度重なる義実家へのお誘い
娘のA子は「無理しなくていいよ。向こうの家、少し片付けが苦手みたいだから」と気にかけてくれていました。A子はこれまでに何度か義実家へ行っており、そのたびに台所が雑然としているのを見て心配していたようです。
私が「掃除の仕事をしている私への気づかいなのかもね」と笑うと、A子は「向こうはこれが普通なんだと思うよ」と苦笑いしました。
それでもあまりに丁寧に誘っていただくので、私も「一度は行かなくちゃね」と時間を工面し、伺う約束をしました。
A子は最後まで「なんか嫌な予感がする」と言っていましたが、私は「親類付き合いをきちんとしたいだけよ」と軽く受け止めていました。
「今すぐ帰ろう!」
そして食事会当日。義実家に到着すると、B美さんは明るい笑顔で迎えてくださり、私もほっとしました。手土産を渡し、居間に案内され、お茶を出していただいて談笑していたとき、A子が「お手洗い借ります」と席を立ちました。
義実家の間取りでは、トイレへ向かう廊下の途中に台所があるため、A子はその前を通りました。そこで扉が少し開いていたのが気になり、ふと中をのぞき込んだのだそうです。
数分後、廊下から早足で戻ってくる音がして、A子が血の気の引いた顔で現れました。息を飲んだまま私の腕をつかみ、「お母さん、今すぐ帰るよ」と小声で言いました。
突然のことで私は戸惑い、「え? まだごあいさつも……」と返しましたが、A子は震える声で「台所、ちょっとじゃ済まない状態だったの。常温で出しっぱなしの生肉があって、そのすぐ近くに、さっき出されたお茶菓子を置いていたトレイがあったの。お母さん、おなかを壊したら困るから。本当に危ない」と必死に訴えてきました。
A子によれば、冷蔵が必要な食材が長時間放置されていたり、消費期限切れの総菜が混ざっていたり、台所全体の衛生状態がかなり気になる状態だったとのこと。その近くに、お茶菓子を準備した痕跡があったため、A子は「もし何かあったら取り返しがつかない」と強い不安を覚えたのだと言います。
状況がすぐには飲み込めなかったものの、娘の切迫した表情を見て私は判断を委ね、「急に体調がすぐれなくなってしまって……」とB美さんにお伝えし、私たちはそのまま退出しました。
義母からの電話と、すれ違った認識
帰宅して数時間後、B美さんから「体調は大丈夫ですか?」と心配の電話がありました。私は正直に、「娘が台所の様子を見て心配してしまって……。念のため検査だけ受けています」とだけお伝えしました。幸い、体調のほうは大ごとにはならずに済みました。
すると電話越しのB美さんは、急に声を震わせ、「……あのお茶菓子、台所で準備していて……。あんな状態のところで出してしまって、本当に申し訳ありません。うちは片付けが苦手で、忙しさにかまけて食品の管理もちゃんとできていなくて……まさか人に迷惑をかけるなんて」と泣き出しました。
その涙は、片付けが苦手という軽いものではなく、「結果的に相手を体調不良にさせてしまったかもしれない」という強い罪悪感からくるものでした。
私が「悪気があったわけじゃないですよね。驚かせてしまってこちらこそごめんなさい」と伝えると、B美さんは何度も「すみません」と繰り返しました。
後日、婿は何も知らずに「配慮が足りなくて本当に申し訳ありません」と頭を下げました。しかしA子は「あなたのせいじゃないよ。家の習慣ってすぐに変えられないものだし」と婿を気づかい、むしろ2人の絆はさらに深くなったように見えました。婿は「A子とお義母さんをこれからも大切にします」と言ってくれ、その誠実さに私は胸が温かくなりました。
今回の出来事は、誰かの悪意ではなく、「生活習慣の違いから生まれたすれ違い」だったのだと痛感しました。私自身も、娘夫婦をこれから支えるため、長く元気でいようと改めて思えた出来事でした。
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結婚すれば、相手の親との付き合いは避けられないもの。育ってきた環境が違えば、驚くことやすれ違いが起きるのも自然なことです。今回は大事に至らず、互いの気付きに変わったのが何よりでしたね。
今後は少しずつ歩み寄りながら、若い2人をそっと見守っていけるといいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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