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弁当屋を見下す同級生「予約した弁当、50個届けて!」⇒私「予約受けてないけど...?」で大逆転!

私は駅前で小さな弁当屋を営んでいます。もともとは父が始めた店で、大学卒業後はいったん会社勤めをしていましたが、体調を崩した父の代わりに店を継ぐことにしました。

朝4時に起きて仕込みをし、配達、レジ打ち、経理までこなす毎日で、決してラクな仕事ではありません。それでも、自分が作った弁当を「おいしかったよ」と言ってもらえるたびに、「この選択をしてよかった」と心から思えていました。そんなとき——。

卒業から10年ぶりの同窓会で出会ったのは…

そんなある日、卒業から10年ぶりに高校の同窓会が開かれることに。久しぶりの再会に少し緊張しながら会場に入ると、同じクラスで成績優秀だったAさんの姿がありました。相変わらず華やかな存在だなと思っていると、Aさんが「久しぶり。えーっと、今なにしてるんだっけ?」と声をかけてきました。

 

私が「駅前の弁当屋を継いだんだ。知ってるかな」と答えると、「え、あの小さいお弁当屋さん? へぇ〜、大変そうだね」と。口では「すごいね」と言いながらも、目は明らかに「たいしたことない」と言っているように見えました。

 

私がAさんの近況をたずねると、「私は商社で営業してるの。出張も多くてさ〜、もう毎日バタバタ」と言います。「それはすごいね」と返すと、「まあね。高校のころから努力してきたからさ。でも……弁当屋かぁ」と続けました。

 

私は今の仕事に誇りを持っていますが、その言い方に「弁当屋=負け組」と言われたような気がして、苦笑いしながら会話を切り上げました。

 

同窓会から数カ月後、あの彼女が来店して…

それから数カ月たった、ある平日の昼下がりのこと。お客さんが来たと思って顔を上げると、そこにはスーツ姿のAさんが立っていました。「いらっしゃい。どうしたの?」と声をかけると、彼女は「ここの唐揚げ弁当がおいしいって聞いてさ。職場、近いんだよね」と言います。

 

そして続けて、「今度、うちの会社で勉強会があるんだよね。参加者がだいたい50人くらいでさ。そのお弁当を、ここで頼めないかなって思って」と言い出しました。私は「50人分……?」と固まってしまいました。すると彼女は、「そう。ビッグチャンスじゃない? 社内で評判になったら、固定の取引にもなるかもよ?」と畳みかけてきます。たしかに、50食の注文は小さな店にとって大きな話。でも同時に、ドタキャンされたときのリスクも同じくらい大きくて……。

 

「ありがたい話だけど、うちは大口注文は“書面での予約”が必要なんだ。1週間前までに注文書をもらって、キャンセルは3日前まで。それ以降はキャンセル料が発生するって形でやってて」と伝えました。すると彼女は、わざとらしく肩をすくめながら「私さ、営業でバタバタしてるし、そういう細かい書類とかマジ苦手なんだよね」と言いました。

 

続けて、「でもさ、同級生ってことで、そこなんとかならない? 口頭で“お願いね”ってことにして、当日もし何かあったら私から連絡するから。ね?」と、“同級生”を盾にして店のルールを曲げさせようとしているのが見え見えでした。それでも、ここで折れたらきっと後悔する……と思い、「もし頼んでくれるなら、あとで注文書を送って。フォーマットはこっちからも送るから」と伝えました。彼女は少しむっとした表情を浮かべましたが、「わかったよ」とだけ言って、その日は帰っていきました。

 

当日の朝に「お弁当50個お願い!」と連絡が

その夜、私は約束通り、注文書のフォーマットと条件をメールで送りました。ところが、1週間待っても、10日待っても返信はなく……いつもの日常が続いていきました。そして、勉強会があると聞いていた当日の朝。開店準備をしていると、スマホがけたたましく鳴りました。画面を見ると、発信者はAさん。

 

「もしもし、今いい?」と言われ、「仕込み中だから、手短にお願い」と答えると、彼女は開口一番、「ごめんね〜。あのさ、今日の勉強会の50個のお弁当さ、やっぱりそっちでお願いしたいんだよね」と言ってきたのです。あまりにも当然のように言うので、私は一瞬、耳を疑いました。

 

