出張先で鳴り止まない義母からの鬼電…
ホテルの部屋に戻りスマホを確認すると、異様な着信履歴に思わず息をのみました。義母からの鬼電が十数件。嫌な予感がして折り返すと、耳に突き刺さるような怒鳴り声が返ってきます。
「あなた、どういうつもり!? もう5日もよ! 2歳の娘を預けっぱなしって非常識!」私は言葉を失いました。預けっぱなし? そんな話は聞いていない。義母は続けます。「娘に連絡してもつながらないし! ほんと、どうなってるの!?」
頭が真っ白になりました。妻は娘のそばにいるものだと思っていました。慌てて妻に電話をかけても出ない。LINEも既読にならない。義母は「孫は元気だけど、夜泣きも増えてきて……」と、疲労困憊のようです。
私は義母に「申し訳ありません。いま出張中なので、今日はお願いできますか。必ず明日迎えに行きます」と伝え、すぐに上司へ電話しました。事情を説明すると理解してくれ、一度帰宅することに。妻はどこにいるのか……? 私はほとんど眠れない夜を過ごしました。
娘を迎えに義母宅へ…自宅に戻ると
翌朝、始発に近い便で義母の家へ向かいました。玄関を開けると、娘は最初こそきょとんとしていましたが、私の顔を見た瞬間、わっと泣き出して抱きついてきました。小さな体が必死にしがみついてくる感覚に、胸が締めつけられます。義母は疲れ切った表情で「遅いわよ……」とつぶやき、私は深く頭を下げました。
「本当に申し訳ありません。僕は何も聞かされていませんでした」義母は怒りを抑えきれない様子でしたが、私自身も、なぜこんなことになっているのかわからない状態でした。
私は娘の荷物をまとめ、義母に礼を言って自宅へ連れて帰りました。家の中は妙に静かで、生活感が薄い。娘に簡単な食事をさせると、しっかり眠れていなかったのか、そのまま寝てしまいました。
娘が眠りについたのを確認してから、私は“調べる”という行動に移りました。リビングに置いてある家族共有のパソコンを開きます。ここには、買い物履歴、予約サイトのログイン、クラウド写真の同期――ほとんどすべてが紐づいています。メールをさかのぼっていくと……。
パソコンに残っていた“妻の痕跡”
そこに並んでいたのは、妻名義のホテル予約確認メールでした。日付は、娘を義母に預けた日から始まっています。しかも“2名”の記載。さらにレストランの予約、レンタカー、ギフトショップの購入履歴まで。
私は息を止めるようにして、別のフォルダを開きました。同期されている写真。そこには、見知らぬ男性に寄り添う妻の姿が写っていました。頭が真っ白になりながらも、今必要なのは“感情”ではなく“証拠”と“娘を守る準備”だと自分に言い聞かせます。私は淡々とスクリーンショットを撮り、残せるものはすべて保存しました。
そのとき、玄関の鍵が回る音がして、妻が帰ってきました。香水のにおい、スーツケース。私と娘がいるはずのない家で、妻は一瞬固まりました。 「……え? なんで今日いるの?」
私は立ち上がり、静かに言いました。「お義母さんから鬼電が来た。娘を5日も預けっぱなしにしてたんだって?」妻は目を泳がせ、「あの……それは」と口ごもります。私がテーブルに印刷したホテルの予約メールを置くと、妻の顔色は一気に変わりました。
今すぐ“元通り”を選べなかったワケ
妻は泣きながら、「疲れてた」「自由がほしかった」と言い訳を重ねました。私は静かに返しました。「自由がほしいなら、順番がある。嘘をついて子どもを押し付けていい理由にはならない」
翌日、私は義母に来てもらい、事実を整理して説明しました。義母は何度も「ごめんね」と頭を下げましたが、私は首を横に振りました。「お義母さんを責めたいわけじゃないんです」私が本当に線を引きたかった相手は、義母ではなく妻でした。
妻は泣きながら「もうしない」「やり直したい」と繰り返しました。けれど私は、その言葉をすぐには信じられませんでした。今回の問題は“不倫”だけではない。娘を預ける相手に嘘をつき、結果として2歳の子どもを不安定な状況に置いたこと――そこが一番大きかったのです。
だから私は、「気持ちを整理したい。しばらく別居しよう。◯◯(妻の名前)は実家で、僕と娘はこのマンションで暮らす。保育園の送迎も、生活のリズムも崩したくない」と淡々と伝えました。もちろん、娘が母親を求めるならその気持ちは守りたい。けれど、すぐに“元通り”にはできませんでした。
娘には「ママにもちゃんと会えるよ」と、嘘のない言葉で伝えました。夫婦がどうなるかは、まだわかりません。それでも、娘の小さな手を握りながら、私は決めています。——娘が安心して眠れる毎日を、何よりも優先する。それが、今の私にできることだと。
◇ ◇ ◇
夫婦としてどう向き合っていくのかはこれからですが、子どもの精神的な安定も鑑みながら、少しずつ笑顔の時間が増えていくことを願いたいですね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。