積み重なった違和感が怒りに変わったのは、先日の帰省での出来事でした。義母は料理を用意して待っていると言っていたものの、食卓に私の席はありませんでした。
義母から「あなたはキッチンで済ませてね」と告げられたとき、私は耳を疑いました。しかし、夫は何の疑問も持たず、当然のようにリビングの輪に加わっています。私はひとりで、冷えた料理をキッチンの隅で口に押し込みました。
嫁は尽くすもの
帰宅後、私は夫に詰め寄りました。「どうして私だけ除け者にするの? 一緒に食事もできないなら、呼ばないでほしい」
しかし、夫の反応は冷ややかなものでした。「うちの両親は古い人間なんだよ。こんなの日本の伝統だろ? 嫁は家族のために尽くすものだ!」「俺は跡取りで男なんだから、テーブルに座るのは当然だろ」「そんなことでグチグチうるさいよ」
私は、夫に言葉で説得するのは無理だと悟りました。そこで、次の私の実家への帰省を利用して、ある「計画」を実行することにしました。事前に両親には事情を話し、協力を取り付けておいたのです。
夫に突きつけた「同じ景色」
当日、私の実家に到着してすぐ、夕食の時間になりました。父と母、そして私がリビングの食卓を囲む中、私は夫に告げたのです。
「あなたは廊下に用意した席で食べてね」
夫は最初、冗談だと思ったようですが、廊下に置かれた小さな1人用テーブルを見て顔色を変えました。「ふざけるな! 俺は招待された客だぞ? なんで廊下なんだ!」
憤慨する夫に、母は言いました。「その『どうして自分だけ』という惨めな気持ち、娘は何度も、あなたの家で味わっているのよ」
夫は「嫁は家族に尽くすものだから」「昔はそれが当たり前のしきたりだったから」と必死に弁解しましたが、母は冷静に一喝しました。
「それなら、あなたの言う『しきたり』を徹底しましょうか。あなたは結納もしていないし、共働きで娘の収入に頼っているところがあるよね? 自分に都合のいいときだけ『伝統』を持ち出して娘に押し付けるのは、筋が通らないんじゃない?」
「……すみませんでした。俺、自分が同じことをされないと、妻がどれほどつらい思いをしていたか分かっていませんでした」夫は声を絞り出すように言いました。
ふたりで歩む道
実家からの帰り道、夫は何度も謝罪を口にしました。「これからは何があっても味方でいる」という誓い通り、後日、義両親へもはっきり意見してくれたのです。「嫁だからとすべてを押し付けるのはやめてほしい」と。
しかし義両親の価値観を変えることは難しく、結果として私と義実家の間には少し距離が生まれましたが、私はそれでいいと思っています。何よりも、夫が「自分の当たり前は、誰かにとっての当たり前ではない」と理解してくれたことが、私にとっては大きな救いでした。
現在は、不要な帰省は控えています。もしまた義実家へ行く機会があっても、もう私はひとりで台所に立つことはありません。隣には、一緒に戦ってくれる夫がいるからです。
◇ ◇ ◇
時代と共に、家族の形も「当たり前」の基準も変わります。一方的に伝統や常識を押し付けると、その関係性は苦しいだけのものになってしまうでしょう。
お互いが心地よくいられる「今の自分たちにとっての家族のあり方」を見つけられるといいですね。
【取材時期:2026年1月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
また自分の実家に帰ったら、元に戻りそう。
そうなったら、緑の紙を準備だね。