「……え? どういうこと?」と聞き返すと、彼女は続けました。「実はさ、急に上司が『見栄えがいいからケータリングにしよう』って言い出して、そっちのお店に頼んでたんだけど……トラブルがあったとかでキャンセルになってさ〜。で、『同級生の弁当屋に50個で頼んであるんで大丈夫です』って部長に言っちゃったの。だから、今日はお弁当がどうしても必要で……」

 

電話口の向こうで、彼女が苦笑いしているのが伝わってきました。そこで私は言葉を選びながら、「……ごめん。その“50個の予約”、うちでは受けてないよ?」と静かに伝えました。すると、電話の向こうが一瞬で静まり返りました。

 

 

「今から…」必死のお願いに私が出した答えは

そこで私は、「大口は“書面での正式な注文”がないと受けないって、前に説明したよね。注文書はもらってないから、予約も入ってないよ」と伝えました。すると彼女は慌てた様子で、「ちょ、ちょっと待って。私、『例の勉強会のお弁当よろしくね』ってLINEしたじゃん!」と言います。

 

そのとき私は「正式な注文はメールでお願いします」と返していました。「口約束だけで50個も作れるほど、うちに余裕はないよ」と伝えると、彼女は急に早口になり、「ちょっと待って、本当に用意してないの?」と言い出しました。すると電話の向こうから、「おい、本当に手配してあるんだろうな!? もう参加者には昼食付きって伝えてあるんだぞ!」という上司らしき人の怒鳴り声が聞こえてきました。

 

「ねえ、今からでもなんとかならない? お昼までに50個作れない? お金はちゃんと払うから! お願い、本当に困ってて!」と必死に頼まれましたが、すでにほかのお客さんの予約もあり、材料もたりないことから、「どう考えても難しい」と伝えました。

 

電話の向こうでは、さらに上司の怒声が大きくなり、「どういうことだ! “同級生の店に頼んである”って言ったよな!? お前、まさか確認もせずに話を進めたのか!?」という言葉まで聞こえてきました。私はさすがに気まずくなり、「とにかく、今日のところは本当に無理だから。力になれなくてごめんね」とだけ告げて、電話を切りました。

 

後日、思わぬ2人が別々に店を訪れて…

数日後。いつものように店頭に弁当を並べていると、スーツ姿の男性が入ってきました。名刺を渡されると、Aさんの会社のロゴが印字されています。男性は「先日の勉強会で昼食が出なくなって、急きょ各自で昼を調達することになったんですが、うちの若い者がこの店の弁当を買ってきて、『めちゃくちゃうまい』って騒いでまして」と、苦笑しながら続けました。

 

「そんなこともあって一度、ちゃんとご挨拶をと思いまして。Aの不手際についてはこちらでもきっちり対応しています。ご迷惑をおかけしました」と言い、唐揚げ弁当を買っていきました。そして数日後から、Aさんの会社から定期的な注文が入るようになりました。

 

騒動からしばらくたったある夕方。店じまいの準備をしていると、「……久しぶり」という声がしました。そこに立っていたのは、少しやつれたような顔のAさんでした。「この前は、本当にごめんなさい。あの日の件で、部署替えになったんだ。『ちゃんと段取りもできない営業はいらない』って」私は、彼女の言葉を黙って聞いていました。

 

「正直、あのときは“弁当屋くらい、私の言うこと聞いてくれるだろう”って思ってた。完全に見下してた。お弁当はLINEで注文したつもりになっていて、何かあったら材料費だけ払ってキャンセルすればいいやって。何にもわかってなかった。本当にごめん」と、彼女は謝ってきました。

 

そして、注文を受けた唐揚げ弁当を渡すと、「こんなにちゃんと仕事してる人を、バカにしてた自分が恥ずかしいや」と言い、店を後にしました。弁当屋だからといって、負け組でも下の立場でもない。目の前の一つひとつに責任を持って、丁寧に仕事をする。これからも初心を忘れず、おいしい弁当を作っていこうと誓いました。

 

◇ ◇ ◇

 

大きな取引や人数の多い注文など、責任が伴う約束ほど、「同級生だから」「知り合いだから」ではなく、書面で条件を明確にしておくことが大切ですよね。また、どんな仕事にもそれぞれの大変さや専門性があります。規模や肩書きで判断せず、相手のルールや段取りを尊重し合う姿勢こそが、良い関係と信頼を育む土台になっていくのかもしれませんね。

 

【取材時期:2025年11月】

※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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      やっぱりドタキャンするつもりだったのね
      しかも材料費だけで50人前キャンセルするつもりとか

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    ライターベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班

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