壊れていく夫婦
不妊治療のため、私は定期的に病院へ通っていました。仕事を調整して通院し、薬を飲み、体調に気を遣いながらの日々。けれど、夫が通院についてくることはほとんどありませんでした。それどころか「また病院? そんなに通う必要あるの?」と言い放ったのです。その言葉には苛立ちが混ざり、私はその言葉に胸をギュッと締め付けられました。治療にかかる費用も、すべて私が負担。家計から出すことにすら、夫はいい顔をしなかったのです。
ある日、仕事と通院でくたくたになって帰宅した私に、夫は「はぁ……金と時間ばかりかかるな」と呟きました。私は胸の奥が静かに冷えていくのを感じました。食事を用意しても、感謝の言葉はなく、 代わりに返ってくるのは「何だよこの夕飯は! 安っぽいものばかり出しやがって! 何で俺、お前と結婚しちゃったんだろう! 完全に嫁ガチャ外したわ!」と一言。私は「申し訳ない」という気持ちから言い返すことができませんでした。
ある夜、ベッドの中で天井を見つめながら「私、何のためにこんなに頑張ってるんだろう」と思ったのです。そして「もう、無理かもしれない」と呟いてしまいました。不妊治療を始めてから変わってしまった夫……。そして、最近帰りが遅くなっていたこと、 服から甘い香りがするようになったことが、どうしても引っかかっていました。 胸の奥で、小さな違和感が確信に変わり始めていたのです。
崩れていく嘘
ある夜、仕事から帰ってきた夫の後ろに、見知らぬ女性が立っていたのです。突然の出来事に「……誰?」と私が固まっていると、夫は真剣な表情で「話がある。彼女も一緒に」と言うのです。私は嫌な予感が背中をなぞりました。
リビングに入るなり、夫は私を見て「浮気相手に子どもができた。離婚してくれ」と言い放ったのです。続けて「産めない女は用無しだ。お前は女として最悪だ」と吐き捨てたのです。頭が真っ白になる私に、夫はスマホを突き出し「ほら。妊娠したって」と言い、相手の女性とのやり取りを見せてきたのです。でも、なぜか胸の奥に、妙な違和感が残りました。 私は 「いつ妊娠が分かったの?」と女性に尋ねると、女性は一瞬言葉に詰まったあと 「え、えっと…最近です」と曖昧にごまかしたのです。その後、「病院は行きました?」「どうやって妊娠がわかったの?」「エコー写真は持ってきましたか?」と続けると、女性は目を泳がせるばかり。話を重ねるうちに、言葉の辻褄が合わなくなっていったのです。
やがて、夫が苛立ったように声を荒げました。 「じゃあ今から一緒に病院に行こう。はっきりさせよう」 その瞬間、女性の顔からさっと血の気が引きました。 重たい沈黙が流れたあと、彼女は視線を落とし「……ごめん。全部、嘘」と、かすれた声で呟いたのです。
私が選んだ結末
彼女の「……ごめん。全部、嘘」という言葉が落ちたあと、リビングには重たい沈黙だけが残りました。彼女は泣き顔のまま、震える声で「だって、子どもができたら結婚してくれるって……」とポツリ。その瞬間「ああ、この人たちは結局、自分の都合だけでで動いてるんだ」と虚しくなった私は「もう、終わりにしよう」と夫に告げました。
夫は「違うんだ! 俺も騙されてただけなんだ! お前との子どもがほしいんだ!」と……。ここでも子どもがほしいという自分の都合ばかり。私の心にはもう何も響きませんでした。 そして「戻らない」と決めた気持ちは変わりませんでした。
離婚後、部屋の静けさに押しつぶされそうな夜もありました。 それでも少しずつ、私は思えるようになったのです。 3年後、私は再婚し娘を授かり幸せに暮らしています。
◇ ◇ ◇
相手の都合に合わせて自分を責め続けるほど、心は静かに壊れていきます。どんなに近い存在でも、傷つける言葉が当たり前になった関係からは離れていい――自分を守れるのは、自分だけなのかもしれませんね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
100回くらい見たかな