A子は私の姿を見つけるや否や「目障りだ」と罵ってきて、後日わざわざ文句の電話をかけてきました。もう会うことはないと思い、受け流していたのですが……。
ある日、私と両親が3人で暮らしている実家に、何の連絡もなく突然、兄が結婚を決めた相手としてA子を連れてきたのです。私もA子もあまりの衝撃に、お互いに言葉を失いました。A子は、私が家業を継ぐ兄、つまり未来の社長の妹だと知り、「なんであんたが妹なのよ!」と逆上。
しかし、同じ両親から生まれた兄妹であることは揺るぎない事実。さすがに黙っていられませんでした。苦労してきた両親が、身勝手なA子に振り回されることになるかもしれないと思うと……。
実家から邪魔者を追い出したいA子
兄は昔から女性に甘く、A子の派手な容姿と「献身的な恋人」という演技にすっかり心酔していました。A子もまた、兄の見栄えのいい暮らしぶりを見て、「愛している」「この人しかいない」「絶対に離さない」と兄に強い執着を見せていました。そして2人は結婚したのです。
結婚後、A子はわが家での暮らしを強く希望し、「この邸宅にふさわしいのは私」「小姑のあんたは邪魔だから出てってよ」と、私を追い出そうとしてきました。兄もA子の言いなりで、私や両親の気持ちなどお構いなしに強引に引っ越してきたのです。
これ以上この家にいても家族の溝が深まるだけだと判断した私は、実家を出る決意を固めました。私が荷物をまとめていると、A子は勝ち誇ったように……。
「あんたと家族なんて反吐が出る」
「邪魔なのよ! 小姑が居座るのは迷惑だから出てって!」
A子は、出て行くと言っているのに、まだ私に執拗に暴言を浴びせてきます。
「私が出てったら困ると思うよ?」
そんなA子にあきれながらも、私は静かに告げました。
「は?」
一瞬、動揺したような反応を見せたA子でしたが、「負け惜しみは見苦しい」と鼻で笑われたので、私は真意を胸に秘めたまま家を出ました。
わが家の暮らしを支えていたのは
実は、わが家の家計は数年前に大きな転換期を迎えていました。祖父から受け継いだ父の会社は、経営難に陥り倒産。かつて自慢だった邸宅も借金の担保となり、現在は別のオーナーが所有しています。しかし、両親の強い希望もあり、オーナーの厚意で賃貸物件としてそのまま住まわせてもらっていたのでした。
当然、兄は「次期社長」でも「御曹司」でもありません。それどころか、兄は浪費癖がひどく、仕事も長続きしない問題児。肩書きに執着する兄は、破産後も周囲に「自分は次期社長だ」と見栄を張り続けていたのです。人と会うときは、いつも高価なスーツを着て出かけていました。きっと、「仕事帰りだ」などと言って、次期社長として忙しく働いているアピールでもしていたのでしょう。
もちろんA子も、兄に踊らされていたうちのひとり。しかし、この事実を知っても、A子は兄の「次期社長」という肩書きや、わが家の「立派な邸宅」ではなく、心から兄自身を愛しているそうなので、無職の兄のことも、愛の力で支えてくれるはずです。
私は、長年兄の身勝手に振り回されてきた両親を説得し、この機会に高額な家賃の邸宅から、身の丈に合ったマンションへ引っ越すことにしました。
真実を知ったA子
数週間後、A子から連絡が入りました。「この邸宅に住めないって、どういうことよ!? 彼は次期社長じゃないって何なの!? 仕事もしてないじゃない!」と。
私と両親が賃貸契約を解約したため、兄夫婦も退去することになりました。A子はようやく兄から真実を聞いたのでしょう。今まで邸宅の家賃を支払っていたのは私でした。それに、今回の引っ越しの件は兄も納得済み。私が相談したとき兄は「ふーん。好きにすれば? 俺はA子の家に住むから」と他人事。理由は結婚を機に寄生先を実家からA子に乗り換えたからです。今まで働いていない兄を養っていたのは、私や両親でした。
現在、行き場を失った兄はA子が借りたアパートに転がり込み、A子の稼ぎと貯金を頼りに生活しているそうです。私を邪魔者扱いし、兄を離さないと言っていたA子でしたが、今では兄を引き取ってほしいと泣きついてきます。
しかし、私と両親は3人で平和な生活を始めています。これ以上、厄介な兄とその妻であるA子に振り回されたくありません。A子には「兄をお願いします」とだけ伝えました。A子はその後も謝罪のメッセージを送ってきますが、それが反省ではなく、単なる「今の苦境から逃れたい一心」であることは明白。
A子は自分の虚栄心を満たすために他人を攻撃し、実体のない肩書きに踊らされた結果、自ら選んだ道で自らを苦しめることになったのです。これを機に、兄ときちんと向き合って、兄を更生させ、2人で誠実に生きていってほしいなと思います。
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自分を大きく見せようとする見栄や、他人を羨む気持ちが強すぎると、ときに現実を見失ってしまうことがあります。甘い言葉や華やかな肩書きの裏側にある真実を見極める力が必要なのかもしれませんね。表面的な条件に惑わされるのではなく、自分自身の力で人生を切り拓き、身の丈に合った幸せを大切にしていきたいですね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。