両親が不慮の事故で亡くなったときのこと。私が震える声で義姉に両親の死を伝えると、受話器の向こうから聞こえてきたのは、耳を疑うような言葉でした。
「それって、遺産の話になるってことよね」義姉は、悲しみの「か」の字も見せず、お金のことで頭がいっぱいのようでした。
あまりの不謹慎さに言葉を失う私をよそに、義姉は「私たち忙しいから葬儀の手配はあなたが進めておいて」「実家のことは、娘であるあなたが中心になるのが普通でしょ」と、面倒なことはすべて私に押し付けたのです。
結局、私ひとりで葬儀の準備に奔走しました。親族への連絡、会場の手配……。心身ともにボロボロでしたが、最後のお別れだけはきちんとしたかったのです。
葬儀の最中に「遺言書」探し!? 欲にまみれた兄夫婦の暴挙
葬儀が終わると、兄夫婦は足を運んでくれた親族への挨拶もそこそこに、実家へ戻りました。遅れて私が帰ると、「遺言書があるはず」と言って、引き出しや棚を探していたのです。
数時間後、私が両親が亡くなった後の手続きをしに出かけていると、義姉から「金庫が開いた」というメッセージが届きました。金庫の鍵は兄の誕生日で開いたそう。「やっぱり愛されてるのは長男なのよね」と義姉は笑います。
「遺言書には、財産は長男に任せる、って書いてあったの」「あなたの名前は見当たらなかったから、期待しないほうがいいんじゃない?」「この家は私たちが引き継ぐつもり。早めに身の回りを整理して出ていってね!」
義姉はそう言って、私を家から追い出そうとします。義姉を止めないところを見ると、兄も同じ意見なのでしょう。
兄を溺愛していた母のことを思うと、遺産を兄に残すという話は嘘ではないでしょう。実家に長く留まるつもりはなかったので、私はほどなくして実家を離れました。
「お金がない!」血まなこで通帳を探す義姉
それから1カ月ほど経ったころ、あれほど強気だった義姉から、焦った様子の連絡が入ったのです。
「家中探しても、お金が入ってる銀行口座の通帳が見つからないの! 隠してるんじゃないでしょうね!?」
私は思わず、ため息まじりに答えました。「両親にお金なんて1円もありませんよ?」実は数年前から両親は宗教にハマっていました。老後資金をいわゆる「開運グッズ」に使っていたのです。
「はあ!? 何それ! 聞いてない!」義姉は言葉を失っていました。
「負の遺産」も独り占め! 長男夫婦の末路
絶望する義姉に、さらなる追い打ちが届きます。実家のポストに届いていたのは、両親が消費者金融から借りていた借金の督促状でした。
「借金まで私たちが相続しなきゃいけないなんて不公平よ! 家族なんだから分け合いましょう!」と義姉は言います。
私は「これまで、家族として扱われてきた実感はありません」「遺産を受け取る判断をされたのはそちらですよね。私が口を出す立場ではないと思っています」と返しました。
借金の存在が判明し、兄夫婦は相続を受けるか放棄するかという、現実的な判断を迫られることになりました。いずれにせよ、期待していた多額の遺産が入らなかったことは明らかです。
遺産を当てにして、まともに働いてこなかった兄夫婦。今になって焦って仕事を探しているようですが、職歴のない彼らに世間の風当たりは強く、毎日必死にアルバイトを掛け持ちして食いつないでいると親戚から聞きました。
私はというと、これを機に兄夫婦との連絡をすべて断ち切り、心機一転、新しい生活をスタートさせました。本当の幸せとは、誰かに与えられるものではなく、自分の足で立ち、自分の手で掴み取るものなのだと、今ようやく実感しています。
◇ ◇ ◇
「楽をして大金を手に入れよう」という甘い考えは、結局、自分たちの首を絞めることになります。今回の兄夫婦のように、目先の遺産に目がくらんで大切な人への敬意や人間関係を疎かにすると、いざというときに誰も助けてはくれません。
「遺産」と聞くと、つい銀行口座の残高や不動産の価値といった「数字」ばかりに目が向いてしまいがちです。しかし本来、遺産とは一生をかけて築き、次の世代へと繋ごうとしたもの。受け継ぐ側との信頼関係があって初めて成り立つ、目に見えない重みがあるのではないでしょうか。
【取材時期:2025年12月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ペラッペラですね