消えていく『私』
私は、マサトが理想とする妻、理想とする母でいるために、細心の注意を払って生活するようになりました。
マサトが家にいないときも、24時間ずっとマサトの顔色をうかがって過ごすように……。





















「お茶」と、ひと言だけ発したマサトさんに、スッとお茶を出したマミさん。
そんなマミさんを見て、マサトさんは「最近やっと『普通の妻』らしくなってきたな。最初からこうやってればよかったんだよ」と、満足げに言いました。
その言葉を、マミさんは褒め言葉として受け取ってしまいます。
「母親失格」と言われて以来、マミさんの生活は一変しました。早朝から音を立てずに掃除をし、リモコンの位置をきっちり整え、「サボっている」と思われないようキッチンで立ったまま朝食をとり、食べたパンの袋は小さく結んでゴミ箱の底に隠す日々。
娘のアミちゃんが積み木を崩して遊ぶ音にさえ、「パパに怒られちゃう! ちゃんとしてないと!」と過剰に怯え、マサトさんがいないときも、常にビクビクしてしまいます。
怒鳴られなかった。否定されなかった。うれしい……。
マサトさんの顔色をうかがい、怒られないための選択を繰り返す毎日。「明日も間違えないようにしなきゃ」と、不自然な作り笑いをして鏡を見るマミさんなのでした。
◇ ◇ ◇
夫に怒られないために、ゴミを隠したり、子どもの遊びを制限したり、自分の行動すべてを夫の理想に合わせる生活。マミさんの生活を想像すると、思わず息が詰まってしまいます。さらに恐ろしいのは、マサトさんの「普通の妻らしくなった」というモラハラ発言を、マミさんが「褒められた、自分は間違っていなかった」と安堵してしまっている点です。これは信頼関係ではなく、完全に支配と服従の関係ではないでしょうか。
パートナーと過ごす中で、自分の感情よりも「相手を不機嫌にさせないこと」が最優先になってしまったら、それは「自分」が消えかけている危険信号です。相手の機嫌を取るために我慢するのではなく、自分が心地よく過ごせているか、自分の基準を見失っていないか、常に自分の心に問いかける視点を持ち続けたいですね。
苦しいときは友人や家族など、周囲に助けを求めましょう。頼れる人が思い当たらない場合は、専門機関を頼ることもできます。相談窓口をいくつかご紹介します。
※よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
ガイダンスで専門的な対応も選べます(外国語含む)
0120-279-338 つなぐ ささえる(フリーダイヤル・無料)
岩手県・宮城県・福島県から 0120-279-226 つなぐ つつむ(フリーダイヤル・無料)
※こころの健康相談統一ダイヤル
電話をかけた所在地の都道府県・政令指定都市が実施している「こころの健康電話相談」等の公的な相談機関に接続します。
0570-064-556 ※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。
※DV相談ナビ
全国共通の電話番号(#8008)に電話をすると、お近くの都道府県配偶者暴力相談支援センターにつながります。
#8008(はれれば)※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。
ゆる山まげよさんのマンガは、このほかにもブログで更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね。
ゆる山まげよ