私の唯一の癒やしを否定する夫
実は、私には学生時代から大切にしている趣味がありました。それはアニメのフィギュアを集めることです。自分が働いて得たお給料の中から、数カ月間コツコツと節約をして、ようやく手に入れたコレクションを眺める時間は、私にとって何よりの至福でした。
しかし、夫はそんな私を冷ややかな目で見ていました。わが家の生活費は完全に折半。その上で、残った自分のお金でフィギュアを買っているにもかかわらず、夫は不機嫌そうにこう言い放ったのです。
「そんな無駄遣いばかりして、いいご身分だな。俺だって独身だったらもっと自由に金が使えたのに。本当に『妻ガチャ』に失敗したよ」
自分だけが家計のために我慢しているという被害妄想からくる、心ない言葉。そんな不満を日常的にぶつけられ、私の心は少しずつ削られていきました。
帰宅後の絶望!夫が勝手に…
ある日のことでした。私が仕事から帰宅すると、その日、有給休暇を取っていた夫が、趣味の部屋で何かをガサゴソとやっていました。嫌な予感がして部屋へ飛び込むと、そこには信じられない光景が広がっていたのです。
あんなにたくさんあったコレクション棚はすでにもぬけの殻。そして夫が、最後に残っていた数体のフィギュアを無造作にゴミ袋へ放り投げているところでした。
「ちょっと、何してるのよ! 他のフィギュアは!?」
私が叫ぶと、夫は最後の袋の口を縛りながら、勝ち誇ったような顔でこう言い放ったのです。
「全部片付けて、朝のうちにゴミ置き場に出した。もうゴミとして回収されただろうな。お前をまっとうな人間に戻してやるために、全部捨ててやったんだよ!」
大切なものを、同意もなく勝手に処分する。その行為がどれほど残酷なことか、彼は理解していませんでした。私は、何年もかけて集めた宝物たちが消えてしまったのだと絶望し、その場に泣き崩れてしまいました。
勘違い夫への反撃
私は震える声で夫に告げました。
「……もうあなたとはやっていけない。離婚しましょう」
すると、夫は「は?」と鼻で笑い、余裕たっぷりの表情で私を見下してきました。
「お前、本気で言ってるのか? ホントは離婚なんてしたくないくせに。俺の稼ぎがなきゃ生きていけないだろ?」
そう言って高をくくる夫の目の前に、私はバッグからずっと隠し持っていた離婚届を取り出しました。
「本気よ。いつでもあなたを捨てられるように、準備していたの」
突きつけられた離婚届に夫が絶句する中、私は冷ややかに真実を告げました。
「私を養っているつもりだったみたいだけど、実は私の年収、あなたの2倍以上あるの。あなたが勝手に捨てたコレクションも、かなり価値が高いものだったのよ。あなたには到底、弁償できないくらいの金額ね。でも弁償は求めないから、その代わり財産分与は放棄してもらうからね」
自分の勘違いを突きつけられた夫は、あまりの衝撃に一瞬で顔面蒼白になりました。
実は、結婚前のあいさつの際、勤め先や職種を伝えると、業界に詳しい義父が「その職種なら、しっかり稼ぎがあるんだね。息子に正確な年収を言うとあてにするから、言わないほうがいい」とこっそり助言してくれていたのです。
義父の怒りの理由は…!?
数日後、義両親を交えて話し合いの場を持ちました。逆ギレした夫は「父さんも母さんも言ってやってくれよ! くだらないグッズを集めてる奴が悪いって!」と義両親に同意を求めました。すると、それまで黙っていた義父が、静かな、しかし怒りに震える声でこう言ったのです。
「……情けない。お前に言ったことはなかったが、実は私もここ数年、フィギュアのコレクションが趣味なんだ。◯◯さん(私)とは、同じ趣味を持つ者として、仲良くさせてもらっていたんだよ」
「人の宝物を平気でゴミ扱いするような人間が自分の息子だなんて、恥ずかしくてたまらない。お前を庇うつもりはない。これからは自分の力だけで生きていきなさい」
夫は自分の味方だと信じて疑わなかった義父からも突き放され、その場に立ち尽くしていました。
自分らしい毎日を取り戻して
その後、無事に離婚が成立しました。元夫は、私との圧倒的な経済格差を突きつけられ、親の援助も期待できない現実を知り、最後は逃げるように去っていきました。
そして、夫に捨てられたフィギュアたちですが……実はすべて無傷で戻ってきました。離婚届を突きつけた翌朝、荷物をまとめて家を出ようとした私に、アパートの管理人さんが「ルール違反のゴミが回収されず、放置されているから確認してほしい」と声をかけてくれたのです。
普段から家事を一つもせず、ゴミ出しさえ私任せだった元夫は、ゴミの収集日や分別ルールをまったく把握していませんでした。不燃ゴミの日ではないのに大量に放置された指定外のゴミ袋は、回収されることなく、そのままゴミ置き場に残されていたのです。
趣味や価値観は人それぞれ。たとえ理解できなくても、相手が大切にしているものを一方的に否定し、奪う権利なんて誰にもありません。現在は、また大好きなフィギュアに囲まれ、本当の意味で穏やかな毎日を取り戻しています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。