補聴器をつけた赤ちゃん
私の息子は先天性難聴です。さまざまな検査や手続きなどをして、生後5カ月を過ぎたころからは補聴器をつけられるようになりました。「音」を知らない息子に、いろいろな「音」を聞かせたいと思い、積極的におでかけしていましたが、補聴器をつけた赤ちゃんは不思議そうに見られることも多くありました。
そんなある日、ベビーカーに乗る息子をじっと見つめる女性。そして突然、「これは、何をつけてるの?」と声をかけてきたのです。
「何をつけてるの?」
突然声をかけられたことに少し驚きつつも、事情を説明すると、その女性は「そうなんだ〜」と。純粋にわからないことを質問して、その答えに納得したような雰囲気でした。そしてまた息子に視線を戻し、やさしい表情で「よく笑って、かわいい子ね。バイバ~イ」と言い、立ち去って行きました。
息子がつけている補聴器について直接聞いてくれたのは、その女性が初めてです。そして、その女性の反応が、私にとってはとてもうれしいものでした。
偏見も同情もないスマートな対応に感動!
補聴器をつけた赤ちゃんである息子は、不思議そうに見られたり、かわいそうと言われることもありました。時には、「あの子の耳……」「見ちゃダメ!」という親子の会話が聞こえることもありました。
障害があっても、私の愛情は変わりません。すくすくと元気に成長し、大事に育てている息子を「かわいそう」と言われるのは、とても複雑な気持ちでした。「障害=かわいそう」という先入観に違和感もありました。
障害を持つ人への対応は、やさしい気持ちから悩む方も多いように感じています。ただ、気を使われ過ぎていたり、かわいそうと思われている雰囲気は、私にはよく伝わっていました。あのとき、疑問に思ったことを素直に聞いてくれたこと、何の偏見もなく、同情する様子もなかった女性のスマートな対応は本当にうれしいものでした。
著者:竹中 しゅう
先天性難聴を持つ5歳の男の子のママ。息子、夫、黒猫兄弟2匹と暮らしている。以前はフルタイム勤務で働いていたが、子どもの療育を優先するため退職。現在はドタバタ育児と療育に奮闘中。