家の中は夫の脱ぎ散らかした服やゴミで荒れ放題。あらかじめ決めていたはずの家事分担も「家事はお前の仕事だ。俺のほうが稼いでいるんだから、家事なんてやらせるな!」と言って、一切を放棄するようになりました。
私が3日間の出張から帰宅したとき、家の中はゴミと洗濯物の山。それを見て注意すると、夫は鼻で笑いながら「高卒がガタガタうるさい。離婚されたくなかったら黙って家事しろ」と言い放ちました。
夫の格付け
彼は私が勤める中小企業を「名前も知らないような零細」と決めつけ、私の年収を勝手に低く見積もって見下します。「自分のほうが稼ぎがいいのだから敬え」と主張する夫に我慢の限界を迎えた私は、ついに口を開きました。
「それならこの家で偉いのは私だね。家事してくれるんでしょ? ありがとう〜」「私ね、あなたより稼いでるから離婚で」
私のそのひと言に、夫は驚きを隠せない様子。実は、私の勤め先は規模こそ小さいものの、急成長を遂げているベンチャー企業。私はたくさん努力して管理職のリーダーポストに就いており、年収は万年平社員の夫を大きく上回っていたのです。
夫は「女のくせに出世なんて嘘だ」と取り乱しましたが、それは彼の思い込み。私は離婚届を突きつけ、最低限の荷物を持ってその日のうちに家を出ました。
夫の愚行
翌日、夫は信じられない行動に出ました。私の言葉が嘘だと証明するため、なんと私の会社に直接乗り込んできたのです。あいにく私は打ち合わせ中。受付で騒いでいた夫の対応をしたのは私の上司でした。
私が嘘を言っていると決めつけていた夫でしたが、上司の「奥様は弊社の重要な管理職です」という言葉を聞いてやっと信じたよう。しかしあろうことか夫は、「妻が仕事にのめり込んで家庭を疎かにしている。生活を正すために、彼女を役職から外して降格させてほしい」と、上司に直談判したというのです。
当然、私的な感情で会社が人事を左右するはずもなく、一蹴されたのは言うまでもありません。夫はなおも食い下がりましたが、この暴挙が、彼自身の首を絞めることになりました。実は、夫が「格下の中小企業」とバカにしていた私の勤め先は、夫の勤める大手企業にとって、代わりのきかない最重要パートナーだったのです。
私の会社の上司は、夫の社員証を見てそれに気付き、即座に夫の会社側の担当者に連絡を入れました。「御社の社員が弊社でトラブルを起こしており、業務に支障が出ている。迎えに来てくれないか?」と……。
夫は自分がバカにしていた相手が、実は自分の会社の業績を支えている存在だとは夢にも思っていなかったのです。
崩れたプライド
数日後、夫から「話し合いたい」としつこく連絡がありました。会うつもりはありませんでしたが、離婚届への署名を急がせるため、弁護士同席のもと対面することに……。
現れた夫は、かつての傲慢さが嘘のよう……。消え入るような声で「今回ばかりは俺が悪かった。もう学歴のことも言わないし、家事も分担する。だから離婚は考え直してくれ……」と言いました。
しかし、私への謝罪よりも先に「会社の上層部にまで話が回って、このままだと俺の居場所がなくなるんだ。頼む、会社に謝罪してくれないか」と本音が漏れた瞬間、私の中にあったわずかな情も完全に冷めました。
夫は離婚を拒み続けましたが、私が記録していた数々の暴言や、今回の職場への迷惑行為が証拠となり、無事に離婚が成立。夫は社内で厳しい立場に置かれた結果、望んでいた出世コースからも完全に外れたといいます。唯一の心の支えだった「大企業のエリート」という看板も、自らの傲慢さによって泥を塗る形となりました。
一方の私は、心身ともに充実した日々を送っています。次に結婚する機会があるのなら、収入や肩書きで夫婦に上下をつけず、対等に助け合い、思いやれる人がいいなと思っています。
◇ ◇ ◇
本来、夫婦とは年齢や収入に関係なく、ひとりの人間として尊重し合い、人生をともにする対等なパートナーとして支え合っていくもの。そこには、どちらが上でどちらが下かという「上下関係」は存在しません。
お互いに感謝を伝え合い、思いやりを持って接すること——そんな小さな積み重ねが、何年経っても揺るがない信頼関係を築くのかもしれませんね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。