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子どもを望んで数年、夫に原因があることが判明。高額な手術に悩んで… #1

不妊治療体験者の声を取材した連載、第5回目となる今回は、夫の不妊治療手術を経て不妊治療を乗り越えた霧野志保さん(31・仮名)の場合。なかなか授からない原因が夫側にあることが判明。夫の手術、職場のパワハラ、流産を経て、待望の赤ちゃんが誕生するまでのお話です。

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医師杉山 力一先生
産婦人科 | 杉山産婦人科 理事長

平成10年、北九州セントマザーに国内留学し体外受精の基礎を学び、平成12年に杉山レディスクリニックを開院。平成19年、産婦人科総合施設杉山産婦人科としてリニューアル。現在は杉山産婦人科グループ3院の理事長を務める。また、政府へ不妊治療助成金の増額を求め、菅総理との話し合いをするなど精力的に活動する。監修著書『男の子女の子が欲しい!あかちゃんの産み分けがわかる本』(主婦の友社)など多数。
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子どもを望んで数年、夫に原因があることが判明。高額な手術に悩んで… #1

 

「赤ちゃんを産みたい」と思える情報を届けたい。ベビーカレンダーは「べビカレ特集」として、妊娠、出産、子育てなどママたちを取り巻く現状やさまざまな課題を問題提起し、取り上げています。今回は「不妊治療」について。仕事と不妊治療の両立が難しい現代の「不妊治療への理解」について考えます。

 

不妊治療体験者の声を取材した連載、第5回目となる今回は、夫の不妊治療手術を経て不妊治療を乗り越えた霧野志保さん(31・仮名)の場合。なかなか授からない原因が夫側にあることが判明。夫の手術、職場のパワハラ、流産を経て、待望の赤ちゃんが誕生するまでのお話です。

 

不妊治療というと話題は女性が中心になりがちですが、WHOによると不妊カップルの約半数は、男性側が問題を抱えているとされています。「子どもが欲しい」と願う気持ちは、女性だけではありません。精子に問題があると診断された男性に対する世間の理解や制度は、まだまだ広がっていません。

 

「不妊」という問題を、夫婦どちらかが過剰に背負うのではなく、「夫婦2人の問題」ととらえ、不安や痛み、悲しみや希望を分かち合い、二人三脚で不妊治療を乗り越えた夫婦の物語です。



全体の約半数を占めるとされる男性側の不妊。最も多い原因が、「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」だ。男性不妊症全体の約40%の原因となっている。精巣の上にある静脈が腫れるため、精巣の温度が上昇することや、血流が悪くなることで精子機能を弱め、不妊につながるとされている。外科的な手術で改善する場合もある。

 

結婚して5年、周りのベビーラッシュに焦り

コロナ禍での出産を経て、生後8カ月の女の子を育てる霧野志保さん(31・仮名)。夫とは20代前半で結婚し、「20代のうちに産みたい」と願っていた。仕事は夫婦ともに学校の先生。「子どもが好き」という気持ちは、夫も同じだった。学生時代から8年間恋人でいた頃から、「いずれは2人の子どもが欲しいね」と語り合ってきたほどだ。

 

結婚して5年。社会人になってからずっと仕事一筋に生きてきたものの、お互いもうじき30代。職場もベビーラッシュだった。そろそろわが子を……と意識せずにはいられなかった。ところが夫婦生活を続けても毎月訪れる生理。子どもがやって来てくれる気配はなかった。「私の体に何か問題があるのだろうか」とだんだん不安になっていった。

 

「でもいきなり不妊治療って考えるのはハードルが高くて。夫婦間でも言い出しにくかったです。まずは重い生理痛を軽減しようという目的で、ネットで調べた通勤圏内の婦人科クリニックへ行きました」

 

検査の結果、夫に不妊の原因があることが判明

志保さんの検査結果は「平均」だった。タイミング療法を試してみようという流れの中で、夫も検査を受けた。

 

「平均と比べて精子の数値が低いですね。専門のクリニックに紹介状を書くので、行ってみてください」

 

担当医からの言葉に、夫はあまり動揺を見せなかった。

 

「生まれたときに大病をしているので自分が原因かもしれない」と考えていたからだ。でも、「いつか子どもが欲しいね」とあれほど2人で語り合って来た。ショックを受けていないはずはなかった。

 

「でも落ち込んでばかりではいられないですから。どういう方法が最善なのかなって2人で前向きに考えるようにしました」

 

夫は一人で精密検査へ

一般的に女性と比べて男性の不妊治療に関する世間の理解は低い。男性不妊に対する公的な助成金も十分とは言えず、まだまだハードルは高いのが現実だ。男性自身の関心が低いケースも少なくない。なかなか核心に迫る悩みは女性より相談しづらいと感じている当事者男性は多く、検査に行くこと自体ちゅうちょする人もいる。

 

女性の不妊治療の場合、婦人科へ夫婦そろって行くことは珍しいことではないが、男性の場合、妻が付き添うケースはまだまだ一般的ではない。

 

結局、志保さんの夫は「精密検査は1人で行ってくる」と言い、不安がにじむ夫の背中を祈るような気持ちで見送った。専門クリニックで詳しく検査した結果、「精管が片方しか通っておらず、近くを通っている血管によって精巣が熱せられるため精子の数が少ない」と診断されて帰ってきた。

 

高額な手術費……夫は手術を決意

前出の「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」は、外科的手術で改善する可能性がある。志保さんの夫の場合、「通っていない精管はどうにもできないが、熱せられる精巣への対処は手術で改善できるかもしれないと医師から言われた」と夫は言った。でもその先の詳しいことについて、志保さんは知らない。

 

「本人が詳しく話したがりませんでしたし、デリケートな問題なので、あえて根掘り葉掘り聞かないようにしました」

 

手術を受けるか受けないか。問題は経済的な負担だった。手術費用は30〜40万円。住んでいる地域では、夫が対象となっている手術への公的な助成金は得られなかった。しかし目の前に立ちはだかるのは「30の壁」。夫は手術することを決めた。

 

「2人で未来のことを考えたとき、“今はやれるだけのことはやろう”ってことになりました。だめならそれなりの幸せがあるじゃんって、2人ともが思えたんです」

 

そして夫は、また1人で手術へ向かった。

 


「子どもが欲しい」

 

夫婦の願いを叶えるため、手術を行うことを決意した夫。果たして結果は……?

 

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      こういうの 分かった時に相手に伝えるのって結構気まずいよね
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      旦那側に不妊の原因があることって意外と多いですよね!!

    この記事の著者
    著者プロファイル

    ライター大楽眞衣子

    社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

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