義母からの強引な誘い
ある日、義母から突然の電話がありました。
「お父さんが定年退職したのよ。そのお祝いに家族旅行へ行こうと思うの! もちろん、あなたたちも一緒よ」
突然の提案に私が返事に窮していると、義母はさらに畳みかけてきます。
「本来なら、息子がお父さんに感謝の旅行をプレゼントするべきでしょう? 普通はそうするものよねぇ」
半ば強制的な物言いに断り切れず、私たちは渋々その旅行に参加することになったのです。
旅行の計画はすべて義両親と義妹が進め、私たちに与えられた役割は当日の運転だけでした。宿泊先を尋ねても「着いてからのお楽しみ」とはぐらかされ、詳細を教えてもらえまなかったのです。
旅先での理不尽な扱い
そして旅行当日。私たち家族は車で義実家へ迎えに行ったものの、義両親と義妹はまるで私たちなど存在しないかのように、自分たちだけで盛り上がっていました。後部座席で楽しげに話す彼らに、娘が一生懸命話しかけても生返事ばかり……。
さらに道中の食事代や、立ち寄った先での土産代の支払いは、当たり前のようにすべて私たち夫婦に求められました。「お祝いだから」と自分を納得させようとしましたが、私たちを財布としか見ていない義家族の態度に、モヤモヤとした感情が募っていきました。
夫が運転すること数時間、指示された目的地に到着すると、そこは1泊1人数万円は下らない有名な高級旅館でした。
「この高額な支払いも、私たちに任せるつもりなのだろうか……」
釈然としませんでしたが、気を取り直してフロントでチェックインの手続きをしようとすると、耳を疑う事態が起きたのです。
「家族の分しか予約していない」
「ご予約は……3名様で承っておりますね?」
旅館のスタッフの言葉に、夫が「えっ?」と声を上げました。私たち夫婦と娘、そして義両親と義妹の計6名のはずです。
すると義母が、悪びれる様子もなくニヤニヤしながらこう言いました。
「あら、部屋は『家族』の分しか予約してないわよ? だってこの宿、高いんだもの。あなたたちに気を使ったのよ」
その言葉に、夫の表情が凍りつきました。義母の言い分はつまり、義両親と義妹の3人だけが「家族」であり、私たちは「お金も出してくれる運転手」だということ。これまでの夫なら、文句を言いながらも最終的には支払っていたかもしれません。義母もそうタカをくくっていたのでしょう。
「俺たちの部屋がないなら、俺たちはどうすればいいんだ」
夫が低い声で尋ねると、横から義母が声を上げました。
「あなたたちには相応しくないし、あまり支払わせるのも悪いから、とってないのよー。でも、近くにたくさんビジネスホテルがあって空きはあったわよ」
夫の激怒と絶縁宣言
自分たちのぜいたくのために息子を呼び出し、部屋すら用意せずに支払いを強要する。その理不尽さに、夫の中で我慢の糸が完全に切れました。
夫は静かに立ち上がると、義父に向かってはっきりと告げました。
「『家族の分しか部屋は予約していない』ということは、俺たちはもう家族じゃないってことですね。他人なら、あなたの退職祝いをする義理もありません」
義父が何か言い返そうとしましたが、夫はそれを遮り、冷徹な目で言い放ちました。 「まさか俺がいつまでも言いなりになると思っていましたか? あなた方とは今日限りで絶縁します。金輪際、二度と連絡してこないでください」
夫は娘の手を取り、呆然とする義両親と義妹をロビーに残して、そのまま出口へと向かいました。 背後から「待ちなさい! お金はどうするの!」「キャンセル料がかかるじゃない!」と義母たちが慌てふためく声が聞こえましたが、私たちは一度も振り返りませんでした。
結局、私たちはそのまま家族3人で帰路につきました。帰り道、夫は「今まで我慢させてごめんな」と私と娘に謝ってくれました。 後日談ですが、あの後、義両親たちは宿泊するにしてもキャンセルするにしても、自分たちで高額な費用を支払わざるを得なくなったはずです。その後、義実家から何度も着信があったようですが、私たちはすべて着信拒否にし、一切の関わりを絶ちました。
自分たちをないがしろにする人々との縁が切れ、今は夫と娘と心穏やかに過ごしています。これからは誰に邪魔されることもなく、3人で幸せな家庭を築いていくつもりです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。