ユニセフ『レポートカード16』とは?
ユニセフの『レポートカード16』は、先進国(OECDおよびEU加盟国・38カ国)の子どもたちが「どれくらい幸せに生きているか」を多面的に可視化した国際調査です。
このレポートの最大の特徴は、大人が決めた指標だけで測るのではなく、「子ども自身の実感」を重視している点にあります。具体的には、以下の3つの柱から各国の状況を評価しています。
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⚫︎身体的健康:死亡率や肥満度など、医療や生活習慣によって健やかな体が維持されているかを客観的なデータで評価します。
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⚫︎精神的幸福度:「今の生活に満足しているか」というアンケート結果と、統計データとしての「自殺率」の2点から、子どもの内面的な幸福を測ります。
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⚫︎スキル:読み書き・数学などの学力的な能力に加え、「すぐに友だちができるか」といった対人関係における社会的な適応能力も評価の対象です。
身体的健康は先進国1位
この調査によると、日本は身体的健康の分野で先進国1位という評価を受けています。子どもの死亡率は非常に低く、過体重や肥満の割合も多くありません。医療へのつながりやすさや安全な生活環境、規則正しい生活習慣などが、国際的に見ても高く評価されました。
「病気になりにくい」「命のリスクが低い」という点では、日本の子どもたちはしっかり守られていると言えるでしょう。
一方で、精神的幸福度は低い
しかし、日本が大きく順位を落としている分野があります。それが、精神的幸福度です。
ユニセフは精神的幸福度を
・子ども自身が感じている生活満足度
・子どもの自殺率
という2つの指標で評価しています。
主観的な「生活満足度」だけでなく、幸福度の欠如を示す最も客観的かつ深刻な統計として「自殺率」が指標に組み込まれているのです。
日本では、15歳の子どもにおいて「生活に満足している」と答えた割合が低く、さらに、15〜19歳の子どもの自殺率が高い水準にあります。その結果、日本の精神的幸福度は、38か国中37位という低い位置にとどまりました。
身体は健康でも「心が満たされているとは言いにくい」——これが、日本の子どもたちの現状であることがわかります。
なぜギャップが生まれるのか? 大人は何ができるのか?
ではなぜこのようなギャップが生まれてしまうのでしょう。育児の専門家である大阪教育大学教育学部教授・小崎恭弘先生に、意見をうかがいました。
世界的に見てこの日本のデータは、とても特徴的であると言えます。簡単に言ってしまうと両極端であり、とてもバランスの悪いものです。身体的健康は高いのに精神的幸福が低いという現状は、いびつさを感じます。
このデータをもう少し丁寧に見ていきましょう。スコアの高い身体的な健康は、これは高評価として受け止めておきましょう。これらの数値は、社会システムの整備の中で捉えられるものであり、現代の日本社会における医療や公衆衛生などがとても充実した環境にいることの表れです。素晴らしいことだと思います。
一方でスコアの低い精神的幸福は、詳細に見ると特に「15歳の子どもで生活に満足している割合」が最下位のトルコに次いで低く、この数値が全体の低下を招いています。
これは子どもたち一人ひとりの心の問題であると言えます。これらを俯瞰して見ると、社会の仕組みは整っているのに、個々の子どもの満足感が追いついていない。そのアンバランスさが、数字に表れているように思います。
日本人の特徴として「和をもって尊ぶ」、つまり「調和を何より大切にする」という考え方が挙げられます。これは言い換えれば、個人のわがままよりも「グループ全体のまとまり」を優先するということです。これらが社会システムの安定に貢献しているのでしょう。
しかしこれらは時として「同調圧力」として、個人より集団を優先する力となります。その中で個人の想いや価値観が、抑圧されたり時には無視されたりすることがあります。
まさに今回のデータのこのアンバランス感は、このような日本人的な部分が現れているように感じました。
子ども達の幸福度を上げるためには、まずは大人や保護者、学校や社会が
子どもの思いに耳を傾けることから始めると良いでしょう。安心して話ができる関係が、その後の満足感につながると思います。
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日本の子どもたちは「幸せそう」に見えるでしょう。けれど、その裏側に大人には気付けない現実があるのかもしれません。今後、このギャップが少しでも縮まっているかどうかは、私たち大人の関わりにかかっています。
ベビーカレンダーもまた、子どもや保護者の声をすくい上げ、現実を伝え、考えるきっかけを届けることで、その役割の一端を担っていきたいと考えています。