そんな義母の様子を見て、夫が言いました。
「母さん、一人でいるのはきついと思う。しばらくうちで一緒に暮らさないか」
私は少し驚きましたが、義母のことが心配だったこともあり、夫の提案に同意しました。こうして、義母が元気を取り戻すまでという前提で、同居が始まりました。
元気のない義母に
同居が始まってからも、義母はあまり変わりませんでした。
「何か食べたいものある?」と聞いても、「別にないわ……」と小さく首を振るだけ。
私は義母の好きだった料理を思い出しながら作りましたが、ほとんど手をつけてもらえませんでした。
外に出るきっかけになればと、夫と相談してお小遣いも渡すことにしました。
「気分転換にでも使ってよ。お友だちとおいしいもの食べたりとかさ」
夫がそう言ってお小遣いを渡すと、義母は静かに受け取りましたが、その後も義母の様子は大きく変わらないままで、心配が続きました。
聞こえてしまった会話
そんなある日、私は仕事を切り上げ、いつもより早く帰宅しました。
家に入ると、リビングから義母の声が聞こえてきました。どうやら友人が遊びに来ている様子。
「お友だちと会う元気が出たんだ……よかった」そう思っていたとき、何気なく耳に入ってきた会話に、私は思わず足を止めました。
「私、昨日もわざと嫁の料理を食べなかったのよ!」
「またお小遣い増えるかもって思って~」
楽しそうな笑い声が続きます。お友だちと「まあ、嫁教育みたいなものよね~」とゲラゲラ笑うその会話を、私はスマホで録音しました。
義父を亡くして落ち込んでいると思い、少しでも支えになればと接してきた日々が無駄だったことを知り、悲しさでいっぱいになりました。
録音した会話を夫に聞かせると
その日の夜、私は夫に録音を聞かせました。最初は信じられない様子だった夫も、義母の声を聞くうちに、次第に表情が曇り「……これはちょっとひどいな」と小さくつぶやきました。
その週末、夫は義母に声をかけました。
「母さん、これ聞いてほしい」
そう言って、先日録音した会話を再生しました。
義母の顔色が変わり、しばらく黙り込んだあと、慌てたように口を開きました。
「ち、違うのよ……あれは冗談で……」
「ずっと落ち込んでばかりじゃ心配かけると思って、明るく振る舞ってただけで……」
さらに言葉を重ねます。
「あなたたちに甘えてたのは事実だけど、そんなつもりじゃなかったの」
しかし夫は首を振りました。
「冗談で言う内容じゃないよ」
部屋の空気が重く沈みました。
私たちの決断
その後、私たちは何度か話し合い、最終的に「一度距離を置こう」という結論に至りました。義母には元の家に戻ってもらい、同居を解消することにしたのです。
義母が元気を取り戻すきっかけになればと思って始めた同居でしたが、信頼が揺らいでしまった以上、同じように暮らし続けることは難しいと感じました。
家族だからこそ、相手を思いやる気持ちがなければ関係は成り立たないのだと感じました。関係を続けることよりも、健全な距離を保つことが必要な場合もあるのだと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。