マウント好きで面倒なボスママ
ある日、ママ友に安くておいしい海鮮丼が食べられるお店を紹介した私。
ママ友の評価は上々でしたが……。
「1000円の海鮮丼!? 庶民はかわいそうねぇ」
「うちは高級お寿司しか食べたことがないから激安海鮮丼なんて信じられないわ」
ママ友との会話に割って入ってきたのは、ボスママ。
商社に勤めるエリート夫と一緒に、高価なブランド物を身につけたり、高級店と名のつくお店の常連を気取っています。
自慢話だけならまだしも、とにかく人を見下してママたちの中心でないと気が済まないタイプだから厄介で……。
「ほら、超高級お寿司屋さんの〇〇寿司もうちの行きつけなのよぉ」と言い出し、しまいには「庶民には一生、縁がないお店よね」とバカにしてくる始末。
高級寿司店で遭遇!?
そんなある日、いつものようにボスママ家族は例の高級店の〇〇寿司へ。
「いつもの握ってくれ! 金はあるから、おすすめのものなんでも出せ!」
ボスママの夫はふんぞり返りながら、次から次へと出てくるお寿司に「うまいうまい!」と家族で食べ始めます。
そこで、ボスママは私たち家族が1000円の海鮮丼がおいしいと言っていたことを話題に出します。「1000円の海鮮丼なんて、食えたもんじゃないだろう」と、相変わらず見下した言葉を口するボスママの夫。
「すでに舌が貧乏になっているみたいね。本物を知らないから、何でもアリって感じなのよ、きっと」
ちょうどそんな会話が繰り広げられているところに、店に入ってきたのは私たち家族でした。
「なんであんたが高級店に……?」とボスママは驚きつつも、お互い簡単なあいさつを済ませます。
「1000円ぽっちの海鮮丼で大喜びしている貧乏人の口には合わないかもね」と嫌みを言われながらも、気にせずお寿司を注文する私たち家族。
すると……。注文したお寿司を食べた私たちは、思わず固まってしまいました。
本物がわかっていない!?
「大将、失礼ですが、これはスーパーの刺身ですよね?」
「は!?」
「鯛も赤身も新鮮さがなく、匂いも独特です。食感も最悪ですし、それにこのネタの切り方は近所の激安スーパーのものと酷似しています」
「な、なに失礼なことを言っているの! そんなわけ……」
私たちの発言に、怒り出すボスママ。
しかし、なぜか大将の額からは汗が滝のように流れています。
すると、大将から「すばらしい! 実は本物の味がわかる客がどれくらいいるのか試したくて、激安スーパーの刺身を出してみたんですよ」と、驚きの発言が飛び出します。
「金持ちは“高級”とつくと、それがすばらしいものだと錯覚するヤツが多い。でも、あなたたちは本物の味がわかる人だ!」
「うそでしょ……こいつらが認められるなんて……」
すると、「みんな、会計はいいから帰ってくれる?」と言う大将。
悔しさで顔をゆがめるボスママ家族をよそに、「産地を表示させている以上、スーパーの刺身を提供したら食品偽装ですよ!」と、私たちはこの寿司店を通報しました。
数日後――。
寿司屋は摘発されて閉店に追い込まれ、今は空き店舗に……。
話題の高級店が激安スーパーの刺身を提供していたことは幼稚園でも話題となり、金持ち自慢して行きつけだと豪語していたボスママは、みんなから「味がわからない人」認定を受けることに。
よほど悔しかったのか、ボスママ一家は引っ越しをして幼稚園も転園したのでした。
◇ ◇ ◇
「高かろう良かろう」という言葉がありますが、必ずしも高いものが良いものとは限りません。大事なのは価値や品質を見極め、自身が求めているものが得られるかどうか、なのかもしれませんね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。