地元でも名の知れた有名企業の幹部候補。誠実で高身長。そんな自慢の婚約者との結婚を控え、私の人生は順風満帆に見えていました。
すでに両家の顔合わせを済ませ、式場の仮予約と婚約指輪の購入も完了。新居の候補も絞り込み、招待状のリストアップを始めた時期のことです。
しかし、その輝きは、ある日突然届いた高校の同級生からのメッセージによって、少しずつ曇り始めました……。
かつての同級生からの不穏な連絡
同級生は、かつて私を「地味で華がない」と見下してきたため、距離を置いていました。彼女は昔から、何でも自分が一番でないと気が済まない性格で、学生時代も常に注目の中心にいたがっていました。そんな彼女からの連絡――それは相変わらずの傲慢さに満ちていました。
彼女はアパレルブランドの広報になったようで、SNSには業界人との華やかなパーティーや高級品な写真を並べ、「あんたたちとは住む世界が違う」と誇示してきました。
そして、私の婚約者が地元有名企業の社員であることを知ると、彼の勤務先や年収、住居の予定地を執拗に聞き出そうとしてきたのです。地味だった私がエリートの妻になることが、どうしても許せなかったのでしょう。
それからというもの彼女は私のSNSを監視し、彼とのデートスポットを特定しては「私も昨日そこに行った」とにおわせるメッセージを送ってくる――その異常な執着に、私は胸の奥がざらつくような違和感を覚えました。
同時に、私の婚約者の態度にも不可解な変化が現れ始めました。
結婚式の打ち合わせをドタキャンで繰り返すことが続き、「式にお金は出したくない」「金の無駄だ、式をやめよう」と冷淡な言葉を投げかけてくるようになったのです。
あんなに熱烈なプロポーズをしてくれた彼の、冷え切った視線。夜、暗いリビングで1人、既読にすらならないメッセージ画面を眺めていると、得体の知れない不安に襲われました。
サプライズに満ちた結婚披露パーティ
そんななか、例の同級生から「結婚することになった」と報告がありました。出会って間もない電撃婚だという彼女。新郎のことを聞くと、「有名な実業家」とだけ答え、名前を頑なに伏せました。
そして彼女は「新郎には当日まで秘密にしておきたいサプライズがあるの」と不敵に笑い、「私の結婚披露パーティーに来てくれるわよね? あんただけ特別よ」と執拗に誘ってきました。その言葉には、どこか意地悪な響きがありました。
一方で、婚約者との距離は開くばかり。週に1度のデートも仕事のトラブルを理由に拒まれ、私は自分の何がいけなかったのかと自問自答し、食事も喉を通らず、体重は1カ月で4キロも落ちました。
同級生の結婚披露パーティ当日――。
指定されたのは都内の高級ホテルの小宴会場でした。扉が開いた瞬間、私の視界は一瞬で白くなりました。そこに新郎として立っていたのは、地方出張で不在のはずの、私の婚約者だったからです。
私の姿を見つけ、勝ち誇ったように笑う同級生。一方で、私と目が合った瞬間、顔面を蒼白にしてガタガタと震えだした婚約者。
心臓が早鐘を打ち、膝の震えが止まらず、私はその場に崩れ落ちそうになりました。彼女は知っていたのです。私の婚約者が誰であるかを。彼には私を呼んだことを一切知らせず、彼を奪った姿を特等席で見せつけることで、私を徹底的に屈服させようとしたのです。
その事実を理解した瞬間からは、胃の奥からせり上がるような吐き気と、自分という存在が粉々に砕け散るような衝撃に、ただただ耐えるしかありませんでした。
その後のパーティーの記憶は、衝撃と悲しみで霞んでいました。私はただの「捨てられた惨めな女」として、そこに座っていることしかできませんでした。
しかし、お色直しの最中、わざわざ私の席までやってきた同級生が、シャンパングラスを片手に耳元でこう囁いたのです。
「ごめんねぇ。結局、彼が選んだのは私だったの♡」
「あんたは住む世界が違うもの。エリートの彼には地味すぎたのよ」
