パパが寝かしつけできるようになるメリット
「あるイベントで、パパと赤ちゃん60組の寝かしつけに成功したことがあるんですよ」と話すのは、保育士で寝かしつけの達人でもある大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生です。信じられないような話ですが、このイベントでは「寝かしつけに成功したことがない」というパパも成功し、感動の渦に包まれたそうです。
「パパだって寝かしつけはできるんですよ。僕らの仲間(NPO法人ファザーリング・ジャパン)には、『パパとじゃないといや〜』って子どもに言われている人はいくらでもいます。パパが寝かしつけられるようになると、ママの可動域は飛躍的に広がりますよね。家でできることも増えますし、ママはおでかけもしやすくなります」
とはいえ、「何度もチャレンジしたけどママのおっぱいでないと絶対に寝ないんです……。」と諦め気味の人もいるのでは。でもその状況は「必ず変えられる」と小崎先生は言います。
「30分や1時間試してみて寝ないからママでないとムリー! と判断するのはもったいない。おっぱいでないと寝ない、というのはただ癖になっているというだけ。それがいつの間にか家のルールになってしまいっているだけです。ではそのルールは誰が作りましたか? 自分たち親ですよね。自分たちが作ったルールは変更可能なんです。そう考えると、子育てのいろんなことがラクになって来ると思いますよ」
寝かしつけのポイントや注意点
子育ての2大お悩みは、寝ることと食べることではないでしょうか。個人差も大きく、一筋縄ではいかないことも多いですよね。「思う通りにいかないのは当たり前。時間がかかるものだ!」という心構えもポイントのようです。
「寝かさないとダメとあせらないことです。気持ちは伝わります。いつかは絶対に寝ますよね。昼間の活動量を増やすようにしっかりと動いてしっかり食べるという生活全般が大事になってきます。それから、寝やすい環境を作ることも大事ですね。温度や音、光、やわらかさを意識して、今から寝るよということを根気よく伝えていきます」
子どもがそれぞれに持つ入眠の“儀式”も大切にしてあげるといいそうです。たとえば「パジャマにお着替え→トイレ→絵本→消灯→入眠」といった具合です。
スマホを見ながら寝かしつけするというパターンも多いようですが、「そこは子どもに集中してあげてほしい」と小崎先生は言います。
「ケータイも仕事も気になる気持ちは分かります。でも子どもとどっぷり過ごせる時期なんて、子どもの成長の中ではそんなにないんです。だからこそ大事にしてあげてほしいなと思います。子どもに集中してあげることで子どもは安心感を持って眠れるんです」
一緒に寝落ちするのもいいですが、“寝かしつけ技”を持っているといいそうです。
「トントンする、子守唄を歌う、好きな流行歌を歌う、お話してあげる、心落ち着く絵本を呼んであげる……。“寝かしつけ技”は何でもいいんです。こんな密なコミュニケーションの機会はないじゃないですか。その時間を大事にしてあげてほしい」
「ママがいい!」と大泣きしてしまう場合は?
パパの心構えが万全でも、「パパと寝ようね」と言っただけで大泣きされ、「やっぱり無理……」とくじけそうになることも。でもママが病気になる、出産で入院する、出張で不在にするといった状況も想定されます。「ママしか無理だよ……って考えではダメなんです。そう考えるパパには、どこかに甘えがあると思いますよ」と小崎先生は指摘します。
「これまでママと寝るというルールからパパと寝るというルールに変更する場合、いきなりやると子どもは当然泣くでしょう。なのでまずは『ママとパパと一緒に寝る』→『パパと寝る』とゆるやかな段階を踏む必要があります。泣くことは全然問題ではないんです。24時間泣き続ける子はいませんから絶対大丈夫ですよ」
寝かしつけを担当しない時はできることを探して
とはいえ、誰にも得手不得手はあります。寝かしつけが苦手なママもパパもいます。たとえば寝かしつけが苦手なパパを見兼ねてママが寝かしつけを担当しているとしたら、「自分が苦手なことをママがやってくれている間、自分は何をすべきか」ということに意識を向ける必要があります。
「寝かしつけをママがやっている間はパパの休憩時間じゃないですからね。ママが寝かしつけを終えて戻ってきた時、台所や洗濯物が山のようになってるなんて、あり得ないですよね。寝かしつけの担当もそうですが、2人で協力し合いながら子育てのルールを柔軟に変えていったらいいと思います」
取材・文/大楽眞衣子