28歳のパニ子は専業主婦。仕事を辞めてから、夫のユウトはすべての家事をパニ子に押し付けるようになりました。最近では、文句や嫌味までいうように……。なんとかならないものかと、パニ子は悩んでいました。
「料理が上達しなければ離婚な!」
「洗面台の鏡が汚れてるぞ!」
「今すぐやれよ!」
「お前って本当に料理下手だよな!!」
なにかにつけてパニ子に文句をいうユウト。
最近では先輩の奥さんと比べて、嫌味ばかりいうように……。
「先輩の奥さんは料理じょうずなんだってさ〜仕事も持っているのに弁当も豪華なんだよ! 俺もそんな奥さんが良かったな〜」
ユウトは大きなため息をつきます。
「そうだ、お前明日から料理教室通えよ!」そういって1冊のパンフレットを渡してきました。
「それでも上達しないようだったら、離婚とかも考えようかなw ま、離婚されたくなかったら、一生懸命勉強して来いよ!」
ユウトはそういってゲラゲラと笑っています。
軽々しく離婚を口にするユウトに腹は立ったけれど、料理が得意ではないことを自覚しているパニ子。
家事ばかりの生活に飽き飽きしていたこともあり、料理教室に通うことにしました。
料理教室はとても楽しく、行って正解!
パニ子はみるみるうちに料理の腕を上げました。
そしてもうひとつ、頼れるお姉さんのような友だち、ハルナに出会えたのも、良かったことのひとつ。
週1回の料理教室が良い気分転換にもなって、ユウトとの夫婦仲も改善されそうと思っていたのですが……。
「料理教室に通っているくせに、手抜きするな!」
今日の夕飯は、料理教室で習ったサクフワの唐揚げです。
肉の漬け込みもバッチリ! あとは揚げるだけです。
「おかえり! もう少しで夕飯できるわよ!」
「は? 俺が帰ってきたときには夕飯ができてる状態にしておけっていったよな!?」
ユウトは相変わらず不満ばかり。
でも、作っておかなかったのは揚げたてを食べてほしかったから。
それに、いつ帰って来るかわからないのに、用意しておくなんて不可能です。
すこぶる機嫌の悪いユウトは、それでも気分が晴れないよう。パニ子への文句が止まりません。
「質素な食事だな! 料理教室に通っているくせに、手抜きするなよ! 先輩の家では毎日5品は作るっていってたぞ。お前も見習って明日から5品作れよ!」
あまりの物言いに、言葉を失うパニ子。
「そういうなら……、今に見ていなさい!」静かに決意したのです。
すべて計算どおり!
先輩を見習えとユウトがいうので、パニ子は毎日5品以上のおかずを作ることにしました。料理教室のおかげでレパートリーも増えたので、苦ではありません。
メニューはユウトの好きな肉料理中心に、喜ばれるものばかりを用意。5品作って余ったぶんは、翌日の弁当に回します。
次第にユウトはブクブクと太りはじめ、食費もとんでもない額に!
すべてパニ子の計算通りです。
それに気づいたユウトは、真っ赤になって怒ります。
「あなたが5品作れといったから作っただけ!」とパニ子。
「こんなの嫌がらせだろ! もう我慢の限界だ。お前とは離婚してやる!」ユウトは叫びました。
ブクブク太ったモラハラ夫。仕返しはこれから!
しかしパニ子は準備万端!
離婚の証人になってもらうために、料理教室で出会った友だち・ハルナを呼びました。
実はハルナの夫は、ユウトの先輩。
毎日5品作っているという話は、ハルナのことだったのです。
これにはユウトもびっくり。
「当然お2人は俺の味方ですよね?!」と頼ったのですが、
「奥さんに対して、心ない言動ばっかりだな」
「家事を任せてばかりで文句をいうのはおかしいよ」
「自分の家のことなんだから、家事は分担するに決まってるだろ」
「うちの毎日5品の食事だって、分担して作っているし買うこともある」
「お前は自分の都合のいいように解釈しすぎなんだよ!仕事でも同じだ!」
そうやってユウトは長い長〜い、先輩夫婦からのダメ出しを受けたのです。
毎日偉そうにふんぞり返っていたユウト。
太った体が一回り小さく見えるくらいシュンとしていたのでした。
ただでさえ人の家庭は良く見えるもの。大して知りもせず自分の家庭と比較し、けなすのは賢明とはいえません。比べて蔑むのではなく、どうしたら良いところをマネできるかを考えるようにしたいですね。