父の見舞いに同行した夫
当時、父は末期がんを患い、残された時間を穏やかに過ごすためにホスピスに入院していました。私は限られた時間を大切にしたくて、毎週のようにお見舞いに行っていました。
夫にも一緒に来てほしい気持ちはありましたが、夫は「俺は忙しい」と言い、あまり前向きではありませんでした。私は、夫が乗り気でないなら無理に来なくてもよいと伝えました。
それでもある日、夫が父の見舞いに同行することになりました。見舞いの帰りに、そのまま私の車を使いたかったようです。ただ、道中から夫は不機嫌そうで、私は気をつかいながら病院へ向かいました。
夫のひと言に凍りついた心
病院に着いてからも、夫のいら立ちは伝わってきました。私は、無理に病院の中まで入らなくてもよいと言いましたが、空調が効いていたためか、夫は結局中まで入ってきました。
その日、父との面会は少し長くなりました。父の状態を考えれば、できるだけそばにいたいと思うのは、私にとって自然なことでした。
けれど夫には、その時間が思った以上に長く感じられたのかもしれません。夫は、病院の廊下で
「どうせ治らないのに見舞いに行っても無駄」
と口にしたのです。
その言葉を聞いた瞬間、私は頭が真っ白になりました。父がどのような状況で入院しているのかを知っていながら、なぜそんなことを言えるのだろうと感じました。悲しさと怒りが込み上げ、それまでと同じ気持ちで夫に接することができなくなりました。
立場が変わったときに感じたこと
父が亡くなってから数年後、今度は夫が倒れ、体を思うように動かせない状態になりました。入院中の夫は、私に何度も見舞いに来てほしいと求めてきました。
そのとき、私は父のホスピスで夫が言った言葉を思い出しました。一瞬、同じ言葉を返したい気持ちが心をよぎりました。けれど、相手に言われて深く傷ついた言葉を自分も返すことはできませんでした。
その後、私たちは離婚することになりました。夫の言葉や行動を振り返ると、あのとき父の見舞い先で感じた悲しさや怒りがよみがえります。
まとめ
父の入院中に夫から言われた言葉は、今でも簡単に忘れられません。一方で、同じ言葉を返したいと思った自分がいたからこそ、言葉が人を深く傷つける怖さも感じました。この出来事以来、自分の言動で誰かを傷つけていないか、以前よりも意識するようになりました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:豊川ゆず/50代女性・会社員
イラスト:はせがわじゅん
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年8月)
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