そこそこ良いところのマンションに住んでいたこともあって、夫は友人に住まいを自慢したい様子でした。
私や娘が寝ていてもお構いなし。お酒やおつまみの準備をさせられ、後片付けまで押しつけられる生活に、私は心身ともに疲れ切っていました。
積み重なっていった違和感
そんなある金曜日の夜――。
夫は友人たちと朝方まで騒いだあと、そのまま外出して帰宅しませんでした。
以前から、休日になると1人で出かけて深夜まで帰らないことがたびたびあった夫。不思議なことに、そういう日は友人を連れてくることがありません。
私は次第に「もしかして不倫ではないか」と疑うように。ただ、たしかな証拠はなかったため、問い詰めることもできません。
ところが、その疑いは突然確信へと変わったのです。
夫の衝撃の告白
ある休日の午後のこと。夫は見知らぬ女性を連れて帰宅しました。私と娘が戸惑っていると、夫は平然とこう言ったのです。
「彼女と再婚する」
「だから離婚してほしい」
突然の告白に頭が真っ白になりました。さらに夫は続けます。
「彼女は俺の子どもを妊娠しているんだ」
「この家で一緒に暮らすから、お前は娘を連れて出ていってくれ」
あまりにも身勝手な言い分でした。怒りや悲しみより先に、長年積み重なっていた不満が一気にあふれ出したのを覚えています。
私が言葉を発しようとした瞬間、娘が突然立ち上がりました。
「ママ、荷物まとめよう!」
娘は自分のリュックを抱えながら、明るい声でそう言いました。
「もう、夜中にうるさくされないってことでしょ? むしろ、やったー!ってカンジ」
その言葉を聞いた瞬間、私は思わず笑ってしまいました。娘もずっと我慢していたのです。
私たちは最低限の荷物を持ち、その日のうちに実家へ向かいました。
夫も浮気相手の女性も、私たちが抵抗したり泣き崩れたりするとでも思っていたのでしょう。予想外の反応だったようで、ただ呆然と見送るだけでした。
2人での新生活
実家でしばらく過ごして落ち着いたあと、私は新居探しを始めました。ようやく見つけた新しい住まいへ引っ越した日、娘とささやかなお祝いをしていると、夫から電話がかかってきました。
開口一番、激しく怒鳴る夫。
「どうして家の中に何もないんだ! それに退去期限ってどういうことだよ!」
当然です。夫と暮らしていた家の家具や家電の大半は、私が独身時代から使っていたものでした。私は自分の所有物を新居へ運んだだけです。
さらに、夫が自分の城のように振る舞っていた賃貸マンションも、実際の契約者は私。私はすでに管理会社へ解約の申し入れをしていました。
家を出ていく際に、解約通知書の写しとともに、退去期限が記された書面をテーブルに置いておきました。
改めて口頭でも事実を伝えると、言葉を失った夫。
さらに、「期限までに退去しない場合は、不法占拠になってしまうからね」と厳しく伝えました。最終的には、夫は渋々ながら荷物をまとめたようで、期限より前にマンションから出ていったのでした。
夫の謝罪
退去立ち会いの日――。
娘とマンションへ向かうと、夫が入り口で待っていました。そして私たちの姿を見るなり頭を下げたのです。
「本当に悪かった。やり直してほしい」
さらに夫は、不倫相手とは別れたと話しました。話を聞くと、その女性は、夫が経済的に余裕がある男性だと思い込んでいたようです。ところが、実際にはマンションも妻名義であり、収入も想像していたほどではなかったことがわかり、関係はあっさり終わったとのことでした。
そして、女性が妊娠しているという話も嘘でした。私たちを追い出すために夫がついた身勝手な作り話だったのです。
私はあきれて言葉も出ませんでした。代わりに娘が、夫をまっすぐ見つめてこう言いました。
「もうパパとは一緒に暮らしたくない」
「ママと2人のほうがいい」
その言葉が決定打になったのでしょう。夫はうつむいたまま、その場を去っていきました。
その後、私たちは正式に離婚。浮気相手の女性についても、弁護士へ相談しながら対応を進め、慰謝料を支払ってもらうかたちで決着しました。
今では娘との生活も落ち着きました。娘とゆっくり食事をしたり、休日に出かけたりする時間が増え、毎日がとても穏やかです。
あのとき家を出る決断をして、本当によかったと思っています。
◇ ◇ ◇
夫は長年にわたり家事や育児を妻任せにするだけでなく、自宅での飲み会や不誠実な行動を繰り返していました。その積み重ねが家族との信頼関係を壊し、最終的には誰からも見放される結果につながったのでしょう。
夫婦関係は日々の思いやりや信頼の積み重ねで成り立つものです。相手の負担や気持ちを軽視し続ければ、たとえ家族であっても関係は維持できません。
筆者が娘とともに新しい人生を歩み始めたように、自分らしく穏やかに暮らせる環境を選ぶことも大切なのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。