5年後、そんな私にも好きな人ができました。彼女との一件も知っている同級生です。時間をかけて関係を築き、トラウマを抱えたままでも前に進もうと決めて、私は結婚しました。
結婚して数年が経ったある日、かつて私の恋人を奪った友人から連絡が来ました。彼女は「後悔している」「今も独身で恋愛もしていない」と話します。
やがて彼女は「一度、ちゃんと謝りたい」と言い出しました。私は完全には信じていませんでしたが、「さすがにもう、同じことは起きないだろう」と、どこかで自分に言い聞かせていたのだと思います。過去に区切りをつけるつもりで、私は短時間だけ会うことにしました。
友人の裏切り、再び
再会した彼女は、当時のことを私に詫びました。そして互いの近況を話して別れたのです。それ以来彼女とは連絡を取ることはなく、「これで本当に過去に区切りがついたのだろう」と思っていました。
しかしある日、外出先で思いがけない光景を目にしました。夫とあの友人がふたりで手をつないで歩いていたのです。声をかけることも、駆け寄ることもできず、私はその場に立ち尽くしました。
いてもたってもいられれず、その夜私は夫と話をすることにしたのです。
一瞬の沈黙のあと、夫は観念したように視線を逸らし、こう言いました。「……隠すつもりはなかった。ちゃんと話そうと思ってた」
夫の話によると、友人は私に連絡する前に夫にコンタクトをとっていたよう。私たちが結婚したことをどこかから聞いたそうです。最初は、私と仲直りするための相談に乗っていただけだと言っていました。けれど、気付けば会う回数が増え、次第に気持ちが揺れていったそうです。
翌日、私は元友人とも話をしました。彼女は相変わらず勝ち誇ったように、「ごめんね。でも今回は本気なの。彼も、私のほうが一緒にいて楽だって言ってた」と口にしたのです。
しかし当時の私とは違います。「それなら、どうぞ」と笑って答えました。すると彼女は、少し拍子抜けしたような顔をしたのです。
夫略奪を受け入れたワケ
私は淡々と、夫に離婚を切り出しました。夫は最初こそ慌てていましたが、最終的には抵抗しませんでした。もともと、強く引き止めるほどの覚悟はなかったのだと思います。離婚は、思っていたよりもあっさり成立しました。
しばらくして、元友人と元夫が一緒に暮らし始めたと噂で聞きました。「略奪成功」とでも言いたげに、周囲に吹聴していたそうです。
けれど、その生活は長く続きませんでした。夫は金銭感覚が甘く、見栄を張る癖があり、問題が起きるたびに他人のせいにする人でした。長く一緒にいるのは難しいかもしれないと考えていた私は、すんなりと友人に夫を譲ったのでした。
やがて彼らの関係はぎくしゃくし、周囲にも不和が伝わるようになったと聞きました。きっと友人が幸せになれることはないでしょう。
今の私は、以前よりずっと静かで、穏やかな日々を過ごしています。結果的に、相手が選んだ生活の厳しさが伝わってきたことで、あのころのトラウマも少しずつ薄れていきました。もしまた恋愛をするチャンスがあったら、今後は誠実な人を選びたいと思っています。
◇ ◇ ◇
一見すると、「友人に夫を奪われた」「また同じ裏切りに遭った」と受け取られるかもしれません。けれど本当にそうだったのでしょうか。
誠実さを欠いた相手と無理に関係を続けるよりも、距離を置くことを選んだ――それは「負け」ではなく、自分を守るための前進だったのかもしれませんね。
【取材時期:2025年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。