——ああ、そういうことだったのか。彼女は最初から知っていて、私を呼んだのです。「婚約者を奪われた惨めな女」として、自分の優越感に浸るためだけに、目の前に座らせるために。
悲しみは一瞬で冷め、代わりに滑稽なものを見るような冷ややかな感覚が私を包みました。私はゆっくりと立ち上がり、最高に優雅な微笑みを浮かべて、彼女にこう言い放ちました。
「あーあ、ご愁傷様!」
「は?」
「何よそれ、負け惜しみ?」と顔を真っ赤にする彼女。私はバッグから、ずっと持ち歩いていた興信所の報告書を取り出し、彼女の目の前に突きつけました。
「あなたが必死に『奪った』つもりのその男、地元企業の社員でもなければエリートでもないわよ。正体は借金まみれの派遣社員。ついでに言うと、前の女との間に子どももいるわ。名刺も経歴も、全部偽造」
「え……?」
「実は、彼の様子がおかしくて2週間前に興信所に調べてもらっていたの。昨日報告書が届いて、全てが繋がったわ。あなたが執拗に彼のことを聞いてきた時期と、彼が冷たくなった時期が完全に一致していたから。今日ここに来たのは、あなたと彼が繋がっているという確信があったから。弁護士も待機させてあるわ」
「そ、そんなの嘘よ! 彼は有名企業の……!」
「本当、ご愁傷様ね。返品は不可だから、一生彼と一緒に、借金取りに追われる生活を楽しんでね」
会場が静まり返る中、逃げ出そうとする新郎を、「今日中に決着をつけるから」とあらかじめ会場の外で待機させていた私の弁護士が呼び止めました。その場で、婚約破棄の損害賠償と慰謝料の請求を突きつけたのです。
逃げ場のない清算
その場で私は、両家の両親全員に電話をかけました。「今すぐ来てください。息子さん(娘さん)の一生に関わることです」と伝えると、全員が駆けつけてくれました。ホテルのロビーで事情を簡潔に説明し、そのまま会場へ案内したのです。
突然の呼び出しに驚き、会場になだれ込んできた両家の親たち。「出張」と嘘をついて別の女とパーティを開いている息子の姿を見た彼の両親は、あまりの衝撃に言葉を失い、その場で息子への絶縁を宣言しました。
また、娘がエリートと結婚したと信じ込み、パーティの費用を肩代わりしていた同級生の両親も、新郎の正体が借金まみれの詐欺師だと知り、怒りと羞恥で真っ青になっていました。
「入籍前だから慰謝料なんて関係ない!」と往生際悪く叫ぶ同級生に、私の弁護士が冷静に告げます。 「冗談はやめてください。すでに顔合わせも済ませ、式場まで予約していた強固な婚約関係を、あなた方が共謀して破壊した事実は消えません。婚約破棄の慰謝料と、不貞行為の損害賠償、お二人には連帯して支払う義務があります」
「連帯して支払う」――その言葉の重みに、借金まみれの男と、虚飾まみれの女は震え上がりました。結局、これ以上の醜聞と訴訟を恐れた同級生の両親が、実家の土地を担保に借金をして、慰謝料を一括で支払うことで決着がつきました。
その後、元婚約者は経歴詐称が原因で派遣先を解雇。同級生も、SNSで誇示していた「有名ブランド広報」という肩書きが真っ赤な嘘だったことが判明しました。実態は派遣社員で、高級品の写真は全てレンタルか借金で購入したもの。彼女もまた、虚飾にまみれた生活を送っていたのです。この事実が周囲に知れ渡り、SNSアカウントは削除され、居場所を失いました。
現在、私の生活には何の波風も立っていません。 あの日、地獄のようなショックを受けましたが、そのおかげで偽物の幸せを切り捨てることができました。
週末には静かに読書を楽しみ、丁寧に淹れたコーヒーを飲む。裏切りを知った時のあの震えも、今はもう、「価値のないものを手放せてよかった」という晴れやかな解放感に変わっています。
【取材時期:2025年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。