「仲良く夫婦生活を送っていれば、赤ちゃんは自然に授かるだろう」。妊娠についてそう考えている人は少なくありません。しかし、健康な夫婦でも排卵1回あたりの自然妊娠率は約20-30%程度と言われています。若くて健康でも1年の排卵のチャンスはたった12回。
不妊治療体験者の声を取材した連載、第3回目となる今回は、妊活2カ月で不妊治療を始め、その4カ月後にタイミング法で授かった女性の物語をお届けします。ケース3、小林夏美さんの(29・仮名)の場合。
自然な妊娠を望む年上夫は非協力的。気持ちのすれ違いに涙
「あぁ、疲れた」
その日、夫は仕事から帰るなり、大げさに疲れをアピールしてきた。その日、というのは妊娠しやすいタイミングの日。ネットや妊活アプリで調べ、予め伝えておいたが、明らかに拒絶していることが伝わってきた。
「今日もだめか……」
夏美さんは、疲れた夫を責めることもできず、すれ違う気持ちを抱えて1人静かに泣いた。
現在、生後4カ月の女の子を育てる夏美さん。絶望と希望の間でさまよった不妊治療期間を経て、今は穏やかな日々を送っている。
27歳の時に13歳年上の夫と結婚。夫の年齢も気にして、結婚前から「すぐに子どもは作ろうね」と語り合い、ハネムーンから妊活をスタート。ところが2カ月経ってもいつも通りに生理が来る。
「そのころは妊娠に関する知識がなくて、すぐに授かると勝手に思っていたんです」と夏美さん。同じ時期に結婚した同僚たちは、次々に妊娠を報告していた。
夫にいいタイミングを伝えるも「そういうのは自然にできるものだから。欲しい欲しいと思うと逆に妊娠できないよ」と非協力的な言葉が……。夫とのタイミングが合わず、日に日に焦りは増していった。
寝込むほどの生理・・・もしかしからできにくい?と不安に
毎回、生理は苦痛でたまらなかった。腹痛、腰痛、頭痛に加えて多量の出血。学生時代は寝込むほどだった。実家近くの産婦人科クリニックに長年通い、痛みを緩和するための低容量ピルを処方してもらっていた。妊活に備えてピルの服用はやめていたが、市販の痛み止めに頼りすぎることも。
人より重い生理が気になってネットで調べると、不妊と結びつく情報がいくつか引っかかった。「もしかしたら、自分は赤ちゃんが授かりにくいのかもしれない……」。胸がざわざわした。
日本産科婦人科学会では、不妊を定義する期間として、「1年間が一般的」と定義している(妊娠を望む健康な男女の間に授からない期間)。しかし問題が考えられる場合は、すぐに治療を開始するよう勧めている。
頭に浮かんだ「不妊治療」の文字、しかし夫は……
夏美さんの頭には、妊活から2カ月の時点で「不妊治療」の文字が浮かんだ。妊娠するチャンスは1回の排卵でたった数日間しかない。排卵は月に1回、1年で考えるとたった12回だ。このままではあっという間に年を重ねてしまいそうな気がした。
ところが赤ちゃんは誰もが自然なタイミングで授かると思い込んでいる夫。ネットの書き込みでも、夫と同じ意見を多く見かけた。通院したいと相談すると、予想通りの反応が返ってきた。
「行く必要はないよ。自然に任せたいんだ」
◇ ◇ ◇
妊活には非協力で、しかも不妊治療の検査へは「行く必要がない」と言う夫。果たして、夏美さんの妊活はどうなるのでしょうか。