クリスマスの婚約破棄
僕とAが婚約して迎える初めてのクリスマス。僕はAと食事の約束をしていたため、早めに仕事を切り上げました。
予約したレストランは、僕がAにプロポーズした思い出深い場所。きっとAも喜んでくれるだろうと胸をときめかせていました。
そんな中、Aから電話が。突然の電話に、「なんだろう…」と思いながら出てみると、
「別れてほしいの」
とA。
僕は冗談だと思って、「え? サプライズだよね…」と軽口をたたくことしかできませんでした。ところがAの冷たい声色は変わらず、「価値観が違うと思っていた」「結婚に自信がなくなった」と曖昧な言葉ばかり。最近まで、僕と未来の話をしていたAと同じ人間とは思えない冷たさで……。
僕がどんなに「待ってほしい」と言葉をかけても、Aは聞く耳を持ちませんでした。最終的には、「そういうことだから、婚約は解消で」と電話を切られてしまいました。
会社のビルから出たところで声も出せずに立っていると、横から女性が声をかけてきました。
「大丈夫ですか?」
女性が、心配そうに僕を覗き込んでいました。何もかもどうでもよくなっていた僕は、見知らぬ彼女に、僕が落ち込んでいた理由を話しました。
声をかけてきた女性の正体
彼女は、Bという女性でした。僕の話を聞いたBは、ため息をついて衝撃の事実を告げました。
「言いにくいんですが…Aさん、あなたが通っていた大学の教授と浮気してましたよ」
あ然とする僕の隣でBが封筒を取り出すと……中にはAと中年男性が並んでホテルに入る写真が。僕が、「どうしてこの人はこんな写真を持っているんだろう…」と疑問に思っていると、
「その人、私の父なんです」
とB。父親の様子がおかしいと感じて調べた結果、Aに辿り着き、さらに僕の存在を知って心配になったとのことでした。Aの婚約者である僕にも、事実を伝えたいと思い、会社のビルから出たところで待っていたとのこと。
Bの話を聞いた僕は、まさか、僕たちが通っていた大学の教授とAが浮気していたなんて……と絶望しました。
そんな僕の様子を見て、Bは
「傷つけるつもりはなかったんです。ただ…知らないままのほうが、もっとつらいと思って」
と言いました。
その後、彼女の提案で僕たちは近くのレストランに入りました。食事を取れば少しは落ち着けるだろう、と考えてくれたのかもしれません。温かい料理と、彼女の穏やかな気づかいに、凍りついた心が少しずつほぐれていくのを感じました。
浮気相手と元カノの再会
食事を終えてレストランを出ようとしたとき、彼女が急に立ち止まりました。
「…お父さん?」
そこには彼女の父。隣には、元婚約者のAがいました。Aは僕を見るなり、
「なにその女! 浮気してたの!?」
と驚きの発言をしたのです。僕があ然とする横で、Bは
「浮気してたのはあなたです、Aさん。証拠もあります」とキッパリ。
僕たちのやり取りに、周囲の視線が集まりだしたため、僕は場所を移すことを提案し、喫茶店へ入りました。
彼女はテーブルに写真を広げ、淡々と説明。どうやら教授はAに恋人がいないと聞いていたようで……。一方のAも「え…奥さんとうまくいってないから別れるって話だったでしょ…?」と言っていました。Aは、教授は妻と離婚していると思っていた様子。どうやら、教授とAはお互いに嘘をついていたようでした。
「このことは母に伝えます。母が慰謝料を請求したいと言ったら、慰謝料を請求します」とB。あ然とする2人の姿を見て、僕は心のどこかにあった未練が完全になくなりました。僕はAに「2度と僕の前に現れないで」と伝え、喫茶店を後にしました。
元カノの復縁申し出と、僕の決断
数日後、残業を終えて会社から出ると、ビルの影にAが立っていました。Aは、
「教授の彼との結婚はなしになった。やっぱり私…あなたでよかったの」
と涙目で僕に訴えてきました。あれほど僕に冷たく別れを告げてきた人が、何を今さら……と呆れてしまいました。僕は
「悪いけど、僕はよりを戻すつもりはないよ。自分の選んだ道の責任は自分で取りなよ」
とはっきり伝えました。その言葉を聞いて、Aはようやく諦めがついたようで、黙って僕の前からいなくなりました。
同時に、Bとも距離を置くことに。助けてもらったことに感謝はしていますが、複雑な事情の中でこれ以上関わるべきではないと感じたからです。Bに連絡して、
「もう会わないほうがいいと思います。巻き込みたくありませんから」
と伝えると、彼女も同じ考えのようでした。
それぞれの未来へ
年末、仕事を終えて会社を出た夜。会社のビルから出たところに、Bの姿がありました。彼女とはもう会わないという話をしていたので、Bがいることに驚きました。彼女は僕と目が合うと、「あ…最後にお会いしておきたくて」とつぶやきました。
Bは、「父が迷惑をかけてすみませんでした」と謝罪してくれました。僕は、「謝らないでください。むしろ、この前は本当にありがとう。あの日、あなたが声をかけてくれなかったら僕はひとりで抱え込んだままだと思います」
僕が頭を下げると、彼女は少し驚いた顔をして、柔らかく笑いました。
「力になれればと思っただけですよ。私も、前に進みます」
僕が、Bの言葉に「お互いさまですね」と返すと、彼女は「はい。どうか幸せになってください」と返してくれました。
その言葉はまっすぐで、やさしくて、そしてさっぱりとしていました。未練や恋愛ではなく、ただ人として向き合ってくれた真っ直ぐさ。彼女のひと言に、救われた気持ちになりました。
まだまだつらい気持ちは払しょくできていませんが、心は少しだけ軽くなりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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