子守を押し付けてくるママたち
悩みの種は、隣のクラスのママ友数人のグループでした。幼稚園が同じというだけでそれまで特に交流はありませんでしたが、公園で何度か顔を合わせるうちに、彼女たちは子どもの世話を私に任せきりにするようになりました。
自分たちは話に夢中になったり、勝手にカフェへ行ってしまったりすることも増え、ある日、娘と帰宅しようとしていた私に、彼女たちが「これから予定があるから、うちの子たちを預かってくれない?」と急に頼んできたのです。
驚きましたが、その場では断りきれる雰囲気ではなく、しぶしぶ引き受けてしまった私。
子どもたちは楽しそうに遊んでいましたが、私にも家事や自分の予定があります。後で彼女たちが迎えに来た際、私は勇気を出して「今後は急に預かることはできません」とはっきりと伝えました。
しかし、自分の思い通りに動かない私に腹を立てたのか、あるいは都合よく使えなくなったのが気に入らなかったのか、それ以来、彼女たちからの露骨な無視が始まったのです。
クリスマスパーティーに誘われて…
そんな中、娘がママ友グループの子どもたちからクリスマスパーティーに招待されました。私は無視されている現状で参加することに不安があったため、念のため親同士でも連絡を取り確認したところ、「もちろん! ぜひ来て」と意外にも快諾する返事が……。
釈然としない気持ちは残りつつも、娘が純粋に楽しみにしていたため、親として覚悟を決めて参加することにしました。
その後、祖父の家に遊びに行った際、娘は「今度クリスマスパーティーがあるの!」とはしゃいで報告していました。それを聞いた祖父は、「ひ孫の友だちが集まるなら、みんなを喜ばせてあげたいな。よし、じいじがサンタさんになってサプライズで登場しよう!」と提案してくれたのです。
凍り付いたクリスマス会にサンタ登場
クリスマスパーティー当日、私たちが会場のレンタルスペースを訪れると、子どもたちは歓迎してくれたものの、母親たちは私を完全に無視。「ぜひ来て」という言葉は、逃げ場のない場所で私を疎外して楽しむための罠だったようです。
さらに彼女たちは、あてつけのようにこう言い放ちました。
「実は私たち、夫がみんな同じ会社に勤めている同僚同士なの。だから、私たち仲良しグループだけでプレゼント交換するわね♪」
そう言って、娘をわざと仲間外れにする嫌がらせをしてきました。
必死に涙をこらえる娘を見て、子どもまで巻き込む卑劣なやり方に憤りを感じていたそのとき、祖父がサンタ姿でサプライズ登場! 事前に場所を聞いていた祖父は、施設側にも許可を取って演出をしてくれたようです。
華やかな登場に子どもたちは大喜びでしたが、娘は私を心配させまいとしたのか、無理に作った笑顔を浮かべて、「サンタさん、プレゼントは全部キャンセルでいいよ! 私たちは仲良しじゃないんだって」と祖父に伝えました。
その言葉に、サンタ姿の祖父は一瞬で現場の異変を察した様子。孫の悲しげな表情に心を痛めつつも、これ以上この場にいるのは娘にとって酷だと判断したのでしょう。その場にいた子どもたちにだけ手早くプレゼントを配り終えると、最後に娘の頭をやさしくなで、静かに去っていきました。
サンタの正体に気づいたママ友グループは…
するとその直後、ママ友グループの一人が震える声でこう言ったのです。
「ちょっと待って……。今のサンタさん、もしかして〇〇(祖父の苗字)さん……?」
私が不思議に思って「そうですけど……祖父をご存じなんですか?」と返すと、彼女は顔面蒼白になりながら叫びました。
「知っているも何も、うちの夫が勤める会社の会長じゃない! 創立記念パーティーの写真で何度も見たわよ!」
まさか彼女たちの夫が勤める会社が、私の祖父が会長を務める企業だったとは……。
まさかの偶然に驚きましたが、呆然と立ち尽くす彼女たちを残し、私と娘もすぐに会場を後にしました。
夫に連れられ謝罪に訪れたママたち
その日の夜、私のスマホには彼女たちから続々と謝罪のメッセージが届きました。彼女たちは今日の出来事で初めて、私が「夫たちの会社のトップの孫」であることを知り、全員がパニックになった様子。
祖父から直接、自分たちの夫の耳に入り、立場が危うくなることを恐れたのでしょう。彼女たちはその日のうちに、慌てて夫に事の次第を白状したようです。
後日、彼女たちは夫に連れられ、そろって謝罪にやってきました。自分たちの家庭より、私たちの家族仲が良さそうに見えたことに嫉妬していた、などを理由に、これまでの身勝手な振る舞いについて謝ってきたのです。
あまりの必死さにその場では一応許すことにしましたが、いくら嫉妬したからといって、罪のない子どもにまで嫌がらせをするのは、やはり言語道断だと思っています。
一方、祖父はあのあと、改めてわが家を訪ねてくれました。会場で渡せなかったプレゼントを娘に手渡し、「じいじサンタ、本当はこれを一番に渡したかったんだよ。悲しい思いをさせてすまなかったね」とやさしく抱きしめてくれたのです。
おじいちゃんの温かい心遣いのおかげで、娘は無理に作った笑顔ではなく、心からの輝くような笑顔を取り戻してくれました。
この一件を機に、あのママ友グループとはあいさつを交わす程度の必要最低限な付き合いに留めています。今では余計なストレスに振り回されることもなく、私たちの生活には再び穏やかな時間が流れるようになりました。
何より、娘が毎日幼稚園で楽しそうに過ごしている姿を見られるのが、私にとって一番の幸せです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。