私が不安を口にすると、夫は私を冷たい目で見て言いました。「職場のことには口を出すな!」それ以来、夫婦の会話は成り立たなくなったのです。
帰りが遅い日も増えました。本人は昇進のための接待だと言います。家にいる日も手には常にスマホ……。夫の視線は娘よりも画面を向いたまま、私の不安は増していったのです。
1枚のレシート
ある日、夫の服のポケットからホテルラウンジのレシートが出てきました。残業と言っていた時間帯です。夫の不倫を疑うようになった私は、調査会社に依頼しました。
調査結果にあったのは、会社の後輩と不倫しているという事実。我慢ならず、私は夫を問い詰めました。
最初は笑ってごまかしていた夫も証拠を示すと一転、言い訳も謝罪もなく「海外赴任には彼女といく。離婚届にサインして」とだけ言ったのです。
あまりにも自己中心的で、逆に私の気持ちは冷え切りました。離婚にはその場で了承し、私は淡々と条件を整理しました。
慰謝料、養育費、面会のルール。揉めるのが目に見えていたので、第三者を挟んで書面に残す準備を進めました。娘の生活を守るために、感情ではなく段取り優先で動きました。
出世が音を立てて崩れた日
離婚が成立したちょうどそのころ、社内で調査が入り、不正を働いていた専務やその取り巻きの解任が決まりました。もちろん夫の海外赴任も白紙です。
夫は海外赴任になるからと言って、現部署の仕事を蔑ろにしていたため、同時に降格も決まりました。「上に気に入られるのも実力」と考えていた夫は、実力が伴わないままここまできてしまったので、すぐには巻き返せないでしょう。
同時に後輩とも別れることになったそう。彼女は海外についていくことが目的でした。それが白紙になった以上、一緒にいる意味がなくなったのでしょう。
私はというと、夫と同じ・元いた会社に復職しました。離婚と同時に元同僚から声がかかり、復帰を決めました。そのため、元夫が今どうしているか、嫌でも私の耳に届くのです。
夫はそんな環境が気まずかったのか、早々に会社を辞めました。不倫相手だった後輩は、私に会うたびに気まずそうな顔をするものの、図々しくもまだ会社にいます。今の彼氏は海外赴任の候補者と聞きます。その執念には感心してしまいます。
夫の末路
退職した元夫ですが、転職がうまくいかなかったようで、一度だけ「会社に戻りたい」「お前から頼んでくれ」と言ってきたことがありました。
私の頭をよぎるのは元夫のひと言。「上に気に入られるのも実力」
実力もない、気に入ってくれる“上”もいない以上、元夫にはもう何もありません。実力も誠実さも伴わないまま築いた立場は、崩れるときもあっという間でした。
私は、丁重に断ってこの話を終わりにしました。
◇ ◇ ◇
誰かに気に入られることで得た立場は、状況が変われば簡単に失われてしまうこともあります。それに対して、自分の力で築いた立場やスキルは、時間がかかっても揺らぎにくい土台になるでしょう。自分の足で立てる力を大切にしたいと考えさせられますね。
【取材時期:2025年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。