27歳・パニ子は、実家を離れて一人暮らしをしている会社員。
まだ独身だけど、仕事にプライベートにと、とても充実した毎日を送っています。
そんなある日、コンビニで小学生の女の子と母親とトラブルになってしまい……。
大事な母の形見
数日前のこと。
仕事から帰ったパ二子は、夕飯を作ろうとした際に醤油を切らしていたことに気づきます。
夜で、しかも外は雨。
その日は、朝方に雨が降っていたため、会社へ傘をさして行ったのですが、夕方には雨が上がっていたので、会社に置き忘れてしまっていました。
でも、パ二子にはもう1本、特別なときにしか使わない大切な傘がありました。
パ二子が小学生のとき、ずっと病気がちだったパ二子の母が亡くなりました。
もともと体が弱かった母とは、ほとんどお出かけや旅行をしたことはありません。
そんな母が、一時外出を許されたときに、パ二子に買ってくれたのがこの傘でした。
母が買ってくれた傘が、母との唯一の思い出。
いわば形見のようなものでした。
パ二子は母が買ってくれた傘を今でも大事にしていて、何度も修理をしながら大切に使ってきました。
見た目は子ども用の傘なので、日常使いすることはなかなかありませんでしたが、「こんなときこそ出番!」と、パ二子は形見の傘を持ってコンビニへ向かうことにしました。
大切な傘を親子が持ち去り…!?
コンビニで醤油を買い、レジに並んでいると、塾のカバンを持った小学生の女の子と、その母親が店内に入ってきました。
「もう、どうして傘を持って行かなかったの?コンビニの傘だって高いんだからね!」と、娘に話かける母親。
その親子は、しばらく店内をウロウロしていましが、レジに向かうことなくコンビニから出て行きました。
「あれ、傘が売り切れだったのかな……?」
そんなことを思いながら、買い物を済ませて外に出たパ二子。
しかし、パ二子がさしてきたはずの傘が……ない!!
「ビニール傘でもない傘を、誰が間違えるの……?」
慌てて周囲を見渡すと、先ほど母親と一緒にいた女の子がパ二子の傘を持って立ち去ろうとしていたのです……!
「そ、それ!私の傘です!」
パ二子は、急いで声を親子を呼び止めました。
しかし、母親は呆れたような顔をして、
「何を言っているの?この傘、子ども用よ?」
確かに大人が持つにはあまりにも子どもっぽい傘。
でも、その傘はパ二子にとって大事な母の形見でもあります。
「勝手に持って行かないで!」と、女の子から傘を取り返すと、母親が狂ったように騒ぎ始めたのです。
濡れ衣を着せられて…
「泥棒!ひったくりよぉぉ!!」
母親の叫び声にコンビニの中から人が飛び出してきました。
状況的に、子ども用の傘を持っている女の子の傘を大人のパ二子が奪ったように思われ、あっと言う間に泥棒扱いされるパ二子。
古い傘で名前なんて消えているし、自分の傘だと証明できるものがない……。
そんなとき、コンビニ客が「この女、反省する気がなようだから、もう警察を呼ぼう!」と言い出します。
すると、その言葉になぜか慌てふためく女の子の母親。
その様子を見た1人の青年が、母親に「失礼ですが、その傘はどこで買ったんですか?」と質問をします。
「つい最近、デパートで買ってあげたの!」と声を荒げる母親。
「でもその傘、だいぶ古いですよね?しかも、その傘のキャラクターは20年ほど前に流行ったアニメ。今ではほとんど見かけないのに、どうしてデパートで売っているんでしょうかね。デパートに中古品なんて売っていないだろうし」
青年はそのままパ二子に、「ご自身のものだと何か証明できるものはないですか?たとえば写真とか……」と言うと、思い出したようにパ二子は母がその傘を勝手くれた日に撮った思い出の写真を見せました。
パ二子の傘だと証明できた途端、周囲の人はパ二子に向かって平謝り。
すると、泣き始めた女の子から「ママ、もう嫌だよ!人から盗んだものばかり持つの……」というトンデモ発言が飛び出し、一同は言葉を失います。
どうやら、その親子は学校やショッピングセンターなどで子どもに窃盗をさせていた常習犯だったのです。
母親はコンビニ客の通報によってやって来た警官に連行。
その後、女の子は父親のもとに引き渡されたのでした。
万引きの片棒を担がされていた女の子は気の毒ですが、親を反面教師として、強く正しく生きていってほしいですね。