そんな夫ですが、結婚する前はそんなそぶりを見せることはありませんでした。
しかし夫のモラハラは日常の些細なことから始まり、今では「実家の母さんの部屋の電球を替えてこい」と、私の仕事の都合も無視して命令を下すのは日常茶飯事。断ろうものなら「使えない嫁だ」「嫁姑問題が起きないのは俺が間に入っているおかげだ」と恩着せがましい態度を取ります。
夫にとって妻は「都合のいい奉仕者」でしかなかったのでしょう。そんな関係性に疲れ切っていました。
結婚式を優先するワケ
そんなある日、入院中だった私の祖父の容体が悪化しました。ちょうど翌週には、夫の従兄弟の結婚式が控えていたものの、私は「祖父のもしものときには駆けつけたい。だから結婚式に出られないかもしれない」と事前に伝えておいたのです。
しかし、夫から返ってきたのは耳を疑うような言葉でした。「結婚式は前から決まってたんだ。夫側の親戚の祝いの席なのに穴を空けるなんてあり得ない」
祖父が私たちの挙式費用を援助してくれた恩義を伝えても「勝手に出した金だろ」と吐き捨てるように言われ、私はがく然としました。
夫は、親族が集まる場に妻がいないことで、自分の面目が潰れることしか考えていないのです。
祖父の葬儀の最中に…
夫の従兄弟の結婚式当日。悲しいことに少し前に祖父は息を引き取り、私は葬儀に参列していました。
すると、挙式が始まる直前に夫から執拗な着信が入りました。電話越しに彼は、「いつまでそっちにいるつもりだ! 死んだ人間より、親戚一同が集まる席で顔を立てるのが嫁の仕事だろ。最短で来い!」と激昂。
続けて義母からも、『親戚中の笑いものよ! 今すぐ来なさい』という信じがたいメッセージが届きました。
怒りと悲しみを超え、私はある決意を固めます。そして私は喪服姿のまま、式場へと向かったのです。
お望み通り駆けつけた結果
披露宴の会場はとあるレストラン。その日は貸切で結婚パーティーをしていました。
華やかな披露宴会場に、黒い喪服姿の私が現れると、場内は一瞬で静まり返りました。ざわつく視線を突き破るように夫の元へ歩み寄り、私は1通の封筒を叩きつけます。それは、署名済みの離婚届でした。
「お望み通り来ました。葬儀の最中に何度も呼び出してくださったんですものね」
私の言葉に、夫と義母は顔を真っ赤にし「なんて格好をしてるんだ!」「俺の顔に泥を塗りやがって!」と人目をはばからず叫びました。
しかし、事情を察した親戚の方々は、私ではなく、葬儀中の嫁を非常識な言葉で呼びつけた夫たちを軽蔑の目で見つめていました。
夫の末路
その後、弁護士を介して離婚が成立。結婚式の一件以来、夫と義母は親戚からも距離を置かれるようになったのだとか……。
さらにその少し後、夫を待ち受けていたのは「因果応報」とも言える過酷な現実でした。義母が脳梗塞で倒れ、重い介護が必要になったのです。慣れない家事と介護に追い詰められた元夫から「頼む、戻ってきてくれ」と連日泣きつかれましたが、私の祖父を切り捨てた男への情など残っているわけがありません。
私はすべての連絡をブロックし、今度こそ彼らとの関係を断ち切ったのでした。
◇ ◇ ◇
「嫁いだのだから夫側を優先するのが当たり前」という考えに縛られ、自分自身の家族を後回しにされてしまうのは、あまりにも悲しいことですね。結婚は新しい家族を作ることであり、どちらか一方の所有物になることではありません。
本来、夫婦はお互いのルーツである双方の家族を、同じように大切に思いやるべき関係です。自分の親だけを優先し、相手の大切な家族を「他人」と切り捨てるような不誠実な態度は、結果として最も身近なパートナーからの信頼を失うことにつながります。
どちらの家族も同じように大切にしたいという気持ちを、互いに尊重し合えること。そんな当たり前で、けれど何より重要な価値観を共有できることが、末永く支え合える夫婦でいるための第一歩なのかもしれません。
【取材時期:2026年2月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。