反抗期の刃
夕食中、ずっとスマホを触る娘。私は「食事中はスマホやめよう? せっかく一緒に食べてるんだから、少し話そうよ」と声のトーンも、言葉も選び声をかけました。しかし、返ってきたのは「うっさいなぁ〜! 母親ヅラすんなよ! 本当の母親でもないくせに! アンタと会話するより動画見てる方がよっぽど楽しいわ」と冷たい一言。
夫が箸を置き「母親じゃないだと? 10年もお前を育ててくれたんだぞ! そういう言い方だけはするな」とビシッと言ってくれたのです。娘はムッとした顔で「もういい。食欲失せる。ごちそうさま!」と言い残し、そのまま部屋に引きこもってしまいました。 テーブルには、ほとんど手つかずの料理がポツンと残っていました。それでも私は「反抗期だから仕方ないよね。どこの家でもあることだから」と言い聞かせていました。
日が経つにつれて、娘の言葉はどんどん鋭くなっていき「見れば見るほど地味ブスだよね〜! 本当の母親でもないくせに、母親ヅラしないでよ!」と、冗談では済まされない言葉が飛び出すようになったのです。強く出れば関係が壊れそうで、黙れば心が削られていく。 家の中にいても、ずっと緊張しているような感覚でした。 私は次第に、笑う回数が減っていきました。
反抗期の娘の気になる行動
さらに気になったのは、娘の行動でした。 最近、学校からまっすぐ帰らず、夜遅くなる日が増えていたのです。私が「今日はどこに行ってたの?」と聞くと、「別に」とそっけない一言。それ以上は、何も話そうとしませんでした。「反抗期」だと、頭ではそう理解しているのに、胸の奥ではずっとザワザワしていました。
ある日、洗濯物をたたんでいるとき、娘の制服のポケットからレシートが出てきました。レシートを見ると学校とは反対方向の駅名にあるコンビニのもので、夜遅い時間が記載されていました。私は「どこで何をしているの?」と、小さな不安が芽生えました。叱るべきか、問い詰めるべきか……。でも、強く出れば関係が壊れる気がして、私は何も言えませんでした。そんな中、私は娘の強気な言葉のわりに、目の奥がずっと不安そうなこと。そしてときどき、何かを言いかけて、飲み込むような仕草をすることに気づいたのです。私は「この子、ただ反抗してるだけじゃない……」と感じました。
ある夜、「ねえ、何か悩みがあるんじゃない? 私は、何があってもあなたの味方だよ」と思い切って声をかけました。娘は驚いたようにこちらを見て「……どうせ、パパと離婚したら、私とアンタって他人でしょ?」と言い放ったのです。私は「たとえ離婚しても、あなたは私の娘だよ。私は、あなたを手放さない」と答えました。娘は何も言わず、ただ俯いたままでした。その日を境に、私に向ける言葉のトゲが少しだけ減った気がしました。 ただ――安心はできませんでした。娘の帰宅時間は相変わらず遅く、スマホを手放さない。そして何より、夫の様子もどこか落ち着かなくなっていったのです。
私が選んだ結末
数日後、その日は珍しく娘がリビングで夫の帰りを待っていました。夫が帰宅すると、娘は夫をまっすぐ見て「ねえ、パパ。会社の近くで、一緒にいる女の人……誰?」と言い放ったのです。夫は「な、何の話だよ」と明らかに動揺していました。すると娘は黙ってスマホを差し出しました。その画面には、夫と女性と手を繋ぎ並んで歩く写真が……。
娘は「何回も見たよ? パパ、どういうことか説明して!」と夫を問い詰めました。すると夫は言い訳を探すように「ち、違う。これは……」とアタフタ。そのとき、娘が静かに「パパの浮気、今回が初めてじゃないよ。前のママが出ていったのも、パパの浮気が原因だったって……聞いたことある?」と私に問いかけるのです。夫が小さく「やめろ」とつぶやきました。すると娘は私の目を見て「お母さんが優しいのも、わかってた。だから、私が悪役になれば、お母さんがパパと別れるときに、私のことなんて気にせず決断できると思って……。私のせいで、お母さんがずっとこの家に縛られるのは嫌だったの!」と泣き出したのです。私は黙って娘を抱きしめ「あなたは、私の娘だよ。絶対に離れたりしないから」と伝えました。
その横で、夫は顔面蒼白のまま立ち尽くし「ちょっと待ってくれ……話せばわかる……」 と、情けない声で繰り返していました。
夫とは別れるかもしれません。でも私は、娘を手放したりしません。たった10年かもしれないけれど、私はこの子の母親です。これから先も、何があっても、娘の味方でい続けます。
◇ ◇ ◇
血のつながりがなくても、積み重ねた時間と覚悟があれば、親子にはなれる。 そして、子どもの反抗の裏には、言葉にできない不安や優しさが隠れていることもあることも。しっかりと心を通わせることが本当の家族の第一歩になるのでしょう。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。