子どもの耳掃除について、「どのくらいの頻度したらいいですか?」「どのくらい深くまで入れていいですか?」など、健診や病気の診察のときなどに結構聞かれる質問です。私は「耳掃除はしなくていいんですよ」とお答えしています。その理由をお伝えしたいと思います。
「耳掃除」しなくていい理由は?
健診のみならず、中耳炎のあとの診察などでも耳掃除の質問はあります。中耳炎になると耳だれも出てくるので、「耳掃除しなくちゃ」となりますよね。しかし、耳掃除で中耳炎の予防ができるわけではありません。鼻水を吸引したほうが中耳炎の予防ができます。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会でも、「ヒトには耳垢を自然に排泄する機能(自浄作用)が備わっているため、多少の耳垢であれば家庭で無理に取る必要はまったくありません。綿棒や耳かきで習慣的に耳掃除をしている人も少なくありませんが、入浴後にぬれた耳を軽く拭う程度が無難です。耳掃除は医学的には不必要かつ危険な行為であることを認識してください。どうしても耳垢が気になるときは耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。」
耳垢は「細菌やカビが外耳道に繁殖するのを防いだり、敏感な外耳道皮膚を保護する役割があります。また苦味があり、虫などの進入も防いでくれます。つまり耳垢が私たちの耳を保護しているのです。」
と耳掃除をしないことを推奨しています。
耳のケア、どうすればいい?
「耳掃除」といっても、綿棒や耳かきを耳の穴に入れて「掃除」することはしません。ガーゼなどを指に巻いて、耳を拭くというイメージでケアしておけばOK。大人の指なら子どもの耳の穴の奥まで突っ込めないので安全です。お風呂や沐浴で耳の中に水が入っても大丈夫。放っておけば水も自然に排出されます。
ちなみに私自身、耳掃除をすることはありますが、子どもが大人しくテレビなどを見ているときに(←すごく大事です。急にぶつかってきたら鼓膜を破る危険性も……!)、深くなりすぎないように綿棒でささっとおこなう程度です。本当は不織布かガーゼが良いですよ。
わが家の子どもたちは、基本的に耳掃除はしていません。親がおこなっているのを見ると、「やって〜」と言われるので、スキンシップ程度にすることがある感じです。お子さんが自分で耳かきや綿棒使うと、鼓膜を破ってしまう恐れもあるので、絶対にやめさせましょう!
耳鼻科に行くのは、どんなとき?
基本、耳掃除が目的で耳鼻科を受診する必要はないのですが、下記のようなときは、耳鼻科の受診を考えましょう。
●耳だれが出るとき
●耳の聞こえが悪くなったと感じたとき
●耳を痛がるとき
●耳の違和感を子どもが訴えるとき
●どうしても耳垢が気になるとき
耳鼻科を受診するときに「耳垢が気になって」と伝えると、その場で取ってもらえることもありますし、「今度受診するべきなのか」「受診するタイミング」「受診しなくて大丈夫なのか」など教えてもらえるので、それを参考にするのがいいと思います。
適切なお手入れ法を知ることが大事です
人間の体は、耳に限らず「適切なお手入れ方法」があります。
1. きれいにしたほうがよいもの
うんちをきれいに拭く、歯磨きをする、など
2. そこまで完璧にきれいにしなくていいもの
せっけんを使い洗いすぎると皮脂を落としすぎてしまう、耳垢も適度な量は耳を守ってくれる大事なものなので落としすぎなくて良い、など
きれいにすることのメリット、デメリットを理解していると、不要なケアを減らすだけでなく、お子さんの健康を保つことができます。
耳垢よりも「聞こえが悪くなっていないか」「鼻水が詰まって口呼吸になっていないか」などを毎日チェックして、心配なら耳鼻科の受診を考えてみてくださいね。