新居での生活にも慣れ始めたころ、義姉から、テンション高めのメッセージが届きました。義姉は実家で義両親と暮らしているので、私とは敷地内同居になります。
「今から遊びに行っていい? 空いてる部屋とかあるよね? 確認させてもらって、もし気に入ったら使わせてくれるとうれしいな♡ 自宅サロン開きたいんだ〜、ネイルとかリラクゼーション系の!」冗談かと思いましたが、義姉は本気のようで……?
子ども部屋を狙う義姉
詳しく聞くと、「最近資格とったんだ! 練習も兼ねてサロンやらせてよ!」「あんたには無料でやってあげるよ?」とのこと。
ズカズカと家に上がり込み、子ども用に作った部屋をロックオン! どんなインテリアにしようか、サロンの名前はどうしようか、話を勝手に進めています。
でもここは自分たちのために建てた家。「部屋を貸すつもりはありません」とはっきり断りました。
すると、義姉の態度が一変。実家の土地に建てたのだから、自分にも使う権利があると主張します。
断固として首を縦に振らずにいると、最後には「そんな態度だと家族みんなからきらわれるよ?」とまで言われました。
甘やかされて育った結果
その夜、仕事から帰ってきた夫に義姉との一件を話すと、呆れた様子……。
夫によると、義姉は子どものころから「自分が一番」というタイプ。思い通りにならないと機嫌が悪くなるので、義実家の中では誰よりも優先されてきたそう。
「家を建てるって報告したときも、何か言われるかと思ってた。でもやけに静かだなって思ったら……こういう狙いだったんだな」と苦笑いする夫を見て、私はますます不安になりました。
その少し後、私は妊娠が判明、同じころ夫の長期海外出張が決まりました。出産するころ、夫は家を留守にします。私は実家に帰り、里帰り出産をすることになりました。
しかし気がかりなのは義姉のこと。自宅サロンを諦めていないようで、子育てを手伝うから部屋を使わせろ、里帰り中だけでもいいから明け渡せとしつこく交渉します。
子どもが生まれるとなれば子ども部屋はその子のために空けておきたいし、ましてや留守中好き勝手されるのは絶対に嫌です。厳重に戸締りをし、実家に里帰りしました。
私の家に誰かいる!?
無事に出産し、自宅に戻った私。赤ちゃんを連れて自宅に戻り、久しぶりにマイホームの玄関を開けようとすると、ドアガードがかけてあり開きません。
隙間から覗くと、家の中には人の気配が……。そして、かすかに聞き慣れた声がしたのです。家の中が見える窓があるリビング側に移動すると、家の中にはなぜかパジャマ姿の義姉がいました。
私はガラス戸をどんどん叩き、言いました。「どうして、うちにいるんですか? まず中に入れてください。ここ、私たちの家ですよね?」
動揺する私に、義姉は悪びれる様子もなく笑います。
「ちょっと〜落ち着きなよ。私を追い出さないって約束するなら、鍵を開けてあげてもいいけど〜?」あまりの図々しさに、言葉を失いました。
どうやって家に入ったのか尋ねると、「あんたたち、お母さんたちに鍵預けてたでしょ? それを使ったの!」と笑いながら話す義姉。義母には、私に留守を頼まれたと言ったようです。万が一のために……と鍵を預けたことを心底後悔しました。
合鍵をくすねて他人の家に無断で入り込むのは、住居侵入にもなりかねない行為です。本来なら警察沙汰にしてもおかしくありません。怒りと不安で震えながらも、赤ちゃんを抱えている私は、深呼吸をしました。
「ここは私たち家族の家です。勝手に入られるのは困ります。出ていっていただけますか?」そうはっきりと伝えても、義姉は「いやいや、もう無理だから~! 私が一緒に住むのがそんなに嫌なら、あんたたちは実家に住みなよ! 子育てを手伝ってもらえて一石二鳥でしょ」と取り合ってくれません。
さらに義姉はネイルサロンのオープン準備も進めているとのこと。まさか先日の自宅サロンの話がここまで進んでいるとは、びっくりです。
義姉に家を取られて…
義姉は家を明け渡す気配がなく、義母は「家族なんだから助け合いましょうよ。しばらくの間だけ様子を見てあげられない?」と義姉をかばうばかり。夫も出張先から戻ってこられず、やむなく私は義実家で赤ちゃんとの生活を始めました。
夫の帰国まで1カ月……ただただ耐えるしかない日々。義姉は着々と自宅サロンの開業準備を進め、お客様と思われる来客を目にするようになりました。義母曰く、まずは友人やその知り合いを対象にプレオープンという形をとっていたようです。
義姉がサロンとして使っているであろう子ども部屋の様子は外から見えず、落ち着かない日々が続く中、夫の帰国を1週間後に控えたころ、義姉の来客がめっきり減っていることに気付きました。
もともと目を背けていたこともあり、いつからなのかははっきりしません。義母に聞くと、お客様が来ていたのは最初の10日ほどで、その後は途絶えていたとのことでした。
一体どうしたのでしょうか。
やばいオーナーがいるサロン
夫の帰国まであと3日。娘を連れて公園に行くと、義姉の友人にばったり出会いました。以前から義実家にもよく遊びに来ており、私とも顔見知りです。サロンにも来ていて、そのときは義実家に寄って出産祝いをくれました。
立ち話をしていると、義姉のサロンの話に……。本当は「あれは私たちの家なんです」と言いたかったけれど、状況を説明する勇気が出ませんでした。
すると「本当はあの家、あなたが建てたんだよね?」と言われてびっくり! なんと義姉はサロンのお客様に「弟が建てた家に代わりに住んであげている」「使っていない部屋を活用してあげている」などとふれまわっているそう。
それを聞いたお客様はみんなドン引きしたようで、サロンを再び訪れる人もいなければ、友人を紹介してくれる人もいないのではないか、と友人は言います。「やばいオーナーがいるサロン」という噂が広がり、客足が遠のいたようです。
思わぬ結末
ついに夫が帰国。事情を聞いた夫が落ち着いた声で「これ以上居座るなら出るところに出る」と伝えると、義姉はあっさりと家から出てきました。その上「こんな家もういらない」と吐き捨てるように言ったのです。
あまりにあっけなく実感が追いつかないまま、ようやく家を取り戻しました。夫は義姉にクリーニング代を請求しましたが一向に払わず、結局夫が持ってきたのは義両親が出したお金でしょう。
しばらくして、また例の義姉の友だちと児童館で遭遇。家を取り戻すことができたと報告すると笑っていました。彼女が言うには、義姉の自宅サロンに悪い口コミが1つついたことをきっかけに、同じようなコメントが少しずつ増えていったそうです。
内容はネイルの出来に関する言及から義姉の人柄までさまざまでした。ネイルの仕上げは雑で、投稿された写真を見ると空いた口が塞がりません。中には「弟の家を奪ったことを自慢された」という投稿も……。すっかり嫌になり、自宅サロンはやめたのだとか。
それに、家事を自分でしなくてはならないこともネックだったのではと思います。洗濯はひっそり義母がやっていたようですが、掃除やゴミ捨てなどは自分でやるしかありません。これまで実家で義母にやらせていた義姉には、さぞかし大きな負担だったことでしょう。
返してもらったときはひどい荒れようでした。洗われていないお風呂、油まみれのキッチン、埃の積もった床……よく人を招いていたなと思ってしまうほどでした。
それでも、ようやく取り戻したわが家で赤ちゃんの笑い声が響く日常が戻りました。これからは、この家を安心できる場所として育てていきたいです。
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家族であっても、守るべき距離があります。お互いが気持ちよく暮らすためには、配慮や節度が欠かせません。そんな当たり前のことにあらためて気付かされますね。
【取材時期:2025年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
あちらは何と言っても実の親子、案外事情を知っていて鍵を渡したのかも知れませんよ。