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夫は知らない「名もなき育児」。パパたち、子どもの病院すべて言えますか?ママたちのリアルとは…!?

日常にあふれる名前のない家事「名もなき家事」が話題を呼んでいますが、子育てに目を転じれば、当たり前すぎて気づかれにくい子どもの世話「名もなき育児」も日常にあふれています。これらの負担はママに偏ることが多く、育児ストレスの原因にもなっています。パパの育児参加について詳しい、大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に話を伺いました。

この記事の監修者
監修者プロファイル

保育士小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授、大阪教育大学附属天王寺小学校校長

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。NHK Eテレ「すくすく子育て」出演。2022年より「保育」と「育児」分野のYahoo!ニュースオーサーに。
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1日当たり5時間20分の差! 家事・育児時間の男女差

東京都が実施した「令和3年度男性の家事・育児参画状況実態調査」では、未就学児の子育て世代の家事・育児関連時間は、1日当たり男女差が5時間20分もあることが分かりました。

 

「パパは名もなき育児=ママの仕事、と思い込んでいる傾向にあります。例えば、子どもの面倒をよく見ているパパでも、うんちのおむつ替えとなると『ママを呼んでいるよ〜』などとママに丸投げすることもあります。でも、『ママ=子どものお世話が得意』とは限りません。ママにだって苦手なことはある。パパだって出産とおっぱいをあげること以外は全部できますよ」と小崎先生は話します。

 

小崎先生が解説! 名もなき育児のリアル

ここで、名もなき育児のリアルを小崎先生の解説とともにお届けします。

 

ケース1:赤ちゃんや子どもとお出かけするときの荷物の準備

赤ちゃんとのお出かけは持ち物が多いので、荷物の準備は実はとても大変なこと。とくに赤ちゃんが小さければ小さいほど、おむつ、授乳セット、着替えなど荷物が多くなります。それなのにパパが赤ちゃんや子どもとお出かけする場合、「荷物の準備だけはママにお願いする」ということも……。

 

小崎先生から

「上手な荷物の支度は、いかに親としての経験を積むかです。隣町の公園に行くだけなのに、大きなボストンバッグで出かけたパパもいます(笑)経験することで『これはいる』『これはいらない』とわかってくる。親も試行錯誤です。ママはパパに失敗が許される機会を与えて、パパも育ててあげてほしいです」(小崎先生)

 

ケース2:食事の献立を考える

家に残っている食材を把握したり、栄養のバランスを考えたり、子どもの好きそうなものを考えたり……。献立を考えるのも実は大切な育児のひとコマです。はじめての離乳食であればわからないこと、食べさせていいものなど、調べることにもたくさんの労力と時間を費やします。

 

小崎先生から

「料理という家事の中で、一番難しいのが献立です。子どものミルクや離乳食は、子どもの発達について理解できているかどうかも関わってきます。離乳食の初期、中期、後期のこと、アレルギーのこと、はちみつを1歳未満は食べさせてはいけないこと()など、子育てに関する意識・知識・技術を得る努力が必要になってきます。出産までミルクの調乳をやったことがなかった、というママは多いです。『ママが頑張っているから俺はやらなくていい』のではなく、『ママもわからないことだらけ』であることをパパに認識してもらえるとよいですね」

 

※生後1年未満の乳幼児は、乳児ボツリヌス症にかかるおそれがあるため、はちみつを与えてはいけません。

 

ケース3:子どもの発達や病気について、知識を習得したり、相談・受診したりする

子どもの発達の悩みや病気について、育児書やインターネットで調べる、保育園や支援センターに相談する、病院を探すなどもママがメインになっている家庭が多いかもしれません。

 

小崎先生から

「保育園の面談にパパがくる家庭は少ないのですが、なかには夫婦で来る家庭もありました。保育士からすると、夫婦で来てくれるとすごく安心します。パパも関わることで、子どもの成長や様子について多様な見方ができるからです。『子どものかかりつけ医をどれだけ知っているか』も大事です。子どもが通っている内科、外科、皮膚科、耳鼻科、歯科、夜間救急など、パパは全部言えますか?」

 

ケース4:子どもの遊び相手になる

子どもの遊び相手になることも、立派な育児の一つです。子どもの「遊びたい」に応えることも、大事な時間です。ただ、遊びを終えるとき、子どもが「いや」と言って拒むなんてことは日常茶飯事。でも、帰宅してからの夕飯の支度やお風呂、寝かしつけなどのタイムスケジュールを考えると、うまく子どもを説得しなければなりません。遊び相手になるということは、スケジュールを考えたり、説得したりと、いろいろな名もなき育児を対応しているということ。責任を感じているからこそのこの苦労! パパにもぜひ知ってもらいたい育児の大変さの一つです。

 

小崎先生から

「育児は仕事のように段取りよくいきません。例えば絵本の読み聞かせにしても、『2回絵本読んだから、はい、おしまいね』では仕事ですよね。でも現実はこうはならない。子どもは『もう1かい! もう1かい!』を繰り返します。いったい何回読まなきゃいけないの? いつ終わるの? という状況です。そこにうまく区切りをつけたり、ほかの遊びに誘ったりしていくのが育児なんです。でもそういう経験のないパパもいます。経験がないと、仕事モードで考えて、子どもをうまく誘導できないこともあります。ママとのズレは、責任感の違いからくるものが多いかもしれません」(小崎先生)

 

ほかにも

・育児グッズ購入前のリサーチ

・きょうだいゲンカの仲裁

・食事、おやつのあとの片づけ

・お絵描きや工作後のあと片づけ

・赤ちゃんが寝ているときの安全確認

・おもちゃの片づけ

・水筒・お弁当の片づけ&準備

・園グッズの準備

・検温とサイン

 

など「名もなき育児」は無数にあります。家庭ごとに内容も変わってくるので、オリジナルリストを作って夫婦でシェアしてみてはいかがでしょうか。

 

 

パパが育休を取って気づく親としての「責任と覚悟」

育休中のパパのイメージ

 

2022年4月から育児・介護休業法が大きく改正され、パパが育休を取りやすくなりやすくなりました。10月からは産後パパ育休も新設され、パパも「産休」がもらえるようになるので、パパが主体的に育児に関わるチャンスも増えそうです。男の子3人を育てた小崎先生は、3度の育休で親として成長したそうです。

 

「僕の場合は、3人の息子それぞれで育休を取って、育休を取る事で親になれたと思っています。もう20年以上前ですが、それぞれ3カ月取りました。育休を取って、自分が責任を持って子どもの面倒を見るようになって、親としての責任と覚悟が芽生えました。僕は育休を取るまで、“一緒に住んでいる楽しいおっちゃん”でしかありませんでした(笑)僕は保育士だったけれど、自分の子どもが泣けば『ママを呼んでいるよ〜』と丸投げしていましたし、うんちのおむつを替えることもしないほどでした。

 

僕はジャンクフードが大好きでしたけれど、子どもの離乳食を作ったときに人生で初めて食べ物を意識するようになったんです。僕が育休をとった約25年前、残留農薬が世間で話題になっていましたが、全然気にしてなかったんです。ところが、子どもにオレンジを絞って飲ませるときに初めて『これ大丈夫か?』と意識したんです。

 

育休中には、責任を持って子どもの命を守るということも覚えました。子どもがケガをして病院へ連れて行ったときには、「出生体重は何グラム?」「何週で生まれた?」「黄疸はどうだった?」と聞かれて、何も答えられなかったんですね。病院の人からしてみたら「なんでパパがきたの?」みたいな感じですよね(笑)だから次から母子手帳を持っていくようになりましたし、いろいろ答えられるようになりました」

 

と小崎先生は振り返ります。

 

 

家事育児の経験はパパ自身の人生が豊かになる

パパが家事育児の経験を積むことで、「パパ自身の人生が豊かになる」といいます。

 

「パパが育児を通して生活に興味関心を抱くようになると、生活スキルが上がって、結果的にはパパ自身のQOLが上がります。人生が豊かになります。例えば洗濯物のタオル一つにしても、シワを伸ばしてきれいに干すことができれば、使い心地のいい仕上がりになる、といった具合です。こうして自分の人生がより豊かなものになるんです」

 

パパの家事育児での活躍は、ママの人生にもプラスの影響を与えてくれそうです。

 

「ママは常に健康で、いつも100%の力を育児で発揮できるとは限りません。体調を崩すこともあるでしょうし、出張が入ることだってあるでしょう。そんな時、『ママしかできない』家事育児がたくさんあると、家族は困り果ててしまいます。反対に、パパがミルクや食事を作れる、寝かしつけができるとなると、ママも安心して出張できますし、ママの可動域も広がります。育児の初期段階でパパを巻き込んで、一緒に親として成長してけるといいですね」(小崎先生)

 

 

取材・文/大楽眞衣子

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    著者プロファイル

    ライター大楽眞衣子

    社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

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