そんなある週末、夫が久しぶりに帰宅する予定になっていました。娘と一緒にカレーを作り、夫の帰りを楽しみに待っていたのですが――?
繰り返される夫のドタキャン
夕方になり、夫から突然メッセージが届きました。
「ごめん! 仕事でトラブルがあって、帰れなくなった」
詳しい事情を聞こうと電話をかけましたが、夫は出ません。
実は、こうして直前になって帰宅をキャンセルされるのは初めてではありませんでした。
最初のうちは「仕事なら仕方ない」と思っていましたが、以前に比べて電話やメッセージの回数も減っていました。そのころから、私は夫の様子にどこか違和感を覚えるようになっていたのです。
楽しみにしていた娘も、夫が帰ってこないと知ってしょんぼり……。
せっかくの週末をこのまま暗い気持ちで過ごしたくないと思い、私は近所に住む母へ連絡し、娘と一緒に実家へ泊まりに行くことにしました。
ベビーカーを押していたのは…まさかの夫!?
翌日は天気がよかったため、母と娘と一緒に、母が以前から娘を連れて行きたいと話していた大きな公園へ車で出かけることにしました。その公園は県境付近にあり、自宅や実家からも車で行けるうえ、夫の単身赴任先からもそれほど遠くない場所です。
車を駐車場に止め、公園内を歩いていると、少し先にベビーカーを押して歩く男女が見えました。何気なくその男性を見た瞬間、私は思わず足を止めました。
夫によく似ていたのです。
見間違いかもしれないと思い、もう一度確認しました。しかし、何度見ても間違いありません。
そこにいたのは、仕事のトラブルで帰れないはずの夫でした。
しかも、夫の隣には私の知らない女性がいました。ベビーカーにはまだ小さな赤ちゃんが乗っており、夫は時折赤ちゃんをのぞき込みながら、楽しそうに笑っていました。
あまりにも自然な様子で、傍目には家族にしか見えませんでした。
「どういうこと……?」
頭が真っ白になりましたが、その場で夫に声をかける勇気はありませんでした。母も状況を察したようで、私たちは少し距離を取りながら夫たちの後を追いました。
すると夫たちは買い物を済ませたあと、近くのアパートへ入っていったのです。そこで私は、母に娘を連れて先に帰ってもらいました。娘の前で夫と言い合いになることだけは避けたかったからです。
夫たちが部屋に入っていったあと、私は何度か夫に電話をかけましたが、出ませんでした。
どうしても真相を確かめたかった私は、アパートの前で夫を待つことに。しばらくすると、玄関のドアが開き、夫が出てきました。私の姿を見た瞬間、夫は表情を凍りつかせました。
妻の決意を固めた夫の一言
その後、夫と女性に事情を聞いたことで、これまでの経緯がわかりました。
夫は単身赴任先で女性と知り合い、私や娘の存在を隠したまま交際を始めたそう。女性は幼い子どもを育てるシングルマザーで、夫は次第にその親子の生活に入り込むようになっていました。夫が休日に私たちのもとへ帰ってこなかったのも、その女性と過ごしていたためです。
一方、女性は夫が既婚者だとは知らなかったようです。私が「私はこの人の妻です。私たちにも子どもがいます」と伝えると、女性は言葉を失っていました。夫は私だけでなく、相手の女性にも大きな嘘をついていたのです。
その後、夫からは何度も謝罪されました。
「本当にすまない。家庭を手放すつもりはなかった」
しかし、その言葉を聞いても気持ちは戻りませんでした。かえって、私の気持ちは冷めきってしまいました。夫が帰ってくる日を楽しみにしていた娘が、突然のキャンセルに何度も落ち込んでいた姿を思い出したからです。
仕事だと思っていたからこそ、娘に「パパも頑張っているから仕方ないよ」と言い聞かせていた私。それがすべて嘘だったと知った今、夫を再び信頼することはできないと思いました。
私は離婚を決意し、その後は必要な話し合いを進めました。相手の女性も夫に騙されていたと知り、関係を終わらせたそうです。義両親にも事情を伝えたところ、夫の行動にひどく失望していました。
離婚後、私は娘と実家で暮らすことになりました。両親に支えてもらいながら仕事を続け、娘と過ごす時間も少しずつ穏やかなものになりつつあります。
夫を公園で見かけたあの日は、目の前の光景が信じられず、これからどうすればいいのかさえわかりませんでした。それでも、娘をこれ以上振り回したくない、そして悲しませたくないという思いだけは揺らぎませんでした。
あのとき自分の目で事実を確かめ、夫との関係に区切りをつけたからこそ、私たちは新しい生活へ進めたのだと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。