娠中の歯科検診や歯科治療は、早産や低出生体重児予防に大事だといわれています。妊婦を対象とした治療に慣れている歯科医院であれば、仰臥位は避けて、背もたれの角度を調整し、こまめに休憩をとれるように対応してくれるでしょう。受診の際には、妊娠中であることを伝え、途中で気分不快などが起きた場合には、遠慮なく歯科医師や歯科衛生士へ伝えましょう。

 

【美容院】
利用する際に妊娠中であることを伝えましょう。シャンプー中などに途中で気分不快などが起きた場合には、遠慮なく担当の美容師へ伝えましょう。あお向けの姿勢で気分不快などが起きたら、直ちに左側臥位になれるよう、事前に伝えておくのもいいでしょう。

 

【その他、サロンや運動施設など】
妊婦を対象にしたリラクゼーションサロンや運動施設では、仰臥位低血圧症候群について予備知識がないこともしばしばあります。施設情報や口コミなどで事前に情報収集し、予防的に対応する体制が整っていない、あるいは仰臥位低血圧症候群について伝えても理解を示してくれない場合は、母子のためにそのサロンや施設は利用しないという判断も大切です。

 

 

まとめ

仰臥位低血圧症候群は、おなかの膨らみが大きくなってきたら、どの妊婦さんにも起こり得ます。日常生活の中で予防的に過ごすことで、また、もしも症状が起きたときの対応の仕方を知っていれば、特に大きな影響を与えることはありません。ただし、仰臥位低血圧症候群の悪化は、母体だけでなく胎児の健康状態にも影響しますので、仰臥位低血圧症候群の予防法や対策をしっかり知ったうえで、妊娠生活を送ってください。おなかが大きくなることで、自然と自分にとって楽な姿勢を取るようになってきますが、背中の右側を圧迫する姿勢は、普段から避けるようにするといいですね。


参考:
産婦人科診療ガイドライン産科編2017

妊婦スポーツの安全管理基準 日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 13 Suppl., 2005

・最新産科学 正常編  著:荒木勤 文光堂
・最新産科学 異常編  著:荒木勤 文光堂

日本救急医学会 
日本自己血輸血学会 

 


 

監修者

医師 天神尚子 先生

産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長


日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。


経歴

1981年 日本医科大学医学部卒業
1988年 米国ローレンスリバモア国立研究所 留学
1994年 日本医科大学 産婦人科学講師
1995年 東京都教職員互助会三楽病院 産婦人科科長
1995年 日本医科大学 産婦人科学客員講師
2004年 三鷹レディースクリニック開業


著者

助産師 古谷真紀


一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー

大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。


2019/07/11


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