「洗濯物はカゴに入れておいてね」とお願いするだけで、夫は眉をひそめて言いました。「後でやるって言ってるだろ!」けれど、夫が“後で”やったことは一度もありませんでした。
けんかのときの決め台詞
次第に夫は、私のすることなすことに文句をつけるようになりました。気に入らなかったり自分の思い通りにいかないと大きくため息をつき、無視をしたり、些細なことで怒鳴るのです。「お前の家事の仕方は雑だ」「俺に指図するな」そんな言葉が日常になっていきました。
そして、けんかになると決まってこう言うのです。
「お前とはもう無理! 離婚だな!」
夫はその言葉を、私を黙らせるための“切り札”のように使っていました。私が言い返すと怒りが倍増するため、怖くて何も言えませんでした。
保育園の送り迎えは、近くに住む私の両親が手伝ってくれています。しかし夫はそれすら「甘えるな」と不満そうに口を尖らせ、協力しようとしたことは一度もありませんでした。
もう限界! 妻の決意
何度も繰り返される理不尽な言動、娘の前でも平気で私を否定する態度。心がすり減っていくのを感じながら、私は「次に『離婚』と言われたら離婚する」と決意しました。
その日から、少しずつ準備を始めました。夫の暴言や離婚発言は、念のためスマホに録音して保存。離婚届を用意しました。
ついにキタ!夫の「離婚」宣告に、妻は?
ある日の夕食後、夫は食べ散らかした皿を放置したまま、ソファに寝転がりスマホをいじっていました。
「片付けくらいしてくれる?」そう声をかけた瞬間に夫は立ち上がり、「うっせーな! 細かいことばかり言いやがって! お前とはやっていけない! 離婚だ!」と怒鳴りつけてきました。
——ついに来た。
「……わかった。あなたがいつも言っていた通りにするね。はい、離婚届」
「え……? お、おい……」
夫は勢いが完全に止まり、顔がみるみる青ざめていきました。
私は静かに「あなたの離婚発言や暴言は、前から録音してあるよ。離婚するからサインして」「あなたが言い出したことだし、ちゃんと手続き進めよう。財産分けるとか、住むところ決めるとか、いろいろあるしね」と言いました。
夫は動揺しながらも、いつも自分が「離婚だ」と言い放ってきた手前、強く拒否することができませんでした。しばらく黙ったあと、観念したようにサインしました。
後日、私は離婚届を役所に提出し、正式に離婚が成立しました。養育費についても話し合い、公正証書に残しました。娘が安心して暮らせるよう、毎月きちんと支払われる取り決めができていることも、私にとって大きな心の支えになっています。
離婚後の私たちは
離婚が受理された翌日、私は娘と一緒に実家に戻りました。両親は「よく頑張ったね」とやさしく迎えてくれ、娘も安心したように抱きついて離れませんでした。
実家では、両親と朝ごはんを作り、娘を保育園へ送り届け、帰宅後はゆっくり料理をし、お風呂に入り、穏やかな気持ちで眠りにつく。
——ただその繰り返しが、胸の奥まで温かく満たしていきました。
離婚は勇気のいる選択でしたが、その先には確かに自由と安心が待っていました。これからは両親とともに娘を見守りながら、少しずつ幸せを噛みしめて生きていこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。