学生時代、当時の交際相手から妊娠を告げられた経験があるという夫。「俺には実績がある。だから原因はお前だ」と繰り返します。しかし詳しく話を聞くと、妊娠を告げられたのは、夫が別れ話を切り出したタイミングだったそう。結局その女性とは破局し、出産には至っていないとのこと……。
その女性が本当に妊娠していたかどうかはわかりませんが、夫は病院に付き添ったわけでもなく、母子手帳やエコー写真を確認したわけでもなく、口頭での申告を鵜呑みにしているだけでした。
そんな過去の不確かな記憶にしがみつく夫に、私の心は急速に冷めていきました。
不妊検査と引き換えに突きつけられた条件
根拠もなく私ばかりが責められる毎日は、精神的に限界でした。「原因が私にあると決めつけるなら、まずは2人で検査を受けてはっきりさせましょう」と提案すると、夫はしぶしぶ承諾。しかし、信じがたい条件をつけてきました。
「もし俺に原因がなければ、離婚する。子どもも産めない、欠陥品の妻なんて必要ないからな」
さらに夫は……。
「不妊女と結婚して時間と金の無駄だった。出て行け」
「離婚届送るから」
「結婚式の費用も返せよ」
私との結婚生活を無駄だったと言い放ち、結婚式の費用や慰謝料として300万円を要求してきたのです。そして家を出て行けと言われました。
「そんなことして大丈夫?」
あまりにも理不尽な言い分に、私は心底あきれました。よほど結果に自信があるのでしょう。私は「わかったわ。その代わり、あなたに原因があったら、あなたが私に300万円支払って離婚してね」と夫と約束し、病院へ向かいました。
検査結果と夫の動揺
検査当日。結果が出る前から夫は勝利を確信している様子で、「離婚届を送るから覚悟しておけ」と勝ち誇っていました。しかし、医師から告げられた検査結果は、夫の予想を裏切るものでした。
医師は冷静に、夫には先天的な要因で子どもを望むことが極めて難しい状態であると告げたのです。「そんなはずはない! 俺には実績があるんだ!」夫は取り乱しましたが、医師の診断は覆りません。
詳しく話を聞けば聞くほど、学生時代の元カノの妊娠話は、別れたくない一心での狂言だった可能性が高いことが浮き彫りになりました。
ひどく落胆する夫でしたが、すでに離婚を決意していた私は言われていたとおり、その日のうちに荷物をまとめ実家へ帰ることに。「離婚届待ってるね」とだけ告げて、家を出ました。
手のひらを返した夫への決断
現実を受け入れられない夫は、その後もいくつかの病院を回ったそうですが、結果はすべて同じでした。あれから数週間が経ちますが、夫から離婚届は送られてきません。しびれを切らした私が役所で用紙をもらい、記入して夫に送りつけると、慌てて連絡が来ました。
「やっぱり離婚はやめないか。3年間、うまくやってきたじゃないか」これまでの暴言や義母のいびりを棚に上げ、夫は必死に復縁を懇願してきました。「子どもがいなくても2人で生きていこう」などと今さら耳障りの良い言葉を並べますが、自分が原因だとわかったとたんに前言撤回するような夫には、もはや愛情のかけらも残っていませんでした。
私は情にほだされることなく、約束通り300万円の慰謝料と離婚を求めました。夫が離婚したくないのは、私への愛ではなく、世間体や再婚の難しさ、そして孫を熱望する義母への説明を恐れてのことでしょう。その後、調停を経て離婚が成立。私は調停で合意した解決金を受け取り、新しい人生を歩み始めました。これからは、自分の幸せのために生きていこうと思います。
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夫婦の数だけ、さまざまな事情や関係性があります。しかし、どちらか一方に責任を押し付けたり、相手を傷つけたりしていい理由にはなりません。結婚の形も、幸せの定義も人それぞれです。困難に直面したときこそ、相手を思いやる気持ちを持てるかどうかが問われるのではないでしょうか。何らかの問題が生じたときは、パートナーとどう向き合うか、きちんと立ち止まって考えたいですね。
【取材時期:2025年12月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。