こんにちは! 助産師のREIKOです。30~40歳代の女性に一番多くみられる婦人科の病気って何かご存知ですか? それは「子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)」です。一度は聞いたことのある病名かもしれません。そこで今回は、子宮筋腫がある場合、妊娠、出産、産後はどうなるのか、私が働いていた病院を例にお話ししたいと思います。
子宮筋腫とは?
子宮筋腫の主な症状は、生理のときの出血が多くなる「過多月経」、生理の直前・開始とともに下腹痛や腰痛、おなかの張り感などが生じる「月経困難症」、そして「不妊」です。
治療は、症状や子宮筋腫の大きさや数、子宮筋腫がある場所、妊娠を希望しているかどうかなどを考慮しておこなわれます。
子宮筋腫がある中での妊娠経過は?
子宮筋腫は、エストロゲンの影響を受けるといわれています。エストロゲンは妊娠に欠かすことのできないホルモンの1つです。そのため、妊娠により子宮筋腫の大きさが変化する場合があります。また、子宮筋腫があることで、流・早産のリスクや赤ちゃんの成長を妨げてしまうこともあります。
切迫早産の症状が見られる場合、赤ちゃんの成長が芳しくない場合、ときどきある子宮筋腫が炎症を起こした場合などは、入院が必要になるケースも。基本は安静がメインですが、それぞれの症状に対する治療がおこなわれていました。
入院中は、ドプラーという機器を使っておなかの中の赤ちゃんの心音を確認するのですが、子宮筋腫が邪魔をして、なかなか心拍が見つけられなかったりすることも。そんなときは、ママに赤ちゃんが動いているか確認しつつ、「今日はどこにいるかなー」なんて言いながら探していましたよ。どうしてもわからない場合は、医師に超音波で確認してもらうこともありました。
子宮筋腫があるなかでのお産は?
子宮筋腫がある場合のお産は、赤ちゃんの成長具合だけでなく、子宮筋腫の大きさに変化がないかなど、注意深く経過をみて出産方法を検討していきます。
経腟分娩(赤ちゃんがママの産道を通って生まれてくるお産)では、陣痛が来る前に破水してしまったり、陣痛が弱くなったり、赤ちゃんがうまく降りてこられなかったりすることもあるので、ここでも注意が必要になります。
帝王切開の場合は、子宮筋腫があることで通常メスを入れる部分に胎盤がかかっているケースもあるので、事前に超音波で確認をしていました。おなかを開いているので、子宮筋腫の手術も一緒にできないの? と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら術後のリスクも考慮すると、答えは「No」です。
お産直後の出血は要注意!
子宮筋腫がある場合、妊娠・出産時、十分な経過観察が必要ですが、それ以上に注意が必要になるのはお産直後です。
お産後、子宮は元の大きさに戻ろうと収縮します。そのときに子宮の壁の血管が圧迫され、出血が抑えられます。しかし、子宮筋腫があると子宮の収縮が妨げられ、出血が続いてしまいます。これは、経腟分娩でも帝王切開でも同じです。
そのため、子宮収縮剤を多く使用したり、場合によっては、お産後に輸血が必要になるケースも。妊娠中、輸血が必要になるかもしれないケースは、あらかじめ自分の血液を保存しておいて、それを輸血する「自己血輸血」をすることもあります。
お産直後の出血をクリアしたあとは?
お産直後の出血をクリアしても、その後、子宮筋腫が炎症を起こしてしまうことも。そのため、お産後は子宮収縮と出血量、貧血や感染の兆候がないかなど、経過観察が必要になります。
子宮筋腫があるなかでの妊娠・出産は、さまざまなリスクがあります。そのため、次の子を希望しているケースでは、状況と時期を見て、子宮筋腫の手術をすすめていました。このような場合の手術は、子宮筋腫だけを取る「子宮筋腫核出術」がおこなわれます。施設によっては、開腹手術だけでなく、腹腔鏡下での手術も可能です。そして、子宮筋腫の手術後のお産は、基本的に帝王切開が選択されます。
子宮筋腫は、妊娠・出産が可能な時期にある女性に多くみられます。これから妊娠を考えている方、子宮筋腫があるけれど、現在妊娠中の方がいらっしゃると思います。いずれにせよ、ご自身の子宮筋腫の状態を見ながら、かかりつけ医に相談し、説明をよく聞いて対応していくことが一番安心だと思います。
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