幸せな毎日を過ごしていたマミでしたが、ある夜、自宅前の車内で夫が見知らぬ女性と抱き合っているような姿を目撃してしまいます。暗闇の中でマミの目に焼き付いたのは、その女性の肩にかかった鮮やかな「赤いスカーフ」でした。
後日、夫の不審な行動の真実を確かめるため、マミはあえて宅飲みが行われるという家まで夫を車で送りました。そこで現れたのは、あの日と同じ赤いスカーフを羽織った女性・モモでした。
夫は彼女を「会社で良くしてくれる同僚の奥さん」だと紹介し、モモもまた愛想よく挨拶を返しますが、そのアパートはどう見ても一人暮らし用。愛息・ヨウスケの前で平然と嘘をついているのではないかという疑念に、マミの心は激しく波立ちます。
マミは「ただ泳がせるだけでは気が済まない。この2人をメチャクチャにしてやりたい」と心に誓い、復讐のために動き始めます。まずは2人の正体を暴くための罠として、独身の疑いがあるモモを「夫婦でうちに招待したい」と提案しました。
夫を揺さぶるための賭けでしたが、夫はなぜか不気味なほど落ち着いた様子でその誘いを快諾します。果たして2人の関係は本当に「会社の同僚とその妻」なのか、それとも裏切り者たちの演じている芝居なのか……。疑惑が渦巻く中、マミが仕掛けた招待の日を迎えました。
仕掛けた罠の思いもよらない展開
















「モモちゃん、旦那さんが忙しいから1人で来るって」
夫の言葉に、マミは内心で舌を巻きます。不倫相手の家に1人で乗り込んでくる図太さに驚きつつも、平静を装い「私はいいけど」とだけ答えました。
それからの夫は、見ていられないほど浮足立っていました。「モモちゃんは料理がうまいからコツを聞きなよ」と持ち上げ、普段はしない掃除や育児にまで精を出す始末。
そして当日。買い出しに出た夫が、予定より早く帰宅します。「ただいま〜!」 玄関を開けた夫の隣には、なぜかミニスカート姿のモモがいました。「スーパーで偶然会ってさ」と笑う夫を、マミは(そんな偶然あるわけないでしょ)と冷ややかな目で見つめます。
室内でも2人の暴走は止まりません。 割り箸を忘れた夫が「マミの箸を貸してあげて」と無神経に言い出し、断ると「じゃあ俺のを貸す。俺は菜箸で食うから」と宣言。「悪いですよぉ〜♡」とはしゃぐモモ。目の前の茶番劇に、マミの心には「気持ち悪っ」という言葉しか浮かびません。
追い打ちをかけるように、モモが「本当に泊まっていいんですかぁ?」と甘い声を上げます。「そうそう、車で来たから酒飲むし泊まってくって。マミ、布団の用意よろしく!」 当然のように宿泊を決め、妻に準備を押し付ける夫。
お花畑モードで調子に乗る2人。呆れを通り越して「無」の境地に達したマミは、ただ静かに、冷めた眼差しで2人を見つめるのでした。
◇ ◇ ◇
『偶然会った』という子ども騙しの嘘や、妻に浮気相手の布団を敷かせる無神経さ。一見、滑稽にも見える2人の姿は、理性を失った人間がどれほど他人の痛みに鈍感になれるかを感じずにはいられません。
目の前ではしゃぐ夫の姿を見てショックを受けているはずのマミさんが、冷めた眼差しを向けているのは、自己防衛手段のひとつなのかもしれませんね。
もしみなさんが大切な人に裏切られたとしたら、どうやって自分を保ちますか?
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きりぷち