夫は結婚当初から太り気味で、私は自分の知識を生かして彼を健康にしてあげたいと心から願っていました。新婚当初、夫も「かっこいい夫でいたい」と私の指導に協力的で、二人三脚で努力した結果、半年で5キロの減量に成功したのです。しかし、そこから体重が落ちなくなってしまいました。
「ママの味」が正義?豹変して調味料をかけまくる夫
ダイエットが停滞期に入ると、夫は目に見えてイライラするようになりました。「頑張っても減らないなら意味がない」と、それまで我慢していた反動が一気に爆発したのです。
私が作る、塩分や糖分を控え素材の味を引き出した料理に対し、夫は一口食べるなり大きなため息をつくようになりました。「味薄っ! 味付けを忘れたんじゃないか?」と嫌みを言い、マヨネーズや醤油を食卓に持ち込み、私の目の前でドバドバとかけることが日課になってしまったのです。
「ママの味と違うんだよな」。それが彼の口癖でした。一度、義実家で食事をごちそうになったことがありましたが、出てきたのは茶色い高カロリーな料理ばかり。さらに食べる直前に追加で塩を振りかけるという、あまりに不摂生な食事でした。かつての夫は、この味で育ってきたのだと絶望しました。
「せっかく5キロ痩せたんだから、健康のためにキープしようよ」と、私は何度も説得を試みました。しかし夫は、「まずい料理を食べて長生きするより、好きなものを食べて太く短く生きるほうが幸せだろ。もう食事制限なんてこりごりだ!」と言い放ち、完全に心を閉ざしてしまいました。
崩壊した夫婦関係
ある日のことでした。仕事から帰宅すると、連絡もなく義母が家に来ていたのです。夫が「毎日まともなメシが食えなくて限界だ」と泣きついたらしく、料理を教えに来たとのことでした。
「病院食みたいな味のない料理じゃ息子がかわいそうだわ。本当の味を教えてあげるから見てなさい」
義母は勝ち誇った顔でそう言い放ちました。夫はまだ標準体重よりずっと重いのに、義母の目には「嫁に満足に食べさせてもらえず、ひもじい思いをしている被害者」に映っていたようです。
その後、キッチンには義母が作った山盛りの唐揚げに濃い色をした味噌汁、脂っこい炊き込みご飯が並びました。全体的にかなり味が濃く、私には塩気が強すぎたため、ほんの少ししか口にすることができず……。しかし、二人は「やっぱりこの味付けが最高」と言いながら、あっという間にすべて平らげてしまったのです。
義母が帰った後、夫は当たり前のように食後の炭酸飲料とスナック菓子に手を伸ばしました。「今日はもうやめておこうよ」と私がやさしくたしなめた瞬間、夫は激昂。
「うるさいんだよ!家でくらい好きなようにさせろ!」
夫はヒステリックに叫び、持っていた炭酸飲料のボトルを床に勢いよく投げつけました。その衝撃で、近くのローテーブルに置いてあった食器も落ちて割れてしまい、飛び散る破片……。恐怖と悲しみで、私の中で糸がぷつりと切れました。私はその足で、最低限の荷物だけを持って家を飛び出しました。
3年後…意外な場所で再会
その後、弁護士を介して正式に離婚。平穏な日々を取り戻し、私は別の病院へ転職しました。そこで今の夫と出会い、私を心から大切にしてくれる彼と再婚したのです。
離婚から3年が経ったある日、私は勤務先の廊下で、見覚えのある男性を見かけました。
かつての面影がないほどやつれていましたが、間違いなく元夫です。まさか職場で再会することになるとは、思ってもみませんでした。
彼は私に気づくと、なんと「偶然再会するなんて、運命だ! やり直そう!」と言い出し、人目も気にせず復縁を迫ってきました。私がすでに再婚していることを伝えても、彼は興奮状態なのかまったく耳に入っていない様子。
そんな押し問答をしていたとき、元夫の名前を呼ぶ声が廊下に響きました。声のするほうへ目を向けると、そこには車椅子に乗った一人の女性がいたのです。
以前よりもさらに体が大きくなり、自力で歩くこともままならなくなった元義母の姿でした。長年の不摂生がたたり、大きな病を患ってしまったようでした。
元夫は、要介護状態になった母親の世話をするために正社員を辞め、自分自身も心身ともに限界を迎えていると涙ながらに話し始めました。そして挙句の果てに、「君は管理栄養士なんだから、母さんの介護も俺たちの生活費も、君が面倒を見てくれたら一番安心なんだ」と、耳を疑うようなことを口にしたのです。
あまりの図々しさに、怒りを通り越してあきれてしまった私。結局、騒ぎを聞きつけた医師や看護師によって二人はなだめられ、連れて行かれました。
私は今、自分と同じように健康を大切にしてくれる夫と、穏やかな毎日を過ごしています。あのとき、勇気を出して家を出て本当によかった。自分の幸せのために一歩踏み出す決断をすることは、決して間違いではないのだと痛感した出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。