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「どうしてもできません!」植物好き義母からのお裾分け。すぐ枯らしてしまって

人には得意な分野もあれば不得意な分野もありますが、私にとってどうしても苦手なことは「植物の世話」です。しかし、義母は植物好き。義母と良好な関係を築きたいものの、植物を育てることだけはうまくできず……。

「どうしてもできません!」植物好き義母からのお裾分け。すぐ枯らしてしまって

 

お義母さんは植物がお好き!

義母は、植物が大好きです。義実家の玄関にはいつも季節の花が色とりどりに咲いていて、部屋の中には観葉植物がいくつも飾られています。義母が生けたフラワーアレンジメントが、テーブルに彩りを添えていることもあります。

 

庭では野菜を育てていて、特に夏はトマトやピーマンがよく採れ、お土産にたくさんいただいて帰ることもしばしば。バジルなどのハーブもあれば、ミカンや梅のような実のなる木もあり、年中楽しみがあり、義母はよくお裾分けをしてくれます。

 

食べられるものはありがたくいただくのですが、あるとき「この観葉植物、持って帰らない?」と言われたことがありました。

 

緑のある暮らしはとても素敵で憧れます。その思いとは裏腹に、自分で植物の世話をしたい気持ちはまったくありません。定期的に水をやったり葉を拭いたりするなんて、面倒でしかないと感じてしまうのです。義母と仲良くしたいという気持ちが強く、何かと話を合わせてしまいがちな私ですが、ここは合わせてはいけないところ。「植物を育てるのは苦手なので」「枯らしてしまったら申し訳ないですから」と何度も伝え、なんとかお断りすることができました。

 

バジルなら私でも育てられる!?

義母がわが家へ遊びにくるときには、お土産をたくさん持ってきてくれます。その日も大きな紙袋を下げてやってきました。中から食品や日用品がいくつも出てきて「うれしい! ありがとうございます」を繰り返していたのですが、最後に出てきたのがなんとバジルが植えられた鉢だったのです。「バジルは丈夫だから枯れないし、世話も簡単だから」と義母は言いますが、私は「植物はあれだけお断りしたのに」と苦々しい気持ちでした。けれど、重たい思いをして持ってきてもらった鉢を返すわけにもいかず、わが家のベランダにバジルの鉢が置かれることとなったのです。

 

義母の言うとおり、バジルは簡単には枯れませんでした。バジルは料理の彩りにちょうどよく、茶色くなりがちな食卓にバジルの緑が入ることで少しおしゃれ感が出ました。

 

バジルが食卓を飾る日がしばらく続いた……のですが、じきに飽きてしまい水をやり忘れるようになって、結局バジルは枯れてしまいました。植物を枯らしてしまうことはなかなかのダメージがあります。「ごめんね」と言いながら、泣く泣く鉢を処分しました。そして「また持って行ってあげるから」という義母の言葉を丁重にお断りして、元の緑のない生活に戻ったのでした。

 

次の犠牲はゼラニウム!?と思ったけれど…

ある日、義母がいつものように紙袋を下げてやってきました。「ゼラニウムっていうんだよ」と紙袋の底から鉢を取り出す義母。「また植物か」とうんざりした私ですが、植物を育てるのが苦手なことはもう義母もわかっているはずです。それでも持ってきてくれたのだから、枯らしてしまったらそれはそれで仕方がないという気持ちで育てることにしました。すると少しだけですが、植物を育てる楽しさを感じるようになったのです。同じことの繰り返しの毎日のなかで、ゼラニウムに水をやるときには「今日も元気かな」「大きくなったかな」とやさしい気持ちになることができました。

 

けれどもだんだん飽きてしまい、水をやらない日が何日も何週間も続くように。「そういえばゼラニウムどうしてる?」と夫に言われ慌てて様子を見に行くと、土は乾ききっていたものの、そこには元気なゼラニウムの姿がありました。

 

その後もゼラニウムは、水をもらえたりもらえなかったりと不安定な日々を過ごしていますが、何年経っても枯れる様子はありません。大きさはもらったときからあまり変わりませんが、ときに小さなピンクの花を咲かせて、私たちを楽しませてくれています。

 

 

この春、義母からバジルの栽培セットをもらいました。私がバジルを枯らした数年前のことを覚えているのかいないのか「バジルは簡単だから大丈夫」と笑顔で手渡してくれました。私も「今回こそは!」と説明書を逐一読みながら大切に育てた結果、大量に葉をつけて立派に育ったのでした。「見てください!」と義母にその姿を自慢したことは言うまでもありません。

 

著者/百田さく
イラスト/ののぱ

 

 

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