こんにちは。保育士の中田馨です。「保育園で実践している、子どもへのほめ方・しかり方」についてです。今回は、お出かけでのほめ方としかり方です。普段、保育士が現場で実際にどのような声かけをしているかお話しします。
よかれと思って言ってしまう言葉を言い換えてみる
お出かけ先でよく出る言葉といえば、子どもの言動を止めたいときに思わず言ってしまう「ダメ!」という言葉。気をつけてほしいのは、「ダメ!」を何度も使っていると、「ダメ!」の効力が薄まっていき、子どもにとって日常の言葉になってしまうことです。「ダメ!」は危険を回避するためにしかるときの言葉として、とっておきましょう。
実は、子どもと生活していても「ダメ!」を使わずに過ごせます。子どもの行動と気持ちにフォーカスを当てていると、「ダメ!」と言う場面はそれほど多く訪れません。今から、普段使っている「ダメ!」を別の言葉に言い換えられないか考えてみましょう。
例えば、人の家のお花を子どもが取ろうとしたとき。「ダメ!」ではなく、「待って」と言いましょう。そして「きれいなお花だから触りたくなっちゃったね。でも、このお花はおうちの人が大切にしているお花だから、見るだけにしようね」と言います。
お菓子を買ってと泣く
スーパーに行くとよく見かける光景。「お菓子、買って!」「今日はダメ!」というやりとりです。私自身も自分の子どもで経験していて、保育園の子どもたちを連れて買いものに行ったときにも経験しています。
商品を握りしめ、「買ってくれるまで絶対に離しません!」と強い意志で向かってくる子どもに、どう対応したらいいか迷ってしまいそうです。ここで、ママが見せてほしい態度は、「買うなら買う。買わないなら買わない」と言う明確な態度です。
子どもの訴えが激しいと、周りの目もあるので思わず根負けしてしまいそうですが、「買わない」と決めたなら、自分の気持ちに負けてはいけません。しかし「今日は買わないって言ったでしょ!」としからないでください。まずは、「このお菓子が欲しかったんだね」と子どもの気持ちを受け止めます。そして「今日は、卵を買いにきたからお菓子は買わない」と伝えます。子どもは、まだかたくなにお菓子を手に持ち動かないと思いますが、ママの言葉は聞いているのでしばらく待ってみましょう。
そして、こんな提案はOKです。「今日のおやつは、バナナヨーグルトにしようと思っているの。おいしそうなバナナを選んでほしいな」などです。お菓子を棚に戻せたら、お菓子を戻せたことをほめます。
スーパーに行ってもお菓子を買ってもらえない経験を積むことで、「買わないこと」が日常になります。少し時間はかかるかもしれませんが、じっくりと付き合いましょう。スーパーに行く前に「今日は、お菓子は買わない日だよ」とあらかじめ伝えることも大切です。
遊びに行くと帰りたがらない!
公園へ遊びに行ったときなど、「帰るよ」と言ってからがとても長いですよね。「帰るよ」「ヤダ!」のやりとりをいったい何回することでしょう。ママは帰宅してからのことを考えると、「早く帰りたい」という気持ちでいっぱいなことでしょう。とはいえ、今遊びがのってきているのに急に帰ると言われても子どもは困るのです。このようなときは、少し前から予告しておきましょう。
帰宅の15分前から「そろそろ帰るよ」と伝えます。そのときは、子どもに知らん顔されてもOKです。また5分したら「そろそろ帰るよ」と言います。そうすると、5分前に言われていたので、何となく子どもも「ああ、そろそろなんだな」と思い、1つおもちゃを片づけるかもしれません。さらに5分経ったら、自分でおもちゃを片づける子もいます。
子どもの様子を見つつ「行こうか」と言うと、すんなり帰宅の方向へ進みます。そして、「お片づけできてかっこいいね。ママ助かっちゃった!」とほめてあげましょう。ママがやりがちなのは、何度も頻繁に「そろそろ帰るよ」の言葉を使うこと。「そろそろ帰るよ」と1回言ったら、子どもを信じて少し待ってみるのがコツです。
公共の乗りもので騒ぐ
これは本当に困ってしまいますね。私の息子と娘は電車に乗ると騒ぐ子どもでした。「どうして電車に乗ると、いつも騒ぐの?」と、泣きたくなったことが何度もあります。電車に乗ることは、子どもにとって最高にウキウキする場面。特に、電車好きの息子はテンションMAXになってしまったのでしょう。とはいえ、「子どもが電車好きなんだから、騒いでも仕方ないでしょ?」というのは違います。
「静かにしなさい!」「走らない!」と言っても、子どもはすぐにおとなしくなりません。このような場合に声かけするときに心がけてほしいのは、ママがしてほしい行動を言葉にするということ。「静かにしなさい!」は「小さな声でお話ししてほしい」に、「走らない!」は「歩いてほしい」「止まってほしい」「座ってほしい」に変えて伝えます。
そして、騒がしくしている場合は、少なくとも周りの方に不快な思いをさせているかもしれませんので、下記の2つの行動と言葉で、きちんと子どもに気持ちを届けてほしいのです。
・子どもの動き(声)を体で止める。
・「座ってほしい」と伝える。
保育園での「遠足ルール」
保育園では、遠足などで電車に乗るときは、乗る直前に簡単なルールを2つだけ伝えます。
【1】先生と手をつなぐこと。
【2】小さな声でお話しすること。
この2つを伝えるだけで、子どもたちの電車に乗るときの気持ちが変わってきます。ぜひ、おうちのルールを決めてから電車に乗ってみましょう。
お出かけしているときに子どもが困った行動をすると、体中に冷や汗がダラダラ出ます。家なら泣いていてもしばらくそばで様子を見られますが、外だと早期に解決したいのがママの本音です。「この状況をどうしたいいの?」と悩むところですが、基本的には家と同じ対応をすればいいのです。子どもの気持ちを受け入れて、ママのしてほしいことを伝える、そして待つ。もちろん、抱っこもしてあげてください。
お出かけの場で子どもを「ダメ!」としかるのは、2つのときだけ。
・ケガをしそうな危ないことをしたとき。
・走り回ったり大騒ぎして、周りの人に迷惑をかけてしまったとき。
これらのときは「ダメ!」としかります。しかるときは、短い言葉を心がけます。それ以外の場面の場合は、いかにしからずほめる方向に持っていけるか、言葉の言い換えをしてみましょう。
作画:はたこ