両親教室の日、夫の姿がなく…連絡すると
メールを送っても既読にならず、電話をかけると、夫は軽い調子で「悪い、やっぱ今日は行けない」と言いました。休みのはずなのに急な仕事が入った、という説明に私は言葉を失いました。そして、「私ひとりで行けってこと?」と聞くと、「キャンセルして予約し直せばいいじゃん。そんなことも聞かなきゃわかんないの?」と、トゲのある言い方をされ……。
それでも、おなかの赤ちゃんのために、ここで揉めるのは良くないと自分に言い聞かせ、「わかった。今日はキャンセルして母親教室を予約する」とだけ伝えました。すると夫は、「出産すれば育休も取れるんだから、子ども関係は全部やってよ。俺は外、お前は家」と、当然のように役割を押しつけてきます。
私が「子どもは2人で育てるものでしょ」と返しても、「はいはい、生まれたらちゃんと面倒見るよ」と、薄い約束で流されました。私はその言葉を信じたい一心で、せめてベビーベッドの組み立てだけはお願いし、夫が「おっけー」と言った瞬間に、これ以上深く考えるのをやめました。
出産後、体調を崩した私。夫に助けを求めると…
数カ月後、元気な男の子を出産。自宅へ戻ると、3時間ごとの授乳やおむつ替えで昼も夜も曖昧になり、睡眠不足で体は鉛のように重く……。子どもはかわいくて仕方ないのに、寝不足と産後の痛みで体調は限界。今日はどうしても休みたいと思い、夫に電話しました。
「お願いだから早めに帰ってきてほしい。体調が悪くて、今日だけは見てほしい」と伝えると、返ってきたのは「残業してる俺に、帰ってから世話しろって? そりゃない」という、苛立った言葉でした。私は必死に「本当に具合が悪い」と訴えましたが、夫は「体調管理も母親の仕事だろ。家にいるくせに、なんで体調崩すんだ」と言い放ちました。
産後で体調が万全ではないこと、寝不足が続いていることを説明しても、「労わってほしいのは俺のほうだ」と押し返されました。私が「じゃあ、母を呼んでいい?」と聞くと、夫は嫌そうに「だらしがない」と吐き捨て、「母親としての覚悟がたりない」と説教を始めたのです。
悔しくて涙がにじみましたが、息子の安全が最優先だと腹をくくり、母に助けを求めることにしました。すると夫は、「義理の母親が家にいたら休まらない。俺はホテルに泊まる」と言い、家庭から逃げるように帰宅を放棄しました。その夜、母が来てくれた安心感がある一方で、夫に見捨てられた現実の冷たさに、なんとも言えない気持ちになりました。
「息子のこと、かわいくないの?」夫に問うと…
それから1週間後。体調が落ち着いたわけでも、生活が整ったわけでもありませんでしたが、私は夫の「生まれたら面倒を見る」という言葉に、まだどこかで期待していました。だから、「今日は早く帰ってこられる? 息子を見てほしい」と伝えたのです。しかし夫は「無理。忙しい」と言い、仕事をセーブしてほしいと頼んでも、「無理に決まってる」と切り捨てました。
私が「息子のこと、かわいいと思わないの?」と聞くと、夫は少し黙ったあと、信じられない言葉を口にしました。「あんまりかわいくない」「自分に似ていない」「本当に俺の子なのか」と。さらに、「お前が産後ヒステリーになったからかもしれないけど、息子を見るとイライラする。DNAが違うのかも」とまで言われ、怒りよりも先に、虚しさがこみ上げてきました。
ここまで来たら、もう「わかり合う」ではなく「守る」しかありません。以前、母が「一度ちゃんと調べたほうがいい」と言っていたことが脳裏をよぎり、その晩から私は静かに動き始めました。
夫「DNA鑑定した」その言葉に隠された意図とは
そして2カ月後、夫が急に改まった様子で「話がある」と切り出し、「あの子は俺の子じゃない。DNA鑑定をした。離婚してくれ」と突きつけてきました。私は冷静に「やっぱり、あなたの子じゃないんだ……」 とつぶやきました。夫の嘘は分かっていましたが、ここで反論すれば相手の思うつぼ。私は“信じたふり”をして、夫に決定的な言葉を言わせることにしたのです。夫は「ほらな! 浮気したってことになるんだぞ」と勢いづき――私はそこで、きっぱり否定して真実を示しました。
夫がDNA鑑定をしたというのはウソ。私を脅し、私から不利な情報を引き出して、離婚を有利に進めるための罠だとわかっていました。この2カ月間、私は母の助けを借りながら不倫調査を依頼し、同時に、今後の生活を崩さないために離婚後の手続きについても調べてきました。残業や、会社の近くのホテルに泊まることが増えた夫。その裏で、会社の同僚と関係をもっていたのです。証拠を突きつけると、夫は青ざめた表情で事実を認めました。
1週間後、弁護士からの連絡に逆上した夫が「養育費も慰謝料も払えない」と怒鳴ってきましたが、私は「正式にDNA鑑定をした結果、息子は私たちの子だと証明されたよね?慰謝料は、不倫の代償として支払ってください」と、事実だけを淡々と伝えました。もちろん、不倫相手の女性にも慰謝料を請求しています。
慰謝料を請求されたことで、女性のほうは現実に引き戻されたのか、夫と別れると言っているようでした。すると夫は、「シングルは大変だ。俺が必要だろう」と言い出しましたが、私は心の底から冷めた声で断りました。保育園に入れれば仕事に復帰できること、母のサポートがあることを伝え、「あなたは不必要。むしろ邪魔」と、はっきり線を引いたのです。
その後も夫から連絡はありましたが、すべて無視し、弁護士に任せました。今は母の助けも借りながら、穏やかな日々を過ごしています。
◇ ◇ ◇
「本当に自分の子どもなのか」という疑念があったとしても、パートナーの同意なく子どものDNA鑑定を申し込むことは、プライバシー侵害や人格権侵害として、不法行為(民法709条)に当たり得るとされています。信頼関係を大きく損なうだけでなく、法的トラブルに発展する可能性もあります。
育児も夫婦関係も、「言った・言わない」や脅し合いで成り立つものではありません。相手の言動に恐怖や違和感を覚えたときは、ひとりで抱え込まず、家族や自治体の相談窓口、専門家(弁護士など)に早めに頼ることが、自分と子どもの生活を守る一歩になります。自分と子どもの安心を最優先に、早めに“頼る”という選択肢を持っておきたいですね。
【取材時期:2025年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。