夫には、子どものころから実家の隣に住んでいたという、仲の良い幼なじみの女性がいました。夫は彼女のことを「妹のような存在」と言ってかわいがっており、彼女が結婚してからも頻繁に連絡を取り合っていたようです。
幼なじみの離婚を喜ぶ夫への違和感
ある日、リビングでスマホを見ていた夫が突然ガバッと起き上がり、「あいつ、離婚したって! 俺、ちょっと電話してくる!」と、妙にうれしそうに自分の部屋へ駆け込んでいきました。友人の不幸を喜ぶような態度に、私は強い違和感を覚えました。
1時間ほどしてリビングに戻ってきた夫に、私はあえて直球で尋ねました。
「ねえ、もしかしてその人のこと、好きなの?」
夫は「まさか! 俺にとってあいつは本当の妹みたいなもんなんだから」と笑って否定しましたが、その目は笑っていなかったように思います。
それから数日後の平日、夜遅い時間にもかかわらず、突然その女性が我が家を訪ねてきたのです。
「やっほー! お兄ちゃんの家、見たかったから来ちゃった! さすがエリートサラリーマン、立派なお家ねぇ」
彼女は私のことなどお構いなしに、勝手に各部屋を見て回り、夫もそれを咎めるどころかうれしそうに案内していました。彼女は一通り家を物色すると、「引っ越しの片付けがあるから」と嵐のように去っていきました。
それ以来、夫は「仕事の付き合い」と言って帰りが遅くなり、休日も外出が増え、娘との約束すらドタキャンするようになっていったのです。
娘の誕生日に起きた決定的な裏切り
決定的な出来事は、娘の誕生日に起きました。 私は朝から準備をして、娘の好きなご馳走を食卓に並べていました。「パパまだかな」と待ちわびる娘。ようやく夫が帰宅し、パーティーを始めようとしたそのとき、夫のスマホが鳴りました。
電話に出た夫の顔色が変わり、通話を終えると信じられないことを口にしました。
「あいつ、出戻った実家を追い出されたらしい! 親とも大喧嘩して、もう行き場がないって泣いてて……俺、行かなきゃ!」
「ちょっと待ってよ! 今日は娘の誕生日だよ!?」
私の制止を振り切り、夫は娘の悲しそうな顔を見てもなお、家を飛び出していきました。
なんの迷いもなく、娘より幼なじみの女性を優先した夫。私はもう、夫を許さないと心に決めました。
しかし、これから始まるのは大人の修羅場です。娘に父親の醜態を見せるわけにはいきません。私はすぐに近所に住む私の実家の両親に連絡し、事情を話して娘を迎えに来てもらいました。
「今日はじいじとばあばのお家で、お誕生日会の続きをしようね。あとでママも行くからね!」
そう言って娘を送り出した後、私は一人、静まり返ったリビングで夫を迎え撃つ準備を整えました。
真実を告げると、予想外の展開に
それから数時間後、夫はなんとその女性を連れて帰宅しました。そして信じがたいことに、「しばらくこの家に住まわせることにした」と宣言したのです。
私が「無理に決まっているでしょう。すぐに出て行って」と告げると、彼女はふてぶてしい態度で言い放ちました。
「はあ? この家はお兄ちゃんのものでしょ? 養ってもらってるだけの奥さんが勝手に出て行けばいいじゃない」
その言葉を聞いた瞬間、夫はわかりやすくギクリと肩を震わせ、顔面蒼白になってうつむきました。自分のついた嘘が今まさにバレようとしているのを悟り、生きた心地がしなかったのでしょう。
そんな夫の様子を横目に見ながら、私は深いため息をつき、冷静に事実を突きつけました。
「大きな勘違いをしているようだけど、この家は独身時代に私が祖父母から相続した、私の名義の家よ。それに、夫の年収じゃこの家どころか、今の生活水準だって維持できないの。彼、あなたに嘘をついていたみたいね」
実は夫は、彼女にかっこいいところを見せたくて「自分は大企業勤めの高収入エリートサラリーマンで、この家も自分が建てた」と虚勢を張っていたようなのです。実際は私の収入が家計の大半を支えており、夫の勤め先は中小企業かつ、年収は平均を大きく下回っていました。
さらに私は、テーブルの上に興信所の名前が入った分厚い茶封筒を叩きつけました。
「“妹みたいな存在”なんてよく言えたね。最近の様子がおかしいから、プロに調査してもらった。動かぬ証拠が全部ここにあるの。離婚しましょう。二人とも、慰謝料はしっかり請求させてもらうから覚悟してね」
見捨てられた夫の末路
私の言葉を聞き、テーブルの上の生々しい写真を見た途端、彼女の顔色が変わりました。
「は!? お金持ちなのは奥さんだったの? じゃあ、こんな男と一緒にいる意味ないじゃない! 騙されたのは私のほうなんだから、慰謝料なんて請求しないでよね!」
彼女は手のひらを返すように夫を罵倒し、逃げるように帰ろうとしました。
「待ってくれ! 見捨てないでくれよ!」
泣きつく夫を振り払う彼女。その光景はあまりにも滑稽でした。
その時、インターホンが鳴り、私が事前に連絡を入れておいた義両親が到着しました。夫が愛人を迎えに行っている間に、私は義両親にすべてを話し、「今日ですべて決着をつけるから来てほしい」と頼んでいたのです。
息子の情けない姿を目の当たりした義両親は、私の話が真実だと察したようで、息子と幼なじみである愛人に対し激怒。その場で夫を叱り飛ばすと、そのまま首根っこをつかんで実家へと連れ帰ってくれました。
その後、私は弁護士を介して二人に慰謝料を請求。夫の幼なじみである愛人は「騙されていた」と主張しましたが、既婚者であることを知っていて関係を持った事実は消えません。二人とも、慰謝料の支払いのために苦しい生活を強いられていると聞きました。
離婚が成立した今、私は娘と二人、穏やかな毎日を過ごしています。 「ママ、いつもありがとう!」 笑顔でそう言ってくれる娘の成長を見守りながら、あのとき、自分と娘の尊厳を守るために決断して本当によかったと心から思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。