【もしも、こんなことが起きたら?】満員電車で女性の足を踏んでしまい…「痛い!折れたかも!」
※以下は、法律上の疑問を考えるために設定した架空のケースです。
帰宅ラッシュの満員電車に乗っていたLさん。
電車が大きく揺れた瞬間、バランスを崩し、隣にいた女性の足を踏んでしまいました。
女性:「痛〜〜〜っ!」
Lさん:「すみません!大丈夫ですか!?」
慌てて謝るLさんに、女性は「かなり痛い。折れたかも!」とひと言。
わざとではないとはいえ、もし女性がけがをしていたら、治療費を払わなければならないのでしょうか。
連絡先を交換する必要は?どこまで個人情報を教えるべき?
突然のことで、Lさんはどうすればよいのかわからなくなってしまいます。
うっかり他人の足を踏んでしまった場合の適切な対応について、太田垣弁護士に詳しく伺いました。
教えてくれたのは…株式会社BestOne 太田垣弁護士

- 株式会社BestOne 弁護士・税理士 太田垣佳樹(おおたがき よしき)さん
東京大学法学部卒業。首都大学東京(現・東京都立大学)法科大学院修了。
2013年司法試験合格、2014年弁護士登録。Arden法律事務所の代表弁護士として、相続・不動産・企業法務を中心に幅広い案件を取り扱う。
2022年より東京都立大学法科大学院非常勤講師を務めるほか、2025年に税理士登録。
結論:まずは謝罪!けがを訴えられたら駅員へ。治療費はその場で約束しない
まずは相手にきちんと謝罪をしましょう。そのうえで、相手がけがを訴えている場合には、駅員を介して対応するのが最も安全です。
注意していただきたいのは、治療費の支払いを包括的に約束してしまうことです。
わざとじゃなくても、治療費を支払う必要はある?
他人の足を踏んでけがをさせた場合、理屈のうえでは、不注意による権利侵害として損害賠償の対象になります(民法709条)。
刑事上も過失傷害罪(刑法209条)という規定はありますが、被害者の告訴がなければ起訴されない犯罪です。
もっとも、満員電車の中で身体が触れ合うことは、社会生活上避けられない範囲のこととして、そもそも責任を問える不注意があったとはいえないと判断されることが多いといえます。
実際に紛争になるのは、骨折など相応のけがが生じた場合がほとんどです。
足を踏んでしまったとき、どう対応する?
では、実際に他人の足を踏んでしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
その場で取るべき対応について、太田垣弁護士に教えていただきました。
①まずはその場で謝る

必ず謝ってください。
謝罪したことが、直ちに法的責任を認めたことにはなりません。
むしろ、謝らなかったことが相手の感情を害し、紛争を拡大させる大きな要因になりがちです。
②けがを訴えられたら駅員に伝える

相手がけがを訴えている場合は、必ず駅員に申し出てください。
第三者による記録が残ることで、後日の水掛け論を防ぐことができます。
当事者同士だけでやり取りするよりも、駅員を介した方が安全です。
③連絡先はどこまで教えればいい?

相手がけがを訴えている場合には、連絡先の交換に応じるべきです。
ただし、氏名と連絡先で足ります。勤務先や詳細な住所まで伝える必要はありません。
可能であれば、駅員を介して交換するのが安心です。
④「治療費は全部払います」と約束するのは避けて

ここが最も注意を要するポイントです。
その場で「治療費はお支払いします」と包括的に約束すると、後日、通院が長期化した分の費用や、仕事を休んだ分の補償、慰謝料まで求められることがあります。
その場では、
「診断書を拝見したうえで、必要な範囲で対応します」
にとどめてください。
また、その場で示談書に署名することも避けてください。
相手がけがを訴えたら「個人賠償責任保険」も確認を

ご家庭の火災保険や自動車保険、クレジットカードには、「個人賠償責任保険(特約)」が付いていることがあります。
こうした日常生活での事故も対象になり、商品によっては示談交渉を保険会社が代行してくれる場合もあります。
相手がけがを訴えた場合には、あわせて自分が加入している保険を確認してください。
「払わなければ職場に連絡する」と言われたら?

一方、踏まれた側から、軽微な接触にもかかわらず高額な金銭を要求されたり、「払わなければ職場に連絡する」などと告げられたりした場合には、恐喝に当たることもあります。
不当な要求を受けた場合は、その場で応じず、駅員や警察に相談してください。
うっかり足を踏んだときも、まずは落ち着いて対応を
満員電車では、電車の揺れや混雑によって、意図せず他人の足を踏んでしまうこともあります。
そんなときは、まずその場できちんと謝ることが大切です。相手がけがを訴えている場合は、当事者同士だけで話を進めず、駅員を介して対応しましょう。
また、その場で治療費の支払いを包括的に約束したり、示談書に署名したりするのは避けた方がよいとのこと。
万が一に備えて、自分が加入している保険に個人賠償責任保険(特約)が付いているか、一度確認しておくと安心ですね。
※一部AI画像を使用しています。