ある夜、マミは自宅前の車内で、夫のリュウが見知らぬ女性と抱き合っているような姿を目撃します。暗闇の中でマミの目に焼き付いたのは、その女性の肩にかかっていた「赤いスカーフ」でした。
後日、夫の不審な行動の真実を確かめるため、マミはあえて「宅飲みが行われる」という家まで夫を車で送ります。そこで現れたのは、あの日と同じ赤いスカーフを羽織った女性・モモでした。夫は彼女を「会社で良くしてくれる同僚の奥さん」だと紹介しますが、モモの指に指輪はなく、住んでいるアパートも明らかに単身用。愛息の前で平然と嘘をつく2人の無神経さに、マミは「この2人をメチャクチャにしてやりたい」と復讐を誓います。
さっそくマミは罠として、独身の疑いがあるモモを「夫婦でうちに招待したい」と提案しました。招待当日、夫が仕事で来れないからと、ミニスカートで現れたモモは「泊まっていく」と言い出し、リュウもそれを快諾したため、マミは呆れながらも「証拠集めの絶好のチャンス」として受け入れることに。
宿泊中、モモはマミの私物を勝手に使い、リュウも「マミより手際がいい」と彼女を絶賛。露出の多い姿で夫に尽くすモモの振る舞いは、まるで新婚夫婦のようでした。
その様子にマミは「もしかして、付き合ってる?」と直球を投げ込みます。わかりやすく動揺し視線を泳がせる2人の反応を見て、マミは不倫の確信を深めるのでした。そしてマミは罠を仕掛けることに。わざと席を外して2人の時間を作ったのです――。
仕掛けた罠と引っかかった2人












「冗談よ。2人の息があまりにぴったりだから、本当の夫婦みたいで見惚れちゃっただけ」と、穏やかな笑顔で場を収めたマミ。
2人は、その言葉に安堵し、自分たちがマミをうまく騙せていると確信します。
マミが「お父さんから電話だ」と言って、リビングを出るなり、見つめあうリュウとモモ。そしてリュウは「モモ……かわいすぎ……」と言ってモモを抱き寄せ、「奥さん戻ってこないよね? じゃ、もっと……♡」と2人はお互いを求め合い、キス……。
しかし、それはマミが仕掛けた「罠」でした。 リビングのベビーモニターは、録画機能がオンになったまま。別室で静かにその様子を確認するマミの瞳には、こらえきれない涙が浮かんでいました。薄々勘づいていたとはいえ、目の当たりにした残酷な裏切り。胸を刺すような痛みに、マミは一度だけ顔をゆがめます。
けれど、彼女はすぐに涙を拭い、毅然と立ち上がりました。
「――泣いている場合じゃない。とことん、やってやる」
リビングに戻ったマミは、何食わぬ顔で2人に提案します。
「ねえ、ヨウスケのかわいい動画がベビーモニターで撮れたの。一緒に見ない?」 「スマホじゃ画面が小さいから、テレビに繋いで流すわね」
その言葉に、2人の顔から血の気が引きました。
「ま、待て待て待て! 誰が見たいんだよ、子どもの動画なんて!」 「そうですよぉ! せっかく盛り上がってるのに!」
大慌てで制止する2人。その滑稽な姿を冷ややかな目で見上げたマミは、スマホのケーブルを静かに抜き、絶望の淵に立たされた2人を黙って見下ろすのでした。
◇ ◇ ◇
どれほど覚悟があっても、裏切りの現場を直視するショックは計り知れないものですよね。マミさんが流した涙に胸が締め付けられます。信頼していた相手に裏切られたとき、人は冷静さを保つことで自分を守ろうとするのかもしれませんね。慌てふためく2人を冷ややかに見下ろすマミの表情には、もはや夫婦としての温もりは微塵も感じられません。
信頼は一度失われると取り戻すことが難しいもの。日々の誠実さがいかに大切か、改めて考えさせられますね。
きりぷち