在宅で仕事をしながら、チェーン店の店長を務める夫の健一と暮らす妻の奈々未。
ある日、奈々未は夫の健一から見知らぬ子どもの子守りを頼まれます。
子守りは将来の予行練習…!?
「その子の名前はトオル。うちの店舗で働く高宮っていう部下の子どもなんだよ。シングルマザーだから土日は面倒見られないらしいから、協力してあげてよ」
奈々未の都合もお構いなしに、「将来、子どもができたときの予行練習だと思えばいいよ」と調子のいい言葉を並べ、仕事に行ってしまいました。
それから月に4回ほど子守りを頼まれ、すっかりトオルと仲良くなった奈々未。
でも、トオルの母親の高宮さんはいつもムスっとしながら子どもを置いていくし、一度もお礼を言われたことがありません。
高宮さんの態度が気になりながらも、シングルマザーでも働きやすい環境やシフトの整備を健一に提案する奈々未。
部下の子どもの子守りまで買って出て、いつも遅くまで働く健一に「私は健一の妻だからね、手伝えることは手伝う」と、奈々未はやさしく伝えるのでした。
急に届いた子どもからのSOS
数日後――。
夜中に奈々未のスマホにトオルからのメッセージが届きます。
「おばさん助けて」
「え?どうしたの!?」
「今からおばさんの家に行っていい?」
「ママとおじさんに追い出されちゃった」
「え、私の夫がそこにいるの?」
トオルは家から追い出されたといい、近くの公園にいるとのこと。
状況がつかめないまま、すぐにトオルを迎えに行く奈々未。
どうやらこれが初めてではないらしく、夫の健一が高宮さん宅に行くたびに家から追い出されているようでした。
小さなヒーローのために
翌日の朝、友だちの家で飲んでそのまま寝てしまったと言い訳する健一から連絡が入ります。
「お前、今どこ?トオルもいないらしくてさ」
「もう家には帰らない」
「は?」
「トオルくんも高宮さんの家には帰らない」
焦る健一に、昨日の出来事をすべてぶつける奈々未。
「子どもが言うことなんか信じるな!」と言う健一に、朝方にトオルが持っていた家のカギで自宅に入って撮った証拠写真を突き付けます。
「深夜に子どもを追い出すなんて、あんたたちどうかしてる。これまでも2人が会っているときにトオルくんを私に押し付けていたんでしょ!」
真っ青になる健一にすっかり愛想を尽かした奈々未は、離婚を突き付けます。
後日、2人が働く会社に不倫の事実を報告し、健一は店長から降格。
さらに証拠写真のおかげでスムーズに離婚が成立し、慰謝料も支払われることに。
その後、トオルは父親に引き取られ、奈々未とトオルは今でも連絡を取り合う友だちになります。
「僕がさびしいときに一緒にいてくれてありがとう。今度は僕がおばさんを助けるからね」
トオルの言葉に、奈々未は再び前を向く決心をするのでした。
汚い言葉で罵りたいほど悔しい思いをしたにもかかわらず、自分を頼って守ろうとしてくれる小さなヒーローのためにも、踏ん張って乗り越えようと思えたのかもしれませんね。