長い付き合いの古着屋
僕には、大学3年生のときから付き合っていた彼女である「B」がいました。長らく一緒にいて、彼女との結婚も意識しており、僕は「そろそろ彼女へのプロポーズも考えないと」と思っていました。次のデートでBに結婚についての話をしようと思った僕は、いつも通っていた古着屋で服を新調することに。
この古着屋は、僕が学生のころから通っているお店です。生活のためにアルバイト漬けの毎日を送っていた僕が、最初は「安く買えるから」という理由で利用していました。そのうち、古着自体を好きになり、女性オーナーのAさんと仲良くなりました。そして、僕はアルバイトを掛け持ちしていること、お給料の面などの悩みを彼女に打ち明けるように。
すると彼女は僕に
「もしよければこの店でアルバイトしない? お給料の面も相談に乗れるし、シフトの融通もきかせられると思うよ!」
と言ってくれたのです。そこから僕は就職までこのお店で働きました。
社会人になった今も、古着が好きでこのお店に来ています。Aさんも変わらず、「デートなら気合を入れなくちゃ!」と、僕に似合う服をアドバイスしてくれました。
そろそろプロポーズ…のはずが
デート当日。僕はこの日のために新調した服を着て、待ち合わせ場所へ。「Bにも褒めてもらえるかな…」なんて思っていたのですが……。僕の姿を見るなりBは
「何その格好。また古着?」と不満そうでした。以前であれば、僕がデートで古着を着ていてもそんなことを言いませんでしたし、むしろ「それ、似合ってるよ」と褒めてくれることが多かったのに……。
思い返すと、最近のBは以前と比べてとても派手になっていました。服もですし、バッグも毎回違うブランドのものを持つように。
こんなこともあってか、Bはデートもずっと不機嫌でした。そして別れ際に
「もう別れよう」
まさかの別れを切り出されたのです。予想していなかった言葉に僕が動揺していると、Bは続けて「実は新しい恋人ができたの。古着なんて着る人じゃなくて……ブランド志向が私と合うの」と言いました。
2人で元カノを見返そう!
僕はBに振られた翌日、話を聞いてくれそうなAさんの元へ向かいました。Aさんは、僕の話を真剣に聞いてくれた後、驚くことを提案したのです。
「私と一緒に、古着専門店を立ち上げない?」
僕は古着が好きでしたが、自分で会社を立ち上げる自信はなく、不安でいっぱいに。それでもやってみたいかも……と思っていた僕の気持ちを察したのか、
「不安かもしれないけど、私がいるから大丈夫。2人で古着の良さを伝えて、元カノを見返そう!」
とAさん。そんな彼女の言葉に後押しされた僕は、勤めていた会社を辞めて、Aさんと一緒に会社を立ち上げることを決意したのでした。
元カノとの再会
Bに振られてから数年後。僕はある時計店に行きました。時計を見ていると、後ろから「もしかして…」と声をかけてきた人物が。振り向くと、そこには元カノの姿がありました。元カノは男性と一緒に来店していて、時計を購入してもらったよう。僕に
「まだそんな古着を着てるんだ…私は高級時計を買ってもらったけど、あんたには無理よね」とマウントをとってきました。
Bが僕に「なんでこんなところに…」と言いかけたとき、お店の人が「お待たせしました」と声をかけてきました。僕が今日来店したのは、なかなか手に入らない限定の時計を購入するためでした。
その様子を見たBは仰天。「は…? なんであんたが…」と開いた口がふさがらないみたいでした。僕はその場でペアの女性用の時計も購入。Aさんにプレゼントするためでした。
実は、僕とAさんが立ち上げた古着専門店は、この数年でうまく軌道にのり、たくさんのお客さんがついてくれるように。いいお店で時計を購入できるほどになったのです。
また、僕とAさんは結婚。一緒に仕事をする中で、お互いに惹かれ合いました。
元カノのおねだりに僕は…
僕の話を聞いたBは、「まさか起業していたなんて!」と興奮状態に。そして隣に恋人がいるにもかかわらず、「元カノのよしみで…なんか買ってくれたりとか…」とおねだりをしてきたのです。
そんなBに僕は「嫌だよ。もう君とは関係ないしね」とキッパリ。それでもひかないBに、 僕は「価値観は人それぞれだけど、僕は妻のことも、古着のことも大切にしているから。君との関係は終わっているんだよ」と言い放つと、Bは悔しそうに恋人とお店を出ていきました。僕が家に帰ると、Aさんが笑顔で迎えてくれました。僕が困っているときには、いつも隣にいてくれたAさん。そんな彼女のことを手放したくないと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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