セレブをひけらかす義妹
私たちの家には、夫の妹が娘を連れて遊びに来ます。娘と義妹の娘は姉妹のように仲良しで、見ていてほほ笑ましいのですが、私は義妹が大の苦手です。
義妹の夫はこの地域では誰もが知っている企業の次期社長。たまたまセレブ婚に成功しただけなのに、すっかり上流家庭気取りの義妹は、何かにつけて生まれ育った家庭を貧乏一家と見下します。
遊びに来てもいつも不機嫌で、嫌みばかり。
「お義姉さんってさあ、働いてるんでしょ? 結婚してまで働くなんてかわいそうね。呉服屋さんだったっけ?」
と私の仕事までバカにする始末。
呉服屋の仕事に誇りを持っている私は、さすがに腹が立ちましたが、娘は義妹の娘が大好き。2人の関係性を崩さぬよう、グッと堪えたのでした。
「七五三なんて古臭い」と言い放ち…
娘と義妹の娘は七五三のお祝いをする年。「◯◯ちゃん(義妹の娘)と一緒にお祝いしたい」という娘の希望もあり、私は渋々義妹に電話をかけます。
「来月、近所の神社で七五三のお祝い会があるの。娘が◯◯ちゃんと一緒に行きたいと言うので、一緒に行かない?」
すると予想通りの返事が返ってきます。
「七五三なんて古臭い田舎行事、行くわけないじゃない! 娘を連れていきたいのなら勝手にどうぞ、私は行かないから」
七五三は子どもの成長を願う由緒正しい行事なのに……。義妹は着物や七五三のような伝統的なものをダサいものと決めつけて、バカにしているのです。
せっかくのハレの日。親が見られないのは残念だと考えた私は、義妹の夫に連絡。義妹の娘は父子で参加することになりました。
「地味だったから」義妹のトンデモ行動
娘のためにかわいらしい晴れ着を仕立てた私。待ちに待った七五三の朝、義妹が私たちの家にやって来ました。
「あれ〜誰もいないの? まぁいいわ、入るわね!」
休日の朝は家族でウォーキングに行く習慣のある私一家。それを知っている義妹は、わざわざ留守を狙って訪れたのです。
「これが娘ちゃんが着る晴れ着ね。わー想像通り地味で古臭い柄ね。染め直してあげる〜!」
なんと、義妹はリビングに置いてあった晴れ着に醬油を塗って、黒いマダラ柄にしてしまったのです。
義妹の盛大な勘違い
そのころ、私のスマートフォンが鳴り、画面には義妹の名前が表示されていました。
「もしもし?」
「あっ、お義姉さん? いい知らせがあるのよ! あのテーブルに置いてあった地味な晴れ着、私がかわいく染め直しておいたわよ。娘ちゃんもきっと喜ぶわ~」
「えっ!? 娘はもう今朝早くに晴れ着を着て、神社に行ったのよ!」
晴れ着を楽しみにしていた娘のために、私たちはウォーキングの前に晴れ着を着て、朝イチで神社へお参りをしに来ていました。
「じゃあ、テーブルに置いていた晴れ着って、まさか……」
電話口からは、義妹の動揺した声が漏れてきました。
「それ、◯◯ちゃん(義妹の娘)が着る予定の晴れ着よ! この後、私が着付けをしてあげる予定だったの」
なんと義妹は、義妹の夫が用意した義妹の娘用の晴れ着に醤油を塗りたくっていたのでした。
「家宝が台無しだ!」エセセレブだった義妹の末路
自宅に戻ると、激怒している義妹の夫と悲しそうにしている義妹の娘の姿が。
「お前、なんてことしてくれたんだ! この着物で3歳の七五三を迎えるのは、わが家の伝統だったのに!!」
見るも無惨に醤油まみれになった晴れ着は、代々着ている貴重なものだったよう。
「本当にとんでもないことをしてくれたな!!!」
家宝とも言える大切な代物をダメにした義妹。セレブ一家が代々守ってきた晴れ着には、きっと相当な価値があったに違いありません。
付け焼き刃のセレブ気取りでは本当の価値がわからず、家宝に加え娘の七五三まで台無しにしてしまったのでした。
◇ ◇ ◇
真の価値を理解しようとせず、上辺だけを見ていると、痛い目を見ますね。何事も自分の主観で判断せず、本質を見極めたいものです